
たまたまネットニュースで見かけた記事が気になったのです。
「成功した子の体験談より失敗した事例から学ぶべき」
だいたいこんな内容の記事でした。3000人以上を指導してきたプロ家庭教師の方からのアドバイスです。
教育関連ニュースを見ることが多いので、どうしてもそうしたニュースが表示されることが多く、ついつい見てしまうのですね。しかし何とももやもやした気持ちが残ってしまったので今回の記事を書くことにしました。
家庭教師だけで3000人の指導人数?
実は最初にひっかかったのがここです。家庭教師の平均指導人数はよくわかりませんが、1回2時間の指導として月~金まで毎日2人ずつ、さらに土・日に5人ずつで計20人を1週間に指導できる?計算にはなります。教える生徒が全員同じマンションにでも住んでいないと不可能な数字ですが。そして、1年継続して指導するのは当然ですので、1年間の指導人数も20人です。毎日1日も休まずに仕事をしたとして、3000人の指導人数に達するのには150年かかります。
教師の経験値は指導人数と指導年数に比例します。家庭教師専業ではどうしても指導人数は積み上げられないのは仕方がないですね。もちろんそのかわり、濃密な指導、家庭の事情や生徒の個性に沿った指導はできるでしょう。
私が家庭教師を探すのなら、「指導人数」を誇る教師よりも、「毎年10名の生徒にじっくりと向き合ってきた」教師を選びますね。
成功体験の罠
この方の主張によると、SNSにはどうしても「成功体験」ばかりがあふれていて、それと比較して「わが子は・・・・」と落ち込んでしまう。これが良くないというのです。
これには全面的に賛同します。ただし、この方が主張するとは別の意味で。
そもそも私はネットにある「成功体験」を信用していません。その理由は以下の通りです。
(1)親の欲目
わが子があこがれの〇〇中学に合格しました。親としては天にも昇る心地です。しかしこのことが親の目を曇らせるのです。「思い出はすべて美しい」エフェクトが働くのですね。
過去の「やらかし体験」が薄れて、わが子の良い思い出だけが強化されてしまいます。
「育てやすい子だった」
「放っておいても自分で勉強してくれた」
「家庭学習時間はそんなに多くはなかったけれど合格できた」
「習い事を継続していても受かった」
塾が依頼する「合格体験談」には、そうした「ポジティブ」な体験ばかりが集まります。しかし、真相を知る我々からすると、「まあずいぶんフィルターがかかったなあ」と苦笑する場合がほとんどなのです。
「うちの子は、全ての時間を受験勉強に捧げた。睡眠時間も削った。親子喧嘩も絶えなかった。親の言うことを全く聞かなかった。学校でも問題行動を起こして担任に呼び出された。でも合格した」
こんなことを書く方は皆無です。
結果よければすべてよし。
こんな「成功体験」は参考にならないのです。
(2)誰が何の目的で書く?
塾が依頼した「合格体験談」ならまだしも、ネットにあがっている「合格体験」っていったい誰が何の目的で書くのでしょうか?
わが子が受験勉強中からブログに継続して子どもの成績等をUPされる方はたくさんいらっしゃいます。私としては信じられません。どうぼかして書こうと、身バレのリスクはあります。そもそもわが子の様子を世間にさらすことに何のメリットがあるのかよくわかりません。良くて「親の精神安定剤」の役割でしょうか。誰かに吐き出さすことで自らの心の平衡を保つのかもしれません。あるいは「広告費」稼ぎかもしれません。
ただ、「わが子の受験奮闘記」的な記事はまだ理解ができるのです。受験は孤独な闘いですので、何か「つながる」実感が欲しいという気持ちは十分に理解できますので。
私が全く理解できないのは、「受験終了後」にわが子の「合格体験」をUPすることなのです。
受験が終われば、子どもは新たな中高生活に向けてスタートします。それなのに親だけが「中学受験の世界」にとどまり続けて、「経験者」として情報を発信し続ける。その真意はどこにあるのでしょうか。
いずれにしても、「真相」とは程遠い「成功体験」が何の参考にもならないのは当然でしょう。
失敗体験の罠
そもそもわが子の「失敗」を世間に晒したいと考える方は皆無です。
したがって、そうした情報を上げるのは、「塾関係者」以外に考えられません。
そして、「塾関係者」がその情報をあげる理由はただ一つです。
「こんなふうにすると失敗するのですよ」と受験生の親を不安にさせるのが目的です。
受験産業は「不安創出型産業」の側面が強いのです。
「この勉強法ではまずい」
「このままではどこにも合格できない」
「今の塾では伸びない」
そうやって親を不安にさせることが習い性になっているといってもよいでしょうか。
私も当ブログで、過去の生徒の失敗談をいくつも書いてきました。
ただし書く際に心がけていることが3点あります。
◆実話であること
◆一般化しないこと
◆教訓につなげること
自分が実際に見聞した情報にだけもとづくようにしています。もちろん個人情報保護の観点から、当事者が見ても自分のこととわからぬまで設定等変更しますが、内容は真実に基づくことが鉄則です。
次に、一人の体験から一般化しないことにも留意しています。「こんなことをして失敗した子がいた。だから絶対にダメだ!」という論調は不誠実ですから。
そして、そうした事例をあげる以上、そこから何かを学んでほしいと思います。
過去の生徒の「失敗事例」「成功事例」から学ぶのは、受験生の側ではありません。教師の側なのです。教師はそれを消化吸収し、適切な指導に活かす、そういうことになるのです。
夢を見る力
中学受験は過酷な試練です。わずか12歳の子がぶつかるにしてはあまりにも大きな壁なのです。しかし、自分の進路に夢を抱き、そのために努力する体験は得難いものです。そこから子どもは大きく成長します。成長するのは親も同様です。わが子の苦難に寄り添って、共に泣き、共に笑った経験は、親の成長にもつながると思っています。
そのためには、親子で「夢を見る」ことが大切だと思います。
こちらの記事をぜひお読みください。