き
6年生になりました。
入試まではあと10か月です。
そうです、1年ではないのです。
この段階で、もはや言うべきことはありません。
とはいうものの、いくつかアドバイスをさせていただきたいと思います。
「伸びしろ」という誤解
「うちの子は今までちゃんと勉強していなかった。だからこれから頑張れば伸びるはず」
「あんな勉強のやり方だったのにこれくらいの成績がとれている。ということは、真剣に取り組めば伸びる余地があるに違いない」
「うちの子は後伸びタイプだから。これからが勝負!」
親としては、わが子に期待をかけるのは当然です。希望も抱くでしょう。
しかし、そのことと、現実から目を背けるのは別問題です。
「今まできちんと勉強していなかった」
=「今まできちんと勉強することができなかった」
=「きちんと勉強する能力がない」
≠「やろうと思えばやれる」
一般論のお話ではありません。
中学受験勉強というごく狭い世界でのお話です。
4年生・5年生の間に、「正しい勉強のやり方」は執拗なくらいにレクチャーされ、「やるべき教材」もすべて目の前にありました。「やらねばならない環境」もあったはずですし、「周囲の生徒はやっていた」と思います。
それなのに「やれなかった」のはどういうことなのか、考えるまでもありません。
「でも、知り合いの太郎君は、6年生になってから頑張って〇〇中に合格したんですって」
それは、太郎君の話であって、自分のお子さんの話とは無関係です。
「あきらめずに頑張れば行ける!って塾の先生がおっしゃった」
ああ、それは。いわゆる塾特有の「頑張れば何とかなります」トークです。
それが塾の仕事ですから、皆そう言うしかないのです。
まず、現時点の学力・能力を正確に把握する。
そこがスタートラインです。
ノイズを排除する
学習の妨げになるようなノイズ=雑音を全て排除します。
◆スマホ・タブレット
◆ゲーム機
◆漫画・小説
◆テレビ
物理的に集中力の妨げとなるような物は全て排除しましょう。
さすがにこの時期になってまで、ゲーム機や漫画が子どもの身近にあるはずはありませんが。
また、小説については、入試頻出の作家の本を休憩時間に読む、というのは許容しますが、くだらない小説は時間の無駄です。
もっとも、休憩時間というものがそもそもありませんので、しばらく読書は封印でしょうか。
そういえば、家のテレビを撤去したご家庭もありましたね。良く考えれば、大人だって、テレビがなくても困らないと思います。
また、「精神的環境」からノイズを取り除くことも重要です。
子どもが「自分の子ども部屋」で一人で勉強している間に、両親はリビングでテレビを見ている。
子どもがリビングで勉強にとりくんでいる時、横のソファでは父親が寝そべってスマホをいじっている。
このような環境が良いはずがありませんので。
子どもは、勉強から逃げ出す口実を無限に作り出すものです。
・何度もトイレに行く
・何度も冷蔵庫を開けにくる
・気分転換と称してさぼる
・テキストを開いたままぼんやりする
こうした逃げ道を塞ぐことが重要です。
子どもの塾での様子を把握する
集団指導塾に通っている子は多いと思います。
お子さんが塾でどのような時間を過ごしているのか把握されていますか?
毎回の小テストで座席を入れ替える塾も多いですね。
そして、点数が高かった生徒から順に前に座らせるのです。
その場合、最後列に座った子どもたちが、どのように授業を受けているのか、ご存じでしょうか?
残念ながら、「お客様」状態です。
塾の教師は、その子たちの相手をしません。
質問しても答えられない、授業をきちんと聞いていない、そうした生徒たちを構う時間が無駄だからです。
最前列で目を輝かせて教師の説明を聞いている生徒、質問すれば真っ先に手があがり一所懸命授業に参加しようとする生徒、こうした生徒のほうを優先するのは当然でしょう。
すでに優秀で、さらに上を目指す生徒
あと一息の成績で、それを何とかクリアしようと頑張っている生徒
まだまだの成績だが、それでも前へ進もうとしている生徒
こうした生徒が塾においては最優先です。別に塾の経営者からそういう指示がでるのではありません。教師の本能として、こうした生徒を優先して指導するのは仕方がないのです。
もっとも、プロの教師なら、多少集中力が不足していたり、やる気や学力も足りない生徒も何とか授業に巻き込み、授業に集中させることもできます。成績向上のアドバイスもできるでしょう。
しかし、教師の目も手も届かない領域にいる生徒が必ずいるのです。
実感としては、教室内の1割~2割くらいでしょうか。
お子さんが、はたして塾内でどのような生徒なのか、確認するべきですね。
「先生、うちの子は塾ではどんな様子ですか?」
これだと正直な答えは聞けないでしょうね。
「まずまず頑張っていますよ」程度の答えしか期待できません
「先生から見て、うちの子のダメな点を全て包み隠さず教えてください」
これくらい言わないと本音は聞き出せないと思います。
・カンニングをしている
・隣の子の邪魔ばかりしている
・机上にペンを並べることに余念がない
・いつも体が揺れていて集中力ゼロ
・椅子にのけぞるようにして座っていて教師の話を聞いていない
・教師の注意を受け止めることができない
・ノートを書けない
・読めない字を殴り書きしている
・授業妨害の発言ばかり
・何度もトイレに行き、なかなか戻ってこない
・他の生徒を批判してばかりいる
・単純にうるさい
・授業の邪魔となっている
・授業準備も帰り支度も遅すぎる
・忘れ物が異常に多い
・口のきき方がなっていない
これくらいのことを指摘されることは覚悟しましょう。
むしろ言ってくれるとありがたいと思いましょう。
選り好みをしない
食事から栄養をとることを例とします。
おそらく、食べる順番・食べ方等で、栄養の吸収も変わるのでしょう。
今、目の前に様々な料理の皿が並んでいます。どれも栄養豊富です。
お腹がすいています。空腹というより飢餓状態です。
そして、急いで栄養をつける必要に迫られています。体力を急いでつけなければならないのです。
そんな状態なのに、「どの皿から食べようかな?」「どれから食べたら効率が良いのかな?」などと考えますか?
まずは一番手前にある皿から箸をつける、これが正解に決まっています。
その一皿を食べ終えたら、次の皿に箸をつけます。
こうして、今目の前にある皿の料理を片端から食べていくのです。
知識が足りません。問題も解けない状態です。
そして、いそいで学力をつける必要に迫られています。受験は待ってはくれません。
そんな状態なのに、「どの分野から始めようかな?」「どれから勉強するのが効率が良いのかな?」などと考えている場合ではありません。
今目の前にある教材から手を付ける、これが正解に決まっています。
その教材が終わったら、次のプリントに手をつけます。
こうして、今目の前にあるプリント・テキスト・テストを片端から勉強していくのです。