元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

海外帰国生の悩み 受験はどうする?

私は、SAPIX在籍時に海外帰国生の支援部門責任者をしていました。そのため欧米・アジア各都市を毎年訪問し、多くの海外帰国生の保護者のご相談を受けてきたのです。海外の塾事情、帰国生入試の事情については、その当時も今もあまり変わっていません。

余裕が無い

まず最も多いご相談はこれでした。

たとえばロンドン在住の小学生だったとします。ロンドンにはアクトンに日本人学校もありますが、おそらく現地校に通っているでしょう。せっかくロンドンにいるのですから、ネイティブな英語を身に着けて欲しいですからね。

そうすると、現地のイギリス人の子供と同等の教育を受けることになるのです。

しかし、それでは日本語を忘れてしまいます。

そこで、平日放課後や日曜に「補習校」に通うことになります。そこで国語・算数を習うのです。

さらに習い事に通う子も多くいます。バレエ・ピアノ・ヴァイオリンといった定番の習い事はロンドンにもたくさんありますので。

もうこれだけで時間はなくなります。

幼少期よりロンドンにいるのなら英語に問題はなさそうですが、そうでないのなら別途英語の教室に通ったり家庭教師をつけるかたもいます。

これではどう考えても、これ以上の何かを学ぶ時間の余裕が物理的にありません。

これは何もロンドンに限った話ではないですね。

アメリカでもカナダでも、英語圏に在住する子に共通した課題です。

 

それでは非英語圏はどうでしょうか。

おそらくは現地校に通う方は少数だと思います。

〇日本人学校

〇インターナショナルスクール

このどちらかになるでしょう。

もしインターに通うとすると、英語圏の現地校に通う方と事情は同じです。

日本人学校に通う場合は、日本の小学校と同等の教育が受けられますので、その分時間の余裕はありそうですが、もし習い事や英語教室になど通うとたちまち時間はなくなります。

さらに、海外日本人学校の中にはレベルが高くはないところもあります。ある母親がこう嘆いていました。「子供が小3なのに、学校ではひらがなを練習させられている」

教育環境の問題

上に書いたのは、あくまでも「小学生が小学校で学ぶ」レベルのお話です。

日本にいる方はご存じの通り、首都圏の中学受験事情は熾烈です。小学校の学習レベルでは全く役にたちません。そこでみな塾に通って、受験用の算数・国語・理科・社会を必死で学ぶのです。

しかし、海外ではそうした教育環境は望めません。

ニューヨーク、ロンドン、ブリュッセル等日本人駐在員の多いエリアには、複数の日本の塾が進出しています。また、現地の方が開いている「日本の中学・高校受験」のための指導をする塾もありますね。

いくつものそうした塾を訪問し授業を拝見もしてきましたが、日本の塾と同等レベルの授業ができているところは多くはありませんでした。

これには理由があるのです。

(1)ビザの問題

国にもよりますが、現地で就労のためのビザを得るのは困難です。そのため日本の有能な教師を連れていくことが難しく、現地ですでにビザを所有している人を雇ったり、どの塾もそこは苦労しています。つまり「教えられるレベル」の教師を雇うのがとても難しいのです。そうなると、指導レベルには目を瞑る塾も出てきそうです。

(2)情報の問題

今やネットでいくらでも日本と同じ情報が得られるようになりました。と、そういいたいのですが、文字や映像では伝わらない情報というものがあるのです。

日本で長年中学受験指導をしていると、保護者から、生徒から、学校から、同業者から、いろいろな情報が入ってきています。日ごろそれらを「特別貴重な情報」とも思わずにいますが、良く考えれば大切な情報なのですね。

例えば先日もとある塾の経営者と会食中に、「A中学は偏差値はB中学よりも低いけれど、実は最近はA中学のほうが入りにくい」という話題で盛り上がりました。どちらも良い学校ですが、東大実績で目立つB中学とそれほどでもない(それでもすごいのですが)A中学では、偏差値を算出するとどうしてもA<Bとなるのです。しかし教えている生徒の合否状況をみると、ボーダーラインがA>Bとなっている実感があります。

その理由についてあれこれ話し合って夜が過ぎました。

このように、ブログに書くわけにもいかない、でも何等かの変化については、日本の受験業界に身を置いていないとわからないところです。

また、あるスポーツの分野でニュースとなった学校の教頭先生と会食していたところ、ふとこんな本音を聞いたことがあります。

「今回のニュースは学校としては喜ばしいことなのですが、私個人としては手放しで喜べないのですよ」

「なぜでしょうか?」

「今学校では学力向上と大学実績に注力しているところなのに、どうしても『スポーツ学校』の印象がついてしまいかねないのです」

とてもではないですが文字にはできない情報です。

(3)教科指導力の問題

これは教師の努力不足以外の何物でもありません。海外のある塾を訪問したところ、職員室の棚には参考書や過去問題集が一冊も置かれていないことに驚いたことがあります。あれでどうやって教師が予習をするのか謎すぎます。もちろん、職員室の棚板がたわむほど使いこまれた問題集・参考書が並ぶ塾もありました。

これには理由もあるのです。とくに理科・社会については、需要が低いのです。算数・国語の教師が片手間に理社を扱うというのが横行しています。

これでは「高い指導力」は育ちません。

(4)そもそも塾が無い

ロンドン・デュッセルドルフ・シンガポールといった地域は良いのです。日本の塾、現地塾がたくさんありますから選択できます。

しかしそうした地域は限られています。

パリで講演会後に、ある母親から「サピックスをパリに作ってください!」と詰め寄られて閉口したことがあります。でもお気持ちはわかります。

 

いつ帰国になるかわからない

海外赴任の辞令はふいに出されますし、帰国の時期もわかりません。

これでは、中学受験をするのか、それとも高校受験となるのか、あるいは編入になるのか、そうしたことが決められるはずもないのですね。

そこで選択肢はこうなります。

(1)単身赴任を考える

たとえば、サンノゼから小4で帰国したとしましょう。塾に通って必死で4科目の学習をしますね。学校によってはまだ帰国生枠の受験が可能かもしれません。

しかし6年生になるタイミングでシンガポールの赴任が決まりました。

こうなると、「パパだけ行ってね」となることは仕方がありません。

(2)日本の教育を捨てる

中学受験も高校受験も、日本の受験に対応するのは難しい。そこでインターに通わせて、アメリカの大学に入れる道を選びます。あるいは高校からアメリカのボーディングスクールに入れるかもしれません。ICUのように親が海外にいる場合は高校から寮に入れる学校もありますし、あるいは早稲田大学系属早稲田渋谷シンガポール校や、慶応ニューヨークのような学校を選んで、「海外でも日本の大学に進学できる」コースという手もあります。

(3)考えることを放棄する

自分で決められないのなら、もう流れに身をまかせるしかありません。今できることを一生懸命やるしかない。先のことは考えてもしかたがない。そう「開き直る」のもわかります。

 

その情報、正しいですか?

ニューヨークだったと思うのですが、講演会後に、ある母親からこう言われてしまったのです。

「先生のお話、私が今まで聞いてきた話と違います!」

半ば怒っている雰囲気でした。

その日私は、「帰国生といえども、4科目の学習をきちんとやらないとならない」ことを強調してお話していました。これは私の持論でもあります。

たとえ英語力で合格できたとしても、入学後は大半の生徒が国内受験を突破してきた子たちです。その中で、英語以外の教科が落ちこぼれる悲劇を見てきたからです。

学校が欲しいのは、「英語しかできない」生徒ではなく、「四科目の学力は高いうえにさらに英語力がある」生徒であることは明らかなのです。

また、4科目の学力がきちんとついていると、帰国生入試だけではなく、一般入試にも道が広がります。

そのことで、「1月までに帰国生入試で合格を確保したうえで一般入試でチャレンジする」という、帰国生にしかできない受験戦略が可能となるのです。

 

しかし、その母親の話によると、通っている塾では、「英語さえできれば帰国生入試は簡単に合格できるから、他の教科は不要」と言われてきたというのです。

これを本気で言っていたとすると、その塾の教師は力量も情報も弱すぎます。

しかし、もし戦略として言っていたとすると、狡猾で非道です。

「うちの子は英語しかできないし、他の教科をやる余裕なんてとてもない」と悩んでいる保護者に対して、「その英語力でなんとでもなりますよ!」という言葉は甘く響きますね。集客にもつながります。もしかして合格できるかもしれません。しかしそのあとが地獄です。まあそうした塾にとっては、「合格後」のことなどどうでもよいのでしょう。

 

海外にいても受講可能な、オンライン塾を開いています。

記述添削指導とオンライン個別指導を実施します。

また、保護者のご相談もお引き受けしています(有料にはなりますが)。

一度HPを開いていただきたく思います。

lws.peter-lws.net