元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】塾に行かないで中学受験はできるのか?

定期的にこのテーマで書いています。

私は塾無中受の伝道者?なもので。

 

まあ伝道者ということもないのですが、「塾に丸投げ受験」は少し違うのでは、と日ごろから思っています。

1.中学受験で求められるレベル

 塾に行くにせよ行かないにせよ、中学受験で必要となる学力レベルがつかめていないと何ともなりません。

 そこで、中学受験を考えたならば、最初に保護者の皆さまにお勧めしたいのが、実際に中学入試問題を解いてみることなのです。

 

 各種保護者会や説明会等で、私が冒頭にこの話をし始めると、会場の空気が、音を立てるように「引いて」いくのが常です。

その「空気」の理由は以下のようなものでしょう。

「無理! 算数なんか解けるはずないし!」

「物理と化学なら多少は覚えているけれど、生物や地学なんかやってこなかったぞ」

「方程式を立てないでどうやって解くんだ?」

「もう歴史も地理も忘れちゃったしねえ」

 

わかります、その気持ち。

しかし、何も「満点」を取れといっているのではありません。得点を報告しなさいと言っているわけでもないのです。

お子さんが数年後にぶつかる「壁の高さ」を把握してほしいのです。

 

解く問題はどこの学校のものでもかまいません。ただし、公立中高一貫校しか受けない場合を除き、公立中高一貫校の「適性検査」はやめましょう。もっとオーソドックスな算国理社の4科目の入試問題がよいのです。わざわざ書店で入試問題集を購入せずとも、入試問題をHPで公開している学校がいくつもありますので、それを利用するとよいと思います。生徒募集に積極的な学校ほど、情報開示にも積極的な場合が多いので、そうした学校のHPをチェックするといくつも見つかると思います。これについては、志望校の過去問にこだわる必要はありません。まずは中学受験というものの様子がつかめればそれでいいのです。

 

次のステップとしては、高校入試問題を解いてみましょう。

選ぶのは公立高校の入試問題にしましょう。いくら中学受験が一般化したとはいえ、都内でも公立小学校から公立中学校への進学率は78%です。

公立高校の入試問題はHPで公開されていますので、簡単に入手できるのもよいですね。との都道府県のものでもかまいませんが、最も受験者の多い東京都の問題が良いと思います。

 

さて、私立中学入試問題と公立高校入試問題、両方解いてみて感想はいかがでしょう。

 

算数と数学を直接比較することはできませんが、大人にとっては方程式を使える高校入試問題の方が解きやすかったと思います。

国語はさすがに高校入試問題のほうが難しいですね。でも、中学入試問題の難易度もそれに匹敵するとは思いませんか?

そして理科と社会。あきらかに中学入試問題のほうが「思考力」「記述力」が必要な問題が多く出題されています。

 

そうして解いてみて、はじめて「中学受験生に求められる4科目のレベル」というものが見えてきます。

すべてはそこからスタートです。

 

2.塾へのアウトソーシングの是非

 塾へ入れるということは、本来家庭でやるべき学習をアウトソーシングすることだと考えてください。

 子供の「理想的な」生活時間を考えたとき、夕方から夜遅くまで塾に拘束されることは弊害が大きいのです。みなさんそれはわかってはいても、「仕方ない」と諦めて塾に通わせています。

 しかし、もし家庭学習をメインにしたとしたらどうでしょうか。規則的な食事時間も睡眠時間も確保するのが容易になります。成長期の子供にとってそれがどれだけ大きなメリットかは言うまでもないのです。

 そうはいっても、すべてのご家庭で「親が勉強を見てあげられる」環境にはないでしょう。そこで、親ができない部分だけ、塾に「アウトソーシング」する、そういう感覚で塾を上手に使って欲しいと思います。

 

 そう考えると、もっとも慎重にならないといけないのは、「すべておまかせください!毎日でも塾に来てください! わかるまで徹底的に教えます!」というスタイルの塾ですね。私はこれを「おまかせ塾」と呼んでいます。

 その塾が家の近所(歩いて3分)のところにあって、塾長もよく知っている、そうした場合なら悪くはないですが、そうでなければ弊害のほうが大きすぎます。

 

 さらに、そうした塾に「丸投げ」したとしても、結果の責任までは「丸投げ」できません。最終的な結果は、本人と家庭で受け止めるしかないのです。しかも子供の未来がかかっている受験です。それをすべて赤の他人任せにする勇気は、私にはありません。

 

3.塾と家庭の牧歌的な関係は昔話

 私が学生時代に講師をしていた塾は、小規模でアットホームな塾でした。小学生と中学生を教えていましたが、受験終了後には、その子たちを連れてスキー旅行に行ったのを覚えています。子供たちと、母親たちと、そして塾の教師たちでスキー旅行、今考えれば信じられないですね。

 今でもそんな牧歌的な雰囲気の塾があるのかどうかは知りませんが、おそらく無いでしょうね。

 時代とともに、親が塾に求めるものも変化してきました。とにかくきちんと勉強さえ教えてくれれば、それでいい。要求はシンプルです。当然塾の教師もそれに対応する「だけ」になってきました。

 巷には、「懇切丁寧」な指導を売り物にする塾も多いですが、そんなのは当たり前です。すべての塾が「懇切丁寧」に指導しています。そうでなければ塾の存在意義はありませんので。

 ただし、「懇切丁寧」な指導が当たり前だとしても、「おせっかい」な指導は困ります。しかし、塾の方針を押し付けてくる「おせっかい」塾がいくつもあるのです。それが適切な指導ならよいのですが、そうでない場合は問題ですね。私の知っているところでは、模試を受けさせない方針の塾までありました。志望校については、担当教師の「経験」で決めるのだそうです。これは、ただの「勘」とほぼ同義です。

 お通いの塾があるとしても、そこに恩義を感じる必要はありませんので、必要な指導を受ける、それだけをビジネスライクに考えるのが良いと思います。

 

4.理想的なスタイル

(1)すべてをまかせられる信頼できる塾にいく

 これは理想的です。しかし、なかなか難しいのも確かです。個別指導は玉石混交ですし、集団指導塾は、全員が満足できる指導は制度的に無理ですから。

 しかし、例えば小規模な塾で、塾長が信頼に値する場合もあるでしょう。あるいは兄弟が3人ともお世話になった、そうした場合もあるかもしれませんね。

 

(2)塾の一番良いところだけを利用させてもらう

 これが現実的です。例えば集団指導塾に通いながら、少しだけ家庭教師や個別指導を頼む場合がこれに相当します。このパターンをとる家庭が一番多いかもしれません。

ただし、時間の捻出に無理が生じないように調整が必要なのは言うまでもありません。カリキュラムが濃くて家庭学習時間がとれない塾に通っているのに、さらに他塾の「〇〇特訓」を受けに遠い校舎まで通う、これが一番無駄が多いやり方です。

 

(3)オーダーメードで指導を受ける

 個別指導と家庭教師だけ、そういう家庭の話もよく聞きます。習い事が忙しかったり、あるいは子供が集団指導になじまない場合であったり。これも良い先生に巡り合えたなら非常に効果的です。ただ、個別指導や家庭教師は、教師はそれだけでは指導経験人数を積むことが難しいという構造的問題があるのです。

 

(4)家庭学習だけに絞る

 もしこれができたら、一番理想的です。ただし、親にも覚悟が必要です。子供のために自分の自由時間をすべて費やす覚悟があることが前提となるやり方です。

 塾無中受には親子の絆が深まるという副次的効果もあります。

「なんでこんな問題できなかったんだ!」

という親と、

「この問題、お父さんも解いてみたけれど、けっこう間違いやすい問題だよね」

という親と、どちらが子供から信頼されるでしょう。

「国語の偏差値が下がってる!」ではなくて、

「物語文の読解は安定してきたね。あとは説明文を少しまとめて練習してみよう」という親であってほしいと思います。

 

塾に行かないで中学受験する方法や考え方についてまとめた本を書いています。ぜひごらんください。