私のブログをお読みの方には、周知のことかもしれません。
私は、中学受験のために塾に行くことには反対の立場ではありません。
そうではなくて、
中学受験のためには必ず塾に行かなくてはならない
塾に行きさえすれば合格できる
塾にまかせておけば大丈夫
こうした、いわば「思考停止」が問題だと思っているのです。
最初に考えよう
お子さんが、まだ塾には通っていないことを前提としてお話します。
おそらくは、小学校低学年、もしかして幼稚園の年長くらいかもしれません。
「将来中学受験をするかもしれないし、そろそろ塾に行かせたほうがいいよね」
そう考えて塾探しに入る前に、考えなくてはならないことが3つあるのです。
(1)本当に中学受験するのか?
たしかに、中学受験をする子は増えてきました。首都圏(一都三県)の場合、およそ1/4の小学生が私立・国立中に進学しているというデータもあります。地域によっては、4割を超えるともいわれています。実感としては、教育熱心なエリアだと半分くらいが中学受験で中高一貫校に進学しているように思います。
たしかに、中高一貫校は魅力的な学校が多くあります。生徒の質や教育内容、施設等、公立中学とは比較になりません。高校受験を回避できる(場合によっては大学受験も)のも魅力的です。
しかし、中学受験の最前線に30年以上立っていたからわかります。すべての小学生が中学受験に「向いて」いるとはいえないのです。
向き・不向きを脇に置いておいたとしても、中学受験することにはいくつかのデメリットが存在します。
1.子供の時間の余裕がなくなる
2.親の精神的・時間的な負担が大きい
3.金銭的な負担が大きい
多大なメリットがある中学受験ですが、デメリットが存在しないはずがありません。ざっと上記3つのデメリットは否定できないのです。
このうち3のデメリット、金銭的な負担についてはここでは取り上げません。そもそもここを問題と考える場合、この記事を読んでいないと思うからです。また、教育を「コスパ」で語るのも不毛です。
ただし、無駄な出費を抑えることは可能です。
おそらく、中学受験のデメリットとして一番問題になるのは、時間の余裕でしょう。とにかく中学受験生は忙しい。時間が本当にありません。子供はもちろん、親の時間も奪われます。まるで託児所がわりのように、「すべてお任せください、毎日来てください」という、いわゆる「おまかせ系塾」に一定の需要があるのも、それが原因なのでしょう。親が自分の時間を犠牲にすることより、アウトソーシングを考えるご家庭もあるのです。
いずれにしても、これらのデメリットを考えて、本当に中学受験をするのか、このことについては家族(とくに両親)が徹底的に話し合っておく必要があります。
もし「我が家は中学受験しない」という結論が出たのなら、今から始める勉強の質が変わるからです。
具体的には、英語でしょうね。中学受験塾に通う時間をすべて英語の学びに費やしたとすれば、小学生の段階で相当な英語力が身に付きます。これは中学生になったときに大きな武器になります。もちろん英語だけをやっていればよいはずもありません。その他の勉強については、以下の拙著をお読みいただければと思います。
小学生のうちからやっておくべき準備についてもページを割いています。
(2)本当に塾に行くのか?
中学受験は、塾に通わなくても可能です。
こんな当たり前のことを言わなくてはならないほど、「中学受験=塾に行く」という概念が定着してしまいました。
古い話で恐縮ですが、私が小学生だった時代には、今のようなスタイルの塾は多くはありませんでした。日曜日に大学等の会場を借りてテストを実施する、「テスト会」と呼ばれるものが、塾だったのです。
「日本進学教室(日進)」が先行し、「四谷大塚進学教室」が後を追いました。これらの塾は、授業は無くテストだけでしたので、子供たちは家で自学自習してからテストだけを受けにいったのです。
つまり、自学自習でもなんとでもなったのですね。
やがて「日能研」の登場あたりから、今と同じ授業スタイルの塾が主流となりました。
中学受験の内容を考えたとき、自学自習でも十分受験には対応できます。
そのあたりについては、これも拙著をぜひお読みください。
なんだか今回は自著の宣伝ばかりのようで気が引けますが、参考になる内容であることはまちがいありませんので。
(3)どのレベルを目指すのか
これも重要です。最近世間では「ゆる中学受験」がはやりだそうです。
「ゆる中学受験?」
調べてみると、首都圏模試で偏差値60以下の学校を無理せずめざす、そういうスタイルなのだそうです。桜美林・宝仙・佼成学園・実践女子・三輪田・カリタス、そういったあたりですね。
これらの学校だからといって、決して「楽に」入れるとは限りません。
首都圏模試で60とされる学校は、日能研・四谷大塚の偏差値でいえば、45~50くらいの学校です。偏差値の性質上、50前後の人数が最も多くなっています。つまり競争が激しいラインだと考えてもよいでしょう。
したがって、「ゆる受験」と言うのは、子どものレベルよりもはるかに下の学校に、無理しないで進学する、そういう受験なのでしょう。
「親子が疲弊しない」
「やりたいことをあきらめない」
「ゴールは同じ」
「ゆる受験」を推奨している塾のHPでは、そういった文言を多く見かけます。
ゴールは同じ? どういうことかというと、例えば無理して開成中学に進学しても、結局GMARCHに進学するのなら、最初から楽な受験をして、GMARCHレベルなら推薦で進学すれば一緒だよね、そういうことなのだそうです。
個人的には大嫌いな発想ですが、ご家庭がそうしたスタンスなら、それは構わないと思います。
めざすレベルによって努力値は大きく変わります。学校によっては、算数と国語だけ、あるいは作文と面接だけ、英語だけ、そうした変則入試をやっています。なかには、パフォーマンスだけ、プレゼンだけ、そうした学校までありますので。
レゴブロックで何かつくってそれについて作文を書く、そうした入試なら、たしかに「ゆる受験」で問題はありません。
しかし、そうした受験で進学してきた生徒たちは、やはり学力は高くはありません。6年間の環境を考えると、少しでも努力して上をめざすことは正義です。なぜなら、そうして進学した学校には、同じようにして努力してきた子たちが集っているからです。
過去の生徒に、途中で4科目入試の中学受験から離脱し、英語だけを学んで、英語と面接だけで入れる「定員割れ」した中高に進学した子がいました。とにかく勉強が嫌いな子だったのです。しかしとても温かい学校で、6年間は充実した日々だったとか。推薦で有名大学に進学しました。この有名大学、伝統校で有名校ですが、共通テストの得点率4割程度で進学できるレベルの大学です。しかし当人も両親も大満足でしたので、「ゆる受験」でもうまくいったケースです。
以上の3ポイントを熟慮したうえで、塾を探す、これが正解です。
※いちおうニュートラルな立場を心がけて書きましたが、本音を言わせていただくと、私は「ハード受験」の世界の人間です。勉強は、負荷がかかればかかるほど力になるという信念を持っています。子供時代に「楽をする」ことを覚えてほしくないと思っているのです。

