
最近、国際バカロレア:IBについて聞かれることが多くなりました。
一度きちんと整理しておきたいと思います。
いわば、国際バカロレア入門編の記事です。
国際バカロレア
スイスに本部がある「国際バカロレア機構」が定めた教育プログラムを「国際バカロレア」(IB:International Baccalaureate)と称しています。
日本でも最近認定校がずいぶん増加しましたね。全国に150校あまりとなりました。
IBは、4種類に分かれています。
PYP 初等教育課程・・・3~12歳、小学校に相当
MYP 中等教育課程・・・11~16歳、中学校に相当
DP ディプロマ課程・・・16~19歳、高校に相当
CP(career-related Programme)・・・16~19歳、キャリア教育・職業教育
最後のCPは、職業教育に特化していますので、日本でもたった1校しか認定校はありません。いわゆる「高専」のようなものかな。ちなみに長野にある「長野日本大学高等学校」です。
ヨーロッパでは、早い段階から、子供の進路が「教養コース」と「職業コース」に分かれるのです。「教養コース」と私が名付けたのは、いわゆるリベラルアーツのイメージです。乱暴な言い方をしてしまうと、教養を磨き人間性を深めていくのには、金銭的な余裕が必要です。貴族階級の子弟の教育と言い換えてもいいでしょう。それに対して、いわゆる庶民は、まずは「生活」するための金銭を手に入れることが重要です。そのための職業訓練が早い段階から求められるのです。ヨーロッパの社会は、階級社会でしたから。もちろん現代ではそこまであからさまではありませんが、歴史的にはそういう経緯がありました。
日本のように、貴賤の分け隔てなく普通に大学に進学する国からみると少々違和感がありますね。
これらのプログラムを導入している学校は、1条校が92校、非1条校が63校あります。
1条校というのは、学校教育法の第1条で定義されている「学校」のことですね。
第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
— 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条、「第1章 総則」中
非1条校というのは、これに相当しない学校ですので、「一部の専門学校」「フリースクール」「インターナショナルスクール」などのことになります。ここを卒業しても、「高校卒業資格」は得られず、日本の大学の受験資格は無いことになります。
はじめから日本の大学進学を視野に入れていないインターナショナルスクールがIB認定校であることはわかりやすいですが、日本の1条校がIBの認定をとる必要性はどこにあるのでしょうか。
(1)理念に共感した
IBは独特の理念を持っています。明示されている「学習者像」はこうなっています。
探究する人(Inquirers)
知識のある人(Knowledgeable)
考える人(Thinkers)
コミュニケーションができる人(Communicators)
信念をもつ人(Principled)
心を開く人(Open-minded)
思いやりのある人(Caring)
挑戦する人(Risk-takers)
バランスのとれた人(Balanced)
振り返りができる人(Reflective)
どれも理想的ですが、日本の学校教育とは本質的にベクトルが異なります。
(2)生徒募集に有利
「国際バカロレア」認定校であることは、大きな宣伝材料になります。名ばかりの「国際」ではないことをアピールできますね。
(3)海外大学進学への道
日本の高校生がダイレクトに海外の大学に進学するのはハードルが高いのです。それは英語力だけではありません。そもそも高校の先生にノウハウがありません。英文で大学宛ての推薦状を書いてくれる先生も少なそうですね。
しかし、IBのDPまでとれば、そのまま海外大学進学の道が開けます。とくにヨーロッパには強いのです。
IB認定校
埼玉・東京・神奈川の認定校を見てみましょう。ちなみに千葉にはありません。
名称 都道府県 PYP MYP DP
浦和学院高等学校 埼玉県 – – ◎
開智高等学校(中高一貫部) 埼玉県 – – ◎
さいたま市立大宮国際中等教育学校(市立) 埼玉県 – ○ ◎
昌平中学校 埼玉県 – ○ –
昌平高等学校 埼玉県 – – ◎
筑波大学附属坂戸高等学校 埼玉県 – – ◎
開智日本橋学園中学校 東京都 – ○ –
開智日本橋学園高等学校 東京都 – – ◎
玉川学園中学部 東京都 – ○ –
玉川学園高等部 東京都 – – ○
千代田高等学校 東京都 – – ◎
東京学芸大学附属大泉小学校 東京都 ○ – –
東京学芸大学附属国際中等教育学校 東京都 – ○ ◎
東京都立国際高等学校(都立) 東京都 – – ○
町田こばと幼稚園 東京都 ○ – –
神奈川県立横浜国際高等学校(県立) 神奈川県 – – ◎
聖ヨゼフ学園小学校 神奈川県 ○ – –
聖ヨゼフ学園中学校 神奈川県 – ○ – –
ビヨンディア・インターナショナルスクールやまた幼稚園 神奈川県 ○ – –
法政大学国際高等学校 神奈川県 – – ◎
三浦学苑高等学校 神奈川県 – – ◎
これだけです。中学受験の世界の住人の私の目からすると、「IBよりも先にやることがあるだろ」と思える学校も見受けられますが、まさに大きなお世話ですね。そもそもIBは、日本国内の教育事情を超越したところにありますので。
問題点
問題点は3つあります。
(1)日本国内大学への進学と両立するのが難しい
ベクトルの違う2つの教育を同時並行で受けることになります。どっちつかずになる危険性は高いですね。もちろん国内の大学でもIBを評価してくれるところもありますが。
(2)IBの教育を実践できる教育者が少ない
そもそも国内ではなじみのない教育スタイルです。IB認定教員資格(IBEC)、つまり国際バカロレア機構が認定する資格が必要ですが、国内の大学でこれを取得できる大学はわずかしかありません。さらに、DPになると、専門教科を英語で指導できる力は当然として、探究学習のファシリテーション能力も求められますので、正直国内の環境では難しいでしょう。インターナショナルで指導経験を積むか、海外で積むしかないと思います。そんな実力者が多いとは思えません。
(3)生徒のレベルが追い付かない
IBの理想を追求するためには、生徒にもそれなりの能力が求められます。
向く生徒
これは簡単です。
日本の大学進学を第一条件に考えない生徒です。
国内大学の合格などといった「小さな」目標ではなく、海外に視野を広げた教育を求める場合は、IB認定校は魅力的だと思います。
その場合、インターナショナルスクールも候補になるのですが、英語ネイティブでないと無理ですね。第一学費が高すぎます。
海外大学をメインに考えるが、日本の高卒資格は欲しい、国内の大学進学への道も閉ざしたくはない、そうしたご家庭にはフィットします。
IB認定校を選ぶ際には、その学校がどこまで本気でIBの理念を体現しようとしているのか、そしてそれがわが子に向く教育なのか、そこをきちんと考える必要があるのです。
注意
IBは、ヨーロッパでは大学進学のパスポートの役割を担っています。DPの高スコアを持っていると、スムーズに進学の道が開けます。
しかし、アメリカでは事情は少々異なります。もちろんアメリカの大学でもIBのDPは評価されますが、あくまでも入学審査の材料の一貫としての扱いです。
アメリカの大学は、高校の成績(GPA)が重視されています。それに加えて、課外活動、エッセイ、英語スコアなどを含めた「総合評価型(Holistic Review)」となっているのです。