
中学校を選ぶとき、未来をどこまで想定していますか?
バックキャスティング
ビジネスのプロジェクトでよく使われる言葉ですね。「未来逆算型思考」とでもいいましょうか。
中学入試に適用して考えてみます。
現在小3だとすると、「10年後に入りたい大学」から逆算して中学校を選ぶ手法です。
あるいは、大学卒業時の職業まで視野に入れれば、「14年後(院ならもっと)」に就きたい職業から逆算して中学校を選ぶことになります。
バックキャスティングを成功させるためのポイントは、「現状の制約、過去の状況を排除(無視)して、〇年後の未来の『あるべき理想像』を明確にする」ことにあります。
例えば、自動車会社の場合ならこうなります。
ビジョン:2050年に新車の平均走行時CO2排出量を2010年比で「90%削減」し、工場のCO2排出を「ゼロ」にする。
逆算したアクション:現在のガソリン車の改良だけでは不可能なため、水素燃料電池車(FCV)の量産や、EV(電気自動車)シフト、工場の水素エネルギー導入など、これまでの延長線上にない革新的な技術開発へ投資する。
人ではこんなかんじでしょうか。
5年後の理想の未来:海外を拠点に、フルリモートのフリーランスエンジニアとして月収100万円を稼ぐ。
逆算したアクション:
4年後:実務で海外案件をこなせる英語力と高度なプログラミングスキルがある状態。
3年後:副業で月10万円を稼げる実績を作り、英語でのミーティングに慣れている状態。
2年後:必要なプログラミング言語を習得し、現在の会社で開発プロジェクトのリーダー経験を積む。
今やるべきこと(今日):オンライン英語学習の申し込みをし、プログラミングの基礎カリキュラムを1ページ進める。
なるほど。「プログラミングはわからないしなあ」「英語苦手だよ」といった、現在の制約を完全に排除することが大事なのですね。
必要なのは明確な「ビジョン」です。
ただし、最初の「ビジョン」=理想の未来像の設定が問題です。
例えば、「5年後に不労所得年収1億以上稼ぎ、ドバイに移住」というビジョンを描いたとします(品の無いビジョンですいません)
これは「ビジョン」ではなく「妄想」ですね。
ただの「妄想」に終わらせないためには、客観的な未来予測データが必要なのです。
【ステップ1:未来情報のインプット】
↓ (信頼性の高い未来予測データの収集)
【ステップ2:理想の未来(ゴール)の設定】
↓ (現在の制約を無視した「あるべき姿」の可視化)
【ステップ3:現状とのギャップ・課題の洗い出し】
↓ (未来視点から見た現在の不足要素を特定)
【ステップ4:バックキャスト(逆算)による道筋の配置】
↓ (時間軸をさかのぼり、必要なマイルストーンを置く)
【ステップ5:今すぐ取り組むアクションの実行】
↓ (直近の具体的な行動へ落とし込む)
中学受験生の場合
現在小学3年生だとして、将来は海外勤務という「理想の未来」を思い描いたとします。
【ゴール:商社で海外勤務】
↑
【大学:タフな環境での経験】(留学、タフなゼミ、異文化交流、インターン)
↑
【中高:英語力 + 圧倒的な主体性】(留学制度が豊富な学校、生徒会、部活リーダーなど)
↑
【中学受験:海外への扉が開かれた学校選び】(※今、ここを目指して準備する)
↑
【小3〜小4:知的好奇心の育成と学習習慣】(世界への興味、勉強の土台作り)
当面の目標の「中学受験」の学校選びはこうなるでしょう。
単なる偏差値だけでなく、将来の夢に直結するの強みを持つ学校をターゲットにする。
・本物の英語教育・海外研修があるか: 単なる語学学習ではなく、海外の学校と提携し、「現地で議論やPBL(課題解決型学習)ができる環境」がある学校
・多様なバックグラウンドを持つ生徒がいるか: 帰国子女枠があり、日常的に多様な価値観に触れられる学校は、商社パーソンに必要な「異文化適応力」を自然に育てるはず。
・「レジリエンス(折れない心)」を育てる校風か: 商社の仕事は泥臭く、タフさが求められます。部活動や学校行事が盛んで、生徒の自主性を重んじる活気のある学校が向いているはず。
こう書いてきて、今人気の新興校が該当することに気づきました。もしかしてみんな商社勤務を目指している?
バックキャスティングの問題
もうお気づきでしょうか。
上にあげた「商社勤務を目指す小3」の例をみて、「違和感」「気色の悪さ」を感じたことと思います。
バックキャスティングの手法は、目標達成には関係のない「無駄」の排除につながります。
「僕は将来商社に入って世界を飛び回るんだ。だから日本地理や日本史を学ぶ意味なんかない」
「中受に必要最低限な国語はやるけど、それより英語」
「算数なんか無駄」
こんな小学生は嫌ですね。さぞかし「教養」も「余裕」もない子に育つことでしょう。
また、わずか9歳で「将来の仕事」までを確定したことにも問題があります。
バックキャスティングの手法は、もうこれ以上思考・志向・嗜好が変化しない大人の世界の手法なのです。
小学生は、未来が混沌としています。今好きなことが、数年後にもまだ好きかどうかなんてわかりません。むしろそうでない可能性のほうが高いのです。
また、未来のビジョンを確定するということは、将来の可能性の芽を摘み取ることにもつながります。
・進路変更への弱さ: 子どもの興味関心が変わり、文理選択や志望校が変わった際に対応しにくい
・過度なプレッシャー: 小学生の時点で10年後の高い目標を押し付けられると、負担になる
・結局は親の押し付け:将来を親から押し付けられる「嫌な臭い」しかしません
こんな子がいました。
父親から「医学部に行け!」と幼少期から言われ続けたのです。ちなみに両親は医者ではありません。なぜ父親がそうした妄執にとらわれたのかはわかりません。
中学受験は父親の「教育虐待」レベルの徹底的な管理で進められました。そのかいあってか、中学は最難関の私立に進学しました。しかしそこから子どもは勉強しなくなります。自我が芽生えたからです。親が自分の未来を決めようとする理不尽さに気づいたのです。6年間親に反発し続け、学校もさぼり、勉強もしませんでした。かろうじて卒業はできたものの、大学受験(医学部しか受験させてもらえなかった)に失敗します。親により、全寮制スパルタ医学部予備校に入れられました。寮を何度も抜け出しては連れ戻される日々だったとか。
最終的には医者にはなりませんでした。
子どもにだって自分の未来を決める権利はあります。
そして、子どもは成長し続けるのです。
まだ「情報」を持たない子どもに、10年後の未来など想定できるはずもありません。
そもそも「バックキャスティング」の前提が成立しないのです。
フォアキャスティング
バックキャスティングの逆、「積み上げ型」の手法です。
実は、小学生にとってはこちらのほうが良いのです。
・「子どもの今の学力や性格、校風との相性」を重視
・現在の偏差値や成長速度に見合った学校を選ぶ
・幅広い選択肢: 入学後の成長や変化に合わせて、高校・大学受験時に柔軟に進路を選ぶことができる
・将来の可能性を狭めない
・子どもの成長や変化を見守る
実際には、バックキャスティングとフォアキャスティングの組み合わせとなるでしょう。
学校選びについては、「功利主義」は避けるべきなのです。