中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

2022 渋谷教育学園渋谷 帰国生入試 日本語作文

2022年の渋谷渋谷の帰国生入試日本語作文を検証します。

 

次のどちらかの題名で、600字以上800字以内の作文を書きなさい。

「〇〇がなくなってしまったら困る」

「〇〇がなくなってしまって困った」

※〇〇にことばを入れて題名としてください。

※〇〇に入れるものを具体的にあげて、それがなくなったら困る理由・実際になくなってしまって困った経験のどちらかを具体的に書いてくだしあ。

※〇〇には、物、食べ物、場所、スポーツ、行事など何を入れてもかみあmせん。

※海外生活の中で得られた経験をできるだけ生かして書いてください。

 

相変わらず、渋谷渋谷らしいテーマですね。

 

帰国生入試で作文を課す学校は多いですが、ありきたりな課題がほとんどです。

「あなたが海外で体験したことで一番印象に残っていることを書きなさい」

「あなたが海外で困ったこと、そしてそれをどう乗り越えたのかについて書きなさい」

まあ、こういったパターンが普通です。

しかし、渋谷渋谷は、毎年、一ひねりした、いわば変化球のような出題をするのです。

 

実は、この出題は私にとって思い出深いものでした。

私の記述指導教室で、海外在住の生徒に、

「社会から無くなったら困るものの例を1つあげ、その理由とともに説明しなさい」

というエッセイライティングの指導をやっていたからです。

その時指導した生徒がもしこの年の渋谷渋谷を受験していれば、まさに「大的中!」のはずだったのですが、残念ながらその生徒は、渋谷渋谷を受験しませんでした。

 

さて、ここはどちらのテーマを選ぶべきでしょうか。

実際に無くなって困った経験を書くのか、それとも、もし無くなったら困るものについて書くのか。

 

本当は、実際に経験したことについて書くほうが書きやすいのですが、はたしてそんな都合のよい経験をしたことがあるかが問題です。

また、経験を書こうとすると、どうしても幼稚になりがちです。

 

「お財布を無くして困った」「家の鍵を無くして困った」

こんな内容では、評価されません。別に海外生活の中でなければ得られない経験でもありません。

日本ではなくしても困らないが、海外ではなくすととても困る、そうしたものがもしあればよいのですが、何か思いつくでしょうか?

 

そこで、「物」以外のものを考えるほうが書きやすいのです。

例えば、「給食」はどうでしょうか。

「日本では当たり前のように学校では給食を食べていた。普段家では食べないようなものが出てくることで、食わず嫌いを直すことができたし、皆一緒の物を食べることで仲良くなれた気もした。だが海外の学校では、カフェテリアはあるけれど有料だし、家からお弁当を持参すると親が大変である。今考えてみれば、日本の学校給食は大切な物だったと思う」

といった内容ならば、書きやすそうですね。

あるいは、日本にいたときには近所の神社のお祭りがとても楽しみで、毎年子ども神輿を担ぐのが好きだったのに、それが無くなってしまった、といったように、伝統行事・年中行事も書きやすいと思います。

 

さて、実際の体験ではなく、「もし無くなったら困るもの」についてはどうでしょうか。

何をとりあげてもよく、そしてなくなったら困る理由についても書きやすいので、こちらのほうがお勧めです。

 

ただし、海外の体験を反映させることに注意が必要です。

「冷蔵庫がなくなったら困る」「車がなくなったら困る」では、海外体験と無関係になってしまいます。

食べ物をとりあげるのは、少々幼稚にはなりますが、書きやすいと思います。

「自分はご飯が大好きなので、海外で美味しいお米が手に入らなかったときは困った」

そんな切り口になるでしょうか。

ある生徒は、日本に一時帰国した際に、「ヨーグルトメーカー」を買って帰りました。いったい何に使うのかというと、「納豆」を自作するためだそうです。とにかく納豆が大好きで、日本にいたといには毎朝必ず食べていたのです。それがヨーロッパでは手にはいらない。そこで自作することにしたのですね。

納豆がなくなると困る、というテーマからは、「気づき」や「学び」「成長」につなげるのは難しいですが、面白いテーマですから一定の評価は得られそうです。

 

「電車がなくなったら困る」はどうでしょうか?

これは、幼少期からアメリカで過ごし、大学入試を契機に帰国した生徒が言っていました。

「日本は最高!」

何が最高なのかというと、自分一人で外出ができるのが最高なのだそうです。

たしかにアメリカは、大都市中心部を除くと、基本的に車が無いとどこにも行けません。公共交通機関も十分ではなく、しかも治安の面で不安が残ります。郊外エリアに住んでしまうと、ちょっと外食するのにもスーパーに行くのにも、車が無いとどうにもならないのです。

その生徒も、アメリカでは、学校と家、そして塾のあいだを送迎スクールバスで往復するだけの日々でした。たまにショッピングモールに行くのにも、「誰かの車」がなければ行けないのです。その「誰か」というのは、だいたいは親たちです。

ところが、日本は治安も良いですから、中高生でも普通に子どもだけで、街に外出しています。買い物も食事も、一人でできるのです。移動手段も豊富です。公共交通機関が発達していますので。

「自分の力で移動できる自由が最高」なのだと言っていました。

ここまで考えて、「電車が無いと困る」と書くことができれば、良い作文になりそうです。