元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】学校の選び方 その2 大学付属校VS進学校

前回に続き、学校の選び方について考えます。

※この記事は、首都圏中学受験事情について全く知らない方を想定しています。

大学付属校

(系列校・係属校をまとめてこの記事では「付属校」と呼びます)

最近増えてきましたね。

これには理由があります。

大学側の事情

加速する少子化の中、「一定水準の学力の高校生」を「青田買い」できる点が魅力です。

中高側の事情

 中高生の親世代が大学受験をした当時と比べて、今の大学入試はだいぶ様変わりしました。文科省の方針により、大学定員の厳格化が求められ、募集人員が絞られているほか、推薦入試も拡大してきました。しかも、大学の2極分化が加速し、「良い大学」にはますます入りづらくなってきているのです。

〇一般選抜・・・従来の学力試験重視の方式ですが、複数の日程や方式(共通テスト利用など)が設けられ、選択肢が非常に幅広くなっています。

〇総合型選抜(旧AO入試)・・・学力だけでなく、小論文、面接、活動報告書などで適性や意欲を総合的に評価する方式です。

〇学校推薦型選抜(旧推薦入試)・・・高校での学習成績や課外活動などを基に推薦を受ける方式です。

 

昔の「一発学力テスト」時代が懐かしいですね。

 

こうした大学入試改革や私大の定員厳格化への不安から、「中学受験で入れば、そのまま上(大学)に上がれる」安心感が好まれるようになりました。

また中高にもメリットがあります。少子化で生徒募集に苦しむ男子校や女子校が、知名度のある大学のブランド力を得ることで、共学化と同時に人気校へと再生を図るのです。

 
ここ10年(2016年〜2026年)で増えた大学付属中高だけ、私が思いつく範囲であげてみます。
付属化については、既存の伝統校や女子校が有名私立大学の系列校(付属校・系属校)に変わる「改称・共学化」の形が主流です。大学側による優秀な生徒の早期囲い込みと、中学受験生側の大学受験回避(安定志向)のニーズが一致し、新設・改称が相次ぎました。

MARCH・早慶上理などの難関私大

ここ10年で最も動きが活発だったグループです。女子校から共学の付属校に変わるケースが目立ちます。
  • 明治大学付属世田谷中学校・高等学校(旧:日本学園 / 東京都)
    • 時期:2026年4月付属化
    • 特徴:伝統ある男子校から共学の明治大学付属校へと生まれ変わり、塾業界で大きな話題となりました。
  • 青山学院大学系属浦和ルーテル学院小学校・中学校・高等学校(埼玉県)
    • 時期:2019年系属校化
    • 特徴:埼玉県の伝統的なキリスト教主義学校が青山学院の系属校となり、小中高一貫の連携を強化しました。
  • 青山学院横浜英和中学校・高等学校(神奈川県)
    • 時期:2016年系属校化(2018年に完全共学化)
    • 特徴:歴史ある女子校が青山学院の系属校になり、その後共学化。偏差値・人気ともに急上昇しました。
  • 法政大学千代田三番町中学校・高等学校(現:東京家政学院 / 東京都)
    • 時期:2027年4月系属校化予定
    • 特徴:千代田区にある女子校が、法政大学の新たな系属校として校名変更・共学化することが決定しています。この学校も立地が良いですから、来年入試では人気が沸騰するのでしょうね。

 それにしても、「法政大学千代田三番町中学校・高等学校」という校名は、私には違和感しかありません。もちろん、千代田区の「番町」がブランドイメージが抜群の地域であることはわかります。東京の高級住宅地で検索すると、南麻布・元麻布・白金台・白金・松濤・広尾・青葉台(目黒)・成城・田園調布・自由が丘等の地名が出てくるのですが、「番町」がランキングに入っていない場合も多いのです。おそらくは、そうしたランキングなど突き抜けた地域なのでしょう。

またこのエリアには、他にも女子学院(一番町)、雙葉(六番町)、大妻(三番町)などがあります。

ちなにみ「番町」の地名は、江戸城警護の旗本「大番組」一番~六番がいたことに由来します。

 

 

このほかにも、「香蘭女学校」は、2025年の卒業生から立教大学への推薦枠が97名から160名に拡大されました。卒業生数とほぼ同数の推薦枠ですので、実質的な立教大学の付属校とみなせます。

もっとも、「付属校」ではなく、あくまでも「指定校推薦」の枠組みということだそうです。実際には、成績不振により推薦してもらえない生徒、成績優秀によりさらに上の大学に進学する生徒がいますので、立教大学に進学するのは2/3程度です。

 

理系・実業系大学

近年は「理系人気」の後押しもあり、芝浦工業大学などをはじめとする理工系大学の付属校化や新設・改称が目立ちます。
  • 芝浦工業大学附属中学校・高等学校(東京都)
    • 時期:2017年、江東区豊洲への校舎移転にあわせて中学を共学化。
    • 特徴:もともと男子校でしたが、ここ10年で女子生徒の受け入れや高大連携がさらに進み、人気の理系付属校として地位を確立しました。
  • 東京都市大学等々力中学校・高等学校
  • 東京都市大学付属中学校・高等学校(東京都)
    • 時期:2009年〜2010年代にかけて「武蔵工業大学」から「東京都市大学」への改称に伴い、中高もリニューアル。ここ10年で進学実績や志願者数を大きく伸ばしました。
    • この2校は、私の生徒からも最近よく名前が出るようになっています。とくに「都市大付属」については、「武蔵工業大学付属」時代には、人気が無かった(失礼!)学校の一つだったのです。内容は悪くないのに、名前が災いしたと私は勝手に思っていました(失礼!!)。ですから、ある意味「お薦めの学校」の一つだったのですが、都市大付属にリニューアルしたことで、たちまち偏差値が上がってしまいました。

※注意

大学附属校については、「大学への内部進学率」に注意しましょう。
推薦率が半分程度の、「名ばかりの附属校」もあるからです。
例えば、大阪の「早稲田摂陵高等学校」は、推薦率が7%~9%程度でした。「早稲田」の名前に惹かれて進学しても、実際には「附属校」とはいえません。2025年に「早稲田大阪高等学校」へ改称されたことで、早稲田大学への内部進学枠(特別推薦枠)は、従来の約40枠から大幅に拡大され、74枠となりました。これにより、今後の進学率は約20%〜30%前後になる見込みです。(それでも少ない!)
こうした学校に進学してしまうと、「大学付属校で、勉強に追いまくられないのびのびとした中高生活」とは程遠い、熾烈な競争社会に放り込まれることになります。
それでも、学内の順位がそのまま推薦に直結するので、大学進学の見込みが立ちやすいというメリットはあります。
 
また、成蹊のように、卒業生の83%(2025年)が成蹊大学への内部推薦資格を満たしていながら、実際に内部推薦で成蹊大学に進学するのは27%だけという学校もあります。その他の生徒は他大学受験をするのですね。他大学受験をした生徒のうち、推薦入試が36%、一般入試が34%、浪人が30%となっています。学年人数でみると浪人率が2割と少々多い気もしますが、進学校で見られる傾向です。成績上位者の場合は、成蹊大学への推薦枠をキープしたままの他大学受験ができるのも、よくある制度ですね。大学実績については、早慶・GMARCH等にも悪くない数字が出ています。
 

進学校

 
一都三県の中高一貫私立校はおよそ290校あります。そのうち進学校が210校、大学付属校が80校程度です。
およそ7割が進学校ですので、学校選びの自由度からいえば、進学校が圧倒的に有利です。
また、難関進学校の場合では、「早慶なら大学入試で入れる」という不遜な考えが生徒にはあるようですね。わざわざ中学受験で早慶付属を選んで将来の選択肢を狭める必要は無い、という自負なのでしょう。
とくに国公立や医学部を目指す場合であれば、大学付属を選ぶ理由はありません。また、慶応のように「小学校からの生徒」がいる学校を敬遠する方もいます。
 

大学付属校VS進学校

 
この二つを対比させて考えるのもどうかと思いますが、愚を承知で比較します。
 
単純な話です。
「10年後に絶対に早稲田大学に進学する!」
こうした強い要望があるのなら、早稲田大学高等学院中学部、早稲田実業学校中等部、早稲田中学校、早稲田佐賀中学校を受験しましょう。
大学付属校を選ぶというのはそういうことです。
(※早稲田中学については、半数が早稲田大学に進学しますが、半数は他大学受験でかなりの実績をあげています。進学校ともみなせる学校です)
 
今まで見てきていちばん「後悔」が残る受験は、「大学付属ならどこでもかまわない!」という受験です。とにかく大学受験を回避することだけを第一目標にして受験校を選ぶと、第一志望に入れなかった場合の後悔が強いのです。
 
教えていた女子生徒に、そうした子がいました。
SAPIX偏差値で60を超えていましたので、桜蔭でも女子学院でも目指せるレベルだったのですが、「とにかく大学付属!」という家庭方針で、慶応湘南藤沢、慶応中等部を受験したのです。何が災いしたのか、2次面接で落とされてしまいました。最終的には、SAPIX偏差値で40台のGMARCH付属校に進学したのです。
「進学した学校が一番良い学校」というのが鉄則です。そこで充実した中高生活を送ってくれればよいだけなのですが。
 
そのGMARCH付属校最寄り駅をよく利用するのですが、そこで見かけるその学校の生徒たちの様子は、正直言って「がっかり」させられるものなのです。
道幅一杯に広がって、スマホを鏡替わりに歩きながら化粧に余念がない女子中学生たちをよく見ます。まあ今時の子といってしまえばそれまでですが、「勉強をがんばらなくても大学に行ける」環境を明らかに履き違えているとしか思えません。まじめにコツコツと勉強に取り組んでいたその生徒の顔を思い浮かべると、「この学校で納得しているのだろうか」と心配になってしまいました。
 
 

間違った意見

こうして大学付属校と進学校を検討していると、かならず聞こえてくる声があります。
「せっかく開成(or麻布or桜蔭or女子学院etc)に進学しても、結局大学が早慶(orGMARCHetc)になるのなら意味がない。それなら最初からそうした大学付属中に進学したほうがよい」
 
こうした意見を聞くたびに、「何もわかってないなあ」という思いが強くなります。
中高の6年間が、「大学合格」だけのためにあるという狭量な意見にすぎません。
開成(or麻布or桜蔭or女子学院etc)で過ごした6年間は、かけがえのない6年間として、生涯にわたり宝物のような時間となるのです。
 
学校選びについては、たとえ大学付属校であったとしても、中高の6年間を過ごす環境を選ぶという視点を忘れてはいけません。