中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学・高校】女子校から共学化の流れ

最近立て続けに女子校が共学化しています。

今回はそれに関する話題です。

どんな学校が共学化した?

私が記憶にある古いところでは、1996年の渋谷女子高が渋谷教育学園渋谷中高になったことでしょうか。

それ以前から女子校の共学化の動きもあったはずですが、すいません、覚えていません。

渋谷渋谷、そしてその少し前の渋谷幕張の登場以前には、進学校=男子校・女子校であり、共学校=大学付属校 という図式が成立していました。唯一の例外とも言うべき学校は神奈川の桐蔭学園くらいでしたでしょうか。

やがて、渋谷渋谷の後を追うように、順心女子が広尾学園へと変わり、戸板女子が三田国際へと生まれ変わりました。

実は、順心女子時代および戸板女子時代の校長先生(たぶん最後の校長先生)にお会いしてお話をうかがうチャンスがあったのです。順心の校長先生は、都立底辺高校の建て直しの手腕を買われて就任された方でした。「まずは挨拶から!」と元気にお話されていたのが印象に残っています。最も、少しお話していると、順心女子の実情には少々疎かったことも覚えています。その後まもなく順心女子は消えましたので、挨拶作戦はうまくいかなかったのでしょう。

また、戸板女子の校長先生と教頭先生にお会いしたときには、「真面目そうな生徒が多いですね」と申し上げたところ、真向否定されたのが印象的でした。

 

その他に、共学化した女子校および今後共学化予定の学校をランダムに列挙してみます。年代順に整理しようとしたのですが、予想以上に多かったので、列挙するだけになってしまいました。

 

〇神戸山手女子高等学校→神戸山手グローバル中高

〇親和中・親和女子高→女子部と共学部を併設する形で共学化

〇武庫川女子大学→武庫川大学(大学ですが、話題になったので)

〇園田学園中高(名称変更せず共学化)

〇福岡女子高校(福岡県)→ 2027年度をめどに共学化する方針を固め、新たな校名を検討中。候補は5つ。福岡共創/海輝共創\市立福岡/Fukuoka City High School/福岡海風

 そろそろ決まる頃ですが、さすがに横文字はどうなんだろう。インターならいざ知らず日本の学校ですから。

〇中村学園女子中学校・高等学校→中村学園中学校・高等学校

〇中村女子高校(山口県)→山口中村学園高校

〇明浄学院高等学校+藍野高等学校(大阪府)→明浄学院高等学校

〇清心中学校・清心女子高校(岡山)→清心中学校・清心高等学校

〇松山東雲女子大学→松山東雲大学

〇渋谷女子高→ 渋谷教育学園渋谷中学校・高等学校

〇東横学園 ⇒ 都市大等々力中高

〇順心学園 ⇒ 広尾学園中高

〇青蘭学院 ⇒ 青稜中高

〇宝仙学園 ⇒ 宝仙理数インター ⇒ 順天堂大学系属理数インター中学校・高等学校

〇嘉悦女子中高 ⇒ かえつ有明中高

〇戸板女子 →三田国際学園中高→三田国際科学学園中高

〇中延学園 ⇒ 朋優学院高

〇八雲学園中学校高等学校 ⇒ 校名変わらず

〇横浜英和女学院 ⇒ 青山学院横浜英和中学高等学校

〇桐蔭学園中学校男子部・女子部・中等教育学校(男子校) ⇒ 桐蔭学園中学校中等教育学校(共学)

〇武蔵野女子学院中学校 ⇒ 武蔵野大学中学校

〇横浜富士見丘学園中学校 ⇒ 横浜富士見丘学園中学校

〇小野学園女子中学・高等学校 ⇒ 品川翔英中学校・高等学校

〇村田女子高等学校 ⇒ 広尾学園小石川中学校・高等学校

〇東京女子学院中学校・高等学校 ⇒ 英明フロンティア中学校・高等学校

〇東京女子学園中学校・高等学校 ⇒ 芝国際中学校高等学校

〇横浜富士見丘学園中学校 →校名変わらず

〇聖ヨゼフ学園中学・高等学校 →校名変わらず

〇聖徳大学付属女子中学校・高等学校 ⇒ 光英VERITAS中学校・高等学校

〇星美学園中学校・高等学校 ⇒ サレジアン国際学園中学校・高等学校

〇目黒星美学園→サレジアン国際世田谷中学・高等学校

〇千代田女学園 ⇒ 武蔵野大学附属千代田高等学院→千代田国際中学校を併設

〇蒲田女子高等学校 ⇒ 羽田国際高等学校

〇文華女子高等学校→東京文華高等学校

〇盛岡白百合学園→校名変わらず

 

まだまだあると思いますが、それにしてもずいぶんたくさんあるのですね。

 

 

共学化の理由

 

これは単純です。

学校生き残りが目的です。

定員割れによる存続の危機が原因です。

 

例えば、昨年には、盛岡白百合学園が共学化を発表し、これには驚きました。白百合といえば、東京の白百合学園を筆頭に、全国に7校の姉妹校があります。その白百合7姉妹の一人が共学化!

聞くところによると、 1882年開校と古い歴史を誇るカトリック系女子校の盛岡白百合も、27年前に定員割れとなって以降入学者は減り続け、中学校の定員80名に対して入学者は24名、高校の定員240名に対して入学者は86名となっていたそうです。これは相当深刻な事態ですね。起死回生の一手としての共学化なのでしょうけれど。卒業生のみなさんんはどう思っているのかな?

 

私は、理念なき教育は、教育ではないと思っています。

例えば大学合格実績を追い求める学校もたくさんあります(ほとんど)が、それのみが教育の目的であるのなら、もはや塾・予備校と変わりません。

・毎日の補習

・夏休みの講習

・毎日小テスト→フィードバックプリント

こうした体制で大学実績を伸ばしている学校もいくつもありますが、まさに塾屋の発想ですね。

 

本来は女子校として創立された学校なのですから、共学化することに理念はありません。まさに生き残りだけが目的です。

しかし、そう言ってしまうと身も蓋もないですね。

そこで、後付けで様々な理念が付け加わります。

「これからの時代は・・・・」

「国際化・・・・・・」

「グローバルに活躍・・・・・」

「男女共生社会・・・・・・」

「自ら考える力を・・・・・」

 

また、学校施設を充実させるのも特徴です。

まさに生き残りをかけての大変革ですので、古い器には新しい中身は盛れないとばかりに、新しい教室環境や校舎設備を充実させるのですね。

たしかに、古臭い建物よりは、陽光降り注ぐカフェテリアやライブラリーのほうが良いに決まっています。

もっとも、私だったら、オフィスビルのような校舎よりも、歴史がつまった校舎のほうが好きですね。ダブリン・トリニティカレッジなんて、400年の歴史が詰まった素敵な建物です。生まれ変わったら通ってみたい。

 

もちろん、すべての共学化した学校が、定員割れからの脱出だけを目的としたわけでもないでしょう。新しい教育を実践する場としての共学化もあると思います。形としては女子校の共学化であっても、まったく新しい学校を新たに創立した、そういう学校もありますね。

 

今のところは、共学化することで人気が集まるという図式が成立しているようです。しかしそれが継続するかどうかはわかりません。

やはり、しっかりとした背骨が通っていない学校は共学化したところで淘汰されていくと思います。