東京学芸大学附属国際中等教育学校とは?
入試問題を見る前に、この学校の成り立ちについて簡単に整理しておきます。
「東京学芸大学附属大泉中学校」と「東京学芸大学附属高等学校大泉校舎」が併合し、2007年に東京学芸大学附属国際中等教育学校として発足しました。(学校名が長いので、以下学芸国際と略します)
1学年105名と少数ですね。私学だとなかなか経営が難しい人数ですが、国立ですから。良くも悪くも国立であることがこの学校の第一の特徴です。
105名の内訳は、付属小からの内部進学、一般受験生、帰国生、それぞれがおよそ1/3を占めています。その後、年2回の編入試験で生徒が少しずつ増え、最終的には130名ちょっとという人数になります。卒業時にはおよそ半数が帰国生となります。「国際」という名称は伊達ではないのですね。
さらにこの学校は、国際バカロレア(IB)認定校です。中1から高1までは、全員がIBのMYP (Middle Years program) を学びます。そのあとは希望者だけが、Diploma Program (DP) を学ぶことになっています。
国際バカロレアについてはご存じの方も多いでしょうけれど、次回簡単にまとめておきたいとおもいます。
大学実績
卒業生127名の2024年の結果を見てみます。
海外大学・・・53名
国公立大・・・18名
東大に1名、一橋に2名は立派です。
海外大学については、ほとんどの大学が1名の合格となっているので、実質的な進学者はわかりません。国内の大学以上に、海外大学への複数合格は多いのです。基本的に日本の大学入試のような試験はなく、出願で決まりますので、一人で5校~10校程度の出願は普通です。したがって、実際に海外大学を志望した生徒の実数は多くはないと思われます。
その他私大については、5名以上の合格がある大学を列挙します。現役生の数字です。
上智 24名
中央 22名
慶応 20名
早大 20名
ICU 18名
明治 15名
立教 15名
青学 11名
東洋 8名
日大 5名
日本獣医生命科学大 5名
現役生127名ですので、悪くない数字というべきでしょう。
試験内容が特殊ですので、単純に他の中学受験校と比較は難しいのですが、入試難易度は公立中高一貫校と同じくらいのところに位置しています。SAPIXの偏差値表では47でした。攻玉社や芝、立教女学院や芝浦工大附と同じレベルです。
入学試験
試験は、一般国内受験生も帰国生も同じ試験となっています。
◆書類審査(志願理由書・報告書または成績証明書・活動実績申告書)
◆A方式(作文検査)またはB方式(適性検査)・・・出願時に、いずれか1つを選択
A方式の作文検査は、外国語作文と基礎日本語作文の両方が課されます。
a 外国語作文(検査時間:45 分、85 点満点)
課題を適切に捉え、豊かな発想にもとづき、自らの考えや意見を筋道立てて表現する。
使用できる外国語は、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、韓国・朝鮮語のいずれかとする。b 基礎日本語作文(検査時間:30 分、15 点満点)
これまでの経験や身につけてきた知識をもとに、自らの考えを適切に表現する。
外国語作文は、海外の学校教育定番の「essay writing」です。
このスタイル、日本の学生は苦手なのですが、海外で現地の教育を受けた生徒なら問題はないでしょう。
B方式・・・アドミッションポリシーに基づき、適性試験Ⅰおよび適性試験Ⅱを実施する。
a 適性検査Ⅰ(検査時間:45 分、50 点満点)
(ア) 大問2題で構成する。
(イ)自然環境等に関して、多角的な視点から考える問題を設定する。
(ウ)実世界のさまざまな場面において、数理的に考え、対処する問題を設定する。
b 適性検査Ⅱ(検査時間:45 分、50 点満点)
(ア)大問1題で構成する。
(イ)社会問題等に関わる資料から問題を見いだし、自らの考えを表現する問題を設定する。
適性検査については、公立中高一貫校と同等と考えてよいと思います。文系・理系、それぞれの問題です。
しかし、「適性検査」といわれると身構えてしまいますが、私学ではどこでもこれくらいの思考力問題は出題されています。
ただし、記述に関してはトレーニングが必要でしょう。
◆面接
入学者選抜は、書類審査:100点、試験(作文or適性検査):100点、面接:50点の250点満点となっています。
これ、どう見ても、国内受験生は適性検査を受けますね。帰国生は作文でしょう。
基礎日本語作文
あなたの経験の中で、失敗が成功につながったことはどのようなことですか。また、その経験から学んだことは何ですか。あなたの考えを述べなさい。
とくに字数指定はありませんが、解答用紙は600字のマスが用意されていますので、600字以内ですね。ということは、最低でも500字以上、できれば550字は書きたいところです。
テーマとしては普通です。帰国生入試の作文としては良く見かけるテーマですね。
国内生も帰国生も同じ課題ですので(実は編入の中2も同じ問題)、帰国生なら海外での経験に基づき、国内生なら日本での出来事を書けばよいのです。
ポイントは2点です。
◆失敗が成功につながった経験
◆その経験から学んだこと
それにしても、よく見かける問いですが、私に言わせると「無茶ぶり」ですね。
そもそも小学生は大した失敗はしません。なぜなら、周囲の大人、とくに親がカバーしてしまうからです。昔なら「過保護」と言われるような親が、もはや普通となりました。
例えば、子供が体操服を家に忘れて学校に行ったとしましょう。今日は体育がある日です。
A:自分で忘れたのだから、学校で困ればいい。
B:学校で困るだろうから届けてあげよう。
みなさんはどちらですか?
Aと行きたいところですが、結局届けてしまうのでは?
さらに子供たちは、失敗から学びません。何度でも同じ失敗を繰り返します。つまり、失敗が成功につながらず、その経験から学んだことも無いのです。
それが普通の小学生というものですね。
ということは、この作文は、二つの方向性しかありません。
(1)ささやかな(幼稚な)失敗の経験を書く
(2)フィクションを書く
(1)のささやかな失敗は、いくらでも思いつくと思います。
例えば、その日授業で使うといわれていた地図帳を忘れました。そこで隣の子に見せてもらいました。そこから学んだ経験は、「次から忘れないように前日にきちんと準備する」ことか、「困っていた人がいたら自分も率先して見せてあげることにした」か、そのどちらかですね。しかしこれではあまりにも「幼稚」です。こんな作文を600字も読まされたくはないですね。
となると、ありきたりですが、学習面を書くしかないでしょう。
「苦手な教科を後回しにしていたら、成績が下がってしまった。そこで、毎日苦手教科から先に勉強するようにした。そうすると成績も上がってきて、授業も楽しくなり、いつのまにか苦手教科が得意教科になっていた。人はだれしもやりたくないことは後回しにしがちだが、そこから逃げずに正面から向き合うことの大切さを学んだ」
こんなところでしょうか。
実につまらない作文です。
しかし、ここは平均点を超えることが目標ですので。
採点基準はこうなっているのです。
【内容】
問題の内容を的確に理解している。
経験や知識に基づき、問題に対応した答えになっている。
【構成・言語】
文や段落につながりがあり、筋道が読み取れる。
適切な語法を使用している。
書く内容について評価されるというより、「どのように書くのか」が重視されていることは明らかです。もちろんその前段階として「何を求められているのか」の把握が必須です。
(2)のフィクション作戦について少し考えてみましょう。
まずは、学校の理念を確認します。
グローバルな視野の育成
多文化共生の教育
多様性と共通の価値・ルールの確立
社会参加を通した市民性の育成
基本的な知識・技能の習得と特色ある中等教育のカリキュラムの開発
とありました。
どれも重要ですが、正直言ってどの学校でも見かける理念です。
校長先生の言葉の後半に注目します。
異文化への寛容や耐性を持ち、社会の現代的な課題を読み解き、再構成して解決への鍵を考える力を持った生徒を育成・・・・・・世界各地での紛争、環境問題、人権問題など、社会を大きく変えてしまうほどの問題が次々と起きています。このような時代を生き抜くだけでなく、好転させていく力を持つ人材を育てたい、現代的な問題に直面し、課題の本質を見極め、しっかりと課題解決のできる子供たちを育てたい。
なるほど。社会の課題に向き合う子供、というあたりがヒントになるでしょう。
ただし、小学生が国際紛争問題について書くことはできません。失敗の経験もそこから成功体験も書けないでしょう。
となると、人権問題か環境問題に着眼してみます。
もし小学校の同級生に、外国がルーツの子がいたとしたらどうでしょうか。
最初は話しかけるのを敬遠して、なんとなく「仲間外れ」にしてしまったのです。もちろん意図してというよりは、無意識で。しかし、途中から思い切って話しかけてみたら、打ち解けることができました。差別の心というのが、こうした自分から垣根を作ってしまうところから始まるということを学んだのです。
小学校の女子と男子が対立していました。自分としては、女子の言い分のほうに理があると思っていても、それを口にすると、周囲の男子からからかいの対象になるので、言うことができなかった。しかしある日、勇気を出して女子の味方をした。そのことで、男女の対立はくだらないこと、さらに周囲からどう見られるかより、自分がどうしたいかが重要であることを学んだのです。
家では、毎週のごみ出しは自分の担当だった。ある日、いつものようにゴミ捨て場にゴミを出しにいくと、どうやら周囲の家庭から出るごみは、自分の家のゴミよりもはるかに少ないことに気が付いた。ゴミの回収は無料だったため、今までゴミの減量など意識したことがなかったが、多くゴミを出せば、その分回収や処理のコストも増大するし、何より環境に悪影響がある。そこで、家族に提案して、「我が家のゴミ減量大作戦」を実施した。そうすることで、ゴミの半減に成功した。
小学生ですから、これくらいの内容が書ければ十分です。