中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】洗足学園の攻めの姿勢

どうも最近洗足学園の攻めの姿勢が気になっています。

私の個人的な感想レベルの話で恐縮ですが、すこしまとめてみます。

入試回数を減らす!

2025.4.14にこんな発表がありました。

2026年度 中学入試(一般生)に関して(重要なお知らせ)
 洗足学園中学校では、2026年度中学入試(一般生)に関して、下記の通り日程及び募集定員を変更いたします。
①入試日程を第1回2月1日、第2回2月2日といたします。
②第1回入試(2月1日)の募集定員を120名といたします。
③第2回入試(2月2日)の募集定員を100名といたします。
第3回入試は実施いたしません。

2025年入試までは、洗足学園は、募集定員40名の3回目入試を2/5に実施していました。

それを廃止して、その40名の募集定員を2/1に合わせるのです。

 

私が理由としてまず最初に考えたのは、3回入試(2/5)には、学校が思っているような「優秀な」生徒が集まらなかったのではないか、ということでした。

2/5ともなると、優秀な受験生は他の学校、たとえば桜蔭・女子学院・渋谷渋谷・豊島岡などに合格してしまい、5日の洗足までは受験してこないのではないか、ということです。

そこで過去3年の入試結果を見て見ました。

洗足 入試結果

3回の入試問題の難易度が変わらない、と仮定すると、受験者の得点に大きな差は無いように思われます。むしろ、1回入試が一番低く、3回入試の受験生の得点が一番高い傾向すらうかがえます。

3回入試は、優秀層を集める機能を十分に果たしていたのです。

このことから、3回入試で入学してくる「優秀層」をあきらめてまで入試回数を絞る理由が他にあったことが推測されます。

もっとも、学校内部には「3回入試で進学してくる生徒よりも1回入試・2回入試で進学してくる生徒のほうが6年後の成績は伸びる」といった極秘データがある可能性はあります。

 

学校としてのステイタス

 

ここで、洗足学園の「ライバル?」であるその他の学校の入試日を見て見ます。

〇桜蔭・・・2/1

〇女子学院・・・2/1

〇豊島岡・・・2/2・2/3・2/4

〇雙葉・・・2/1

〇吉祥女子・・・2/1・2/2

〇鴎友・・・2/1・2/2

〇フェリス・・・2/1

〇渋谷渋谷・・・2/1・2/2・2/5

このあたりの学校が、洗足学園を受験する生徒が検討することが多い学校ですね。

地域的には中大横浜や法政第二と併願する子もいますが、大学附属を好む層と、進学校を好む層はずれているのでここではとりあげませんでした。

 

従来は、桜蔭・女子学院・雙葉を受験する生徒の「押さえ」の学校として、吉祥女子・鷗友・頌栄・洗足学園の名前がよくあがったものです。住む地域によって棲み分けがされていました。私の勝手な憶測では、洗足学園はこういう段階を経ているような気がします。

①吉祥女子・頌栄・鷗友の集団から抜け出す

②神奈川のトップ女子校、フェリスを抜く←今このあたり

③豊島岡を抜く←もしかしてすでにこのあたりかも

④女子学院を抜く

 

 

勝手に「抜く」といったワードを使っていますが、大学実績と入試偏差値という数字で上回るといったほどの意味合いです。

学校選び、とくに女子校選びで重要な「生徒の様子」「学校の雰囲気」といったものは数値化できませんので。

同じ神奈川県でも、フェリスと洗足を迷っている方はあまり見かけません。両校ともそれぞれの良さがあり、好みが別れるということなのでしょう。

東大合格者推移



わかりやすい指標として、洗足・女子学院・フェリス・豊島岡の東大合格者数推移をグラフ化してみました。単年比較は上下動が激しく見づらいので、5年移動平均も表示しています。

これを見ると、洗足の伸びの凄さがよくわかります。

ただし、おそらく洗足学園は東大合格者数を伸ばすことに注力していると思いますが、女子学院やフェリスがそこにこだわっているとは思えません。とくに女子学院は「自由放任」の学校ですから。

 

私は、複数回入試を行う学校の場合、最も募集定員が多い入試回が、その学校がメインと考えている入試日だと考えています。常識的に考えてそうですね。

今回洗足学園の変更は、学校の考えている「メインの入試日」が、2月2日から2月1日になったことを意味すると思っています。

2月1日は、東京・神奈川の主要校の入試が集中する日程です。

第一志望として受験する生徒が集まる日程です。

今の洗足なら、優秀な受験生が1日に第一志望として受験するはずだ、と自信があるのではないでしょうか。

 

帰国生の受け入れ

洗足学園も帰国生入試を行っています。

1/10に実施される入試では、A方式・・・英語・面接、B方式・・・英語・国語・算数・面接、このどちらかの方式を選択して受験します。

帰国生入試としては珍しくないスタイルですが、1つだけ気になる点があります。

帰国生入試の募集要項をごらんください。

帰国生募集要項

そこには、出願資格として、「2013年4月2日~2014年4月1日に生まれた女子」とだけあります。

気がつかれましたか?

大切な文言が見当たらないのです。

ちなみに、渋谷渋谷の帰国生入試の応募資格はこうなっています。

 

応募資格
2025年3月小学校卒業見込み者またはそれに準ずる者で、試験日までに海外在留2年以上、帰国後2年以内の者。この資格に近い状況の方は応相談。

 

また、広尾学園はこうなっています。

「原則、海外在住経験が1年以上あり、帰国後3年以内であること」

 

さらに、三田国際はこうです。

「保護者の転勤等に伴い、海外に継続して1年以上在住し、帰国後3年以内の者

 

実は、帰国生入試の条件については、2年ほど前に、「東京私立中学高等学校協会」が定めた基準=「海外1年以上、帰国後3年以内」に従っているのですね。渋谷渋谷は少し厳しめということでしょうか。

 

しかし、この取り決めは、「東京私立中学高等学校協会」のものです。

洗足学園は神奈川県の学校です。

 

ということで、募集要項から判断できるのは、洗足学園の帰国生入試は、海外在住経験のない者でも受験可能ではないか、ということです。

 

だいぶ以前の話ですが、洗足の先生から、海外経験の無い受験生が帰国生入試で合格した、とうかがったことがあります。今でもそういう生徒がいるのかどうかはわかりません。出願書類に「海外最終滞在1年分の成績表コピー」とありますので、海外経験の無い受験生が出願するには勇気が必要ですね。

 

いずれにしても、このあたりからも洗足学園の「攻めの姿勢」を私は感じます。

 

ちなみに、洗足学園がロールモデルの1つとしている(と勝手に私が憶測している)渋谷教育学園幕張の帰国生入試の出願要項はこうなっています。

【出願資格】
下記のア、イ、のいずれかに該当する者
ア、2025年3月に小学校を卒業見込みの者
イ、2012年4月2日から2013年4月1日までに生まれた者

 

さらにQ&Aにはこうありました。

Q:帰国生入試の出願資格を教えてください。
A:帰国生入試の出願資格に記載の通りです。帰国生入試の出願に関して、海外在留期間や帰国後の年数、国籍、居住地、国内インターナショナルスクールからの出願資格等、様々なご質問を受けることがありますが、出願資格に記載された条件を満たしていれば出願できます。

この学校も東京ではなく千葉ですので、帰国生入試が「帰国生のみ」入試になっていません。

これって、アリなんでしょうか?

 

学力向上に抜かりなし

 

◆放課後講習

何と、学校の先生が授業後に「講習」を開いてくれるのです。

放課後に70分授業を週1回、年間で16回行います。高校1年では英語・数学・国語の講座を開設しています。また、高校1年には東京大学をはじめとした難関国公立大学進学のための総合コースも設置されています。高校2年からは、理科・地歴の講座も加わります。

塾への移動の必要が無く、時間を有効に使えるとありました。

総合コースや単科コースなど、まるで塾さながらの講座です。

費用は半期で1科目3000円~9000円となっています。

塾屋目線だと、ありえない金額ですね。

 

◆夏期講習・冬期講習・春期講習

学習のまとめと実力アップのため、夏休みなど長期休業中に実施します。教科によってはハイレベル、標準レベル、基礎講座の種類を設けています。

1科目2000円だそうです。

 

◆英語講座

14000円~20000円程度で、中1から各種講座が用意されています。

TOEFL講座やSAT講座、Speech Communication講座といった魅力的な講座が設置されています。

 

ここまで徹底して学校が面倒見てくれるのでは、塾や予備校の出番は無さそうですね。

 

◆自習室

放課後はもちろん、休日も開いている自習室が完備しています

また、小部屋に電子黒板とテーブル等が置かれたスペースもあり、数名が集う勉強会ができるようになっています。

高3生と既卒生は夜21時まで利用できるそうです。

 

こうしてみると、学力向上=大学実績 に全振りした印象があります。

進学した生徒に聞くと、宿題の多さに悲鳴を上げている生徒もいる一方、学校の格安講習を徹底利用する生徒もいました。

 

生徒の本音

 

洗足学園を卒業して大学に進学した生徒に会いました。

やっと大学生だね」

「うん!」

「洗足はどうだった? 中高時代は楽しかった?」

卒業生に会うといつもする質問です。普通なら満面の笑みで大きく頷いてくれるのですが。

「う~ん、まあまあかな」

「楽しくなかったの? もしかして勉強大変だったとか?」

「うん!」

激しく同意されてしまいました。

「そっか。勉強大変だったか。でも、そのおかげで難関大学に進学できたんだから、よかったじゃないか」

「そうだね」

「それに、今やフェリスを抜いたって評判だよ」

「嘘だあ」

「いやいや、大学実績も凄いしね。今やフェリスより洗足を選ぶ人が増えたと思うよ」

「そうかなあ?信じられないなあ」

たしかにこの子が中学受験したときには、フェリス>>洗足、といったポジションでした。

「ねえ、もしもう一度人生をリプレイするとしたら、洗足に行きたい?」

「あたし、フェリスのほうがいい」

「なんで?」

「だって、制服が可愛いから」

そこかい!

 

個人的には、深緑の洗足の制服はシックで素敵だと思うのですが、女子の意見は異なるようです。

 

この学校については、こちらでも記事にしています。

peter-lws.net