
歴史や地理と比べて、公民の学習において資料集を活用する塾は多くはありません。ちなみにSAPIXでは使っていませんでした。
今回は、公民資料集が必要なのか、そしてどのように活用するのかについて考えます。
公民資料集とは
公民分野の学習では、日本国憲法を主軸として憲法の構成、三大原則を学びます。
とくに基本的人権についてや、三権分立についても必須ですね。最近はこれに経済分野の知識もよく出されるようになりました。
これらを学ぶのに、地図や写真は不要です。したがって、資料集はとくに必要はないのです。
ただし、公民分野は小学生にとっては難易度の高い分野です。少しでも理解の手助けになるようなイラストや図解、統計資料も欲しいところですね。そこに「公民資料集」の需要があるのです。
さて、これも探してみると、3種類あります。
◇大学受験用の「政治・経済」資料集
◇高校受験用の「公民」資料集
◇中学受験用の「公民」資料集
こうして並べると、中学受験用のものがよさそうに思えますね。しかし、あまりお勧めはできません。いくつかの塾が単独で、あるいは出版社とコラボして作っていますが、文字が多くて面白くないのです。大半が「公民用語集プラスアルファ」の内容となっています。参考書として使う分にはよいのですが、「資料集」としては趣旨が異なります。
そして、大学受験用のものは難しすぎます。結局は、中学生用の資料集を探すことになります。
しかし、これも入手が難しいという問題点があるのです。
お近くの書店で探してみて、良いものが見つかればそれを買うとよいでしょう。
そうでなければ、これをお勧めします。
すいません、またしても帝国書院の「アドバンスシリーズ」です。
帝国書院の回し者みたいで嫌なのですが、他に選択肢が無いので仕方がありません。
ただしこちらは、地理・歴史の資料集とは違い、だいぶ薄い内容です。ページ数は140ページしかありません。しかしなかなかおもしろい内容です。
たとえば「社会権」のページを開いてみましょう。
「もう一度学びたい~夜間学級~」
「アルバイトも労働組合に入れる?」
「プロ野球でストライキ」
「難病の生徒の高校入学拒否事件」
などが書かれています。なかなか面白いですね。さらに生存権のところには、「桶川クーラー事件」が紹介されていました。生存権といえば、「朝日訴訟」が定番ですが、さすがに古すぎて生徒の共感は得られないのですね。しかし、この「桶川クーラー事件」は、1994年ですから十分新しい話題です。事件の概要はこうです。
79歳の高齢独居女性が、年金の7万円では生活できずに月1万円の生活保護を受けていたのです。そしてその女性が猛暑をしのぐために親族に頼んで中古のクーラーを設置してもらったのです。それがケースワーカーの定期訪問で見つかり、市が「厚生省は生活保護家庭でクーラーの使用は認めていない」としてわざわざ取り外したのです。40℃を超える猛暑でクーラー無しを強制するのは殺人に等しい暴挙ですね。女性は脱水症状で意識不明の重体で発見されました。たしか冷蔵庫に頭を入れるようにして倒れていたという報道があったと思います。ちなみにこの後、生活保護世帯のクーラー保有が認められるようになったのは2018年です。
これは、私も授業で必ず話すネタの一つです。生活保護は「権利」なのに「施し」としてとらえられているという問題提起です。
さて目次を見てみましょう。

この資料集は、これ1冊で公民分野を全て網羅するというよりは、実例を通して公民分野の学習と私たちの生活が密接につながっていることを実感させるものだと思います。
学びを深める役割ですので、親子でページをめくるような学習法が良いと思います。
しかし、1点だけ残念な点があります。
資料集なら当然掲載されているはずの「日本国憲法」全文が載っていないのです。これはちょっと驚きました。
しかし、憲法については、学校教科書のほうに巻末資料として掲載されているのですね。これはどの出版社の教科書にもあります。
手元にある日本文教出版の教科書の巻末資料はこううなっています。

なかなか充実していますね。
これくらいが資料集にも載せられていればよかったのですが。
そうやら学校教科書と併用したほうがよさそうです。
