今回は、渋谷渋谷の帰国生入試「作文」を見て見ましょう。2025年のものをとりあげます。
次のテーマで600字以上800字以内の作文を書きなさい。
「海外から日本にはじめて旅行に来る12歳の人がいるとします。
その人は、旅行の途中であなたの家の近所に滞在します。その際、あなたはその人と一日行動を共にして『日本の文化』を紹介することになりました。その場合、あなたならば、どこに行き・何をしますか。そこに行く理由・それをする理由を含めて、作文しなさい。」
※「どこに行く」「何をする」について具体的に書いてください。
※「そこに行く理由」「それをする理由」も必ず書いてください。
※「どこに行く」「何をする」を考えるうえで、時間や費用などの制限はないものとします。
※題名は、本文の内容を踏まえて、各自で自由につけてください。
帰国生入試特有の「自由作文」です。
多くの学校でよく出されるのが、海外での異文化体験について書かせるものですね。
この問題では、その逆を出題しています。
海外から日本に来た人をどこに連れていくのかについて考える問題です。
これ、自分の体験をベースに書くことにすぐに気が付かなくてはなりません。
自分が海外、たとえばロンドンにいたとしましょう。
ロンドンに行った当初は、周囲の環境になじめず、いろいろ苦労したと思います。
そんなときに、イギリス人の誰かが、イギリスを案内してくれたのです。
イギリス文化を知るにはまずここに行ってみよう、と言って。
さて、どこに案内されたでしょうか。
・バッキンガム宮殿
・ウェストミンスター寺院
・ロンドン塔
・ストーンヘンジ
・旧グリニッジ天文台
・大英博物館
・ナショナルギャラリー
・ストラトフォード・アポン・エイボン
・コッツウォルズ
・ビッグベン
・テムズ河
・オクスフォード
こんなあたりかな? まだまだありますね。
私もあちこち行きましたが、個人的には、ロンドン市内のどうってことのない裏通りがお気に入りです。そんなところを歩き回り、ふと入ったパブでフィッシュアンドチップス&ビールをいただく。あ、子どもはパブには行きませんね。
また、ロンドンを離れて車で郊外に出ると、古き良きイギリスの農村地帯が広がっていてこれも良いものです。
おそらくは、帰国生の子たちは、そうした体験をしていると思うのです。
そして、今度は自分が日本で海外からの知人を案内する。
さて、どこに連れていきましょうか。
実は、この問題は、どこに連れていくかが問題ではないのですね。「なぜそこに連れていったのか」その理由をしっかり書けるかどうか、そこが問われているのです。
いくつか作戦を考えてみましょう。
その1・・・オーソドックスな所
京都・奈良・鎌倉
ここなら「外し」ませんね。まさに「日本の文化」が凝縮している場所です。個人的なお勧めは、寂光院と下賀茂神社です。

その2・・・都内
別に遠くまで行かなければ「日本の文化」が紹介できないことはありません。例えば、江戸城(皇居)周辺を散策してもよいですし、谷中・千駄木・根津、いわゆる「谷根千」エリアを彷徨えば、下町情緒が満喫できます。そうした「日本の文化」もよいですね。江戸時代は、世界に類を見ない「庶民が主役」の時代でした。そうした町人文化を感じるのにはうってつけです。本当のところは昭和の下町文化のエリアですが、江戸情緒は東京には残っていないので。関東大震災と東京大空襲、そして高度経済成長期の無秩序な開発(破壊)のせいです。
その3・・・温泉
温泉も、日本が世界に誇る「伝統文化」です。草津でも箱根でもよいですが、時間・距離の制約が無いということなので、愛媛の道後温泉に行きましょう。なにせ日本書紀にも記述があるという日本最古の温泉です。道後温泉本館は風情がありますしね。文字通り日本の伝統文化を肌で知ることができます。
その4・・・体験
「見る」旅から「体験する」旅へ、が最近の流れです。
焼き物や染め物の体験でもよいですし、座禅もよいでしょう。
その5・・・食文化
「和食;日本人の伝統的な食文化」はユネスコ無形文化遺産です。案内したいところは無数にありますね。
食については、他の候補と組み合わせて記述しやすいと思います。
NG・・・秋葉原・原宿等
日本の「アニメ文化」「かわいい」も世界中で若者に受けているのは知っています。パリでもロンドンでも、書店には日本の漫画(の現地語訳)が一角をしめていますし、何かのイベントでは日本のアニメキャラのコスプレをした地元の若者が集まっていたりもするのです。
しかし、この方向性で800字書ききるのには無理があります。しかも、出題者の意図がそこにあるかどうかも不明です。零点をつけられるリスクを冒す価値はないでしょう。
こうした「自由作文」は、自由に見えますが実は「不自由」なことを考えてください。
何を書いてもよいわけではないのです。
そもそも、ここで「日本文化」について書かせる学校の出題意図を見誤ってはいけません。海外に居てもなお、日本の文化=日本の歴史についても学んでいたことがチェックされていると考えるべきでしょう。もし「英語力」にしか価値を見出していないのなら、何も日本人を入学させる必要はないわけです。ネイティブの英語話者(アメリカ人・イギリス人その他)を入学させればよいことになります。
学校が求めているのはそうした生徒ではありません。
ここはごくオーソドックスに書くことをお勧めします。
たとえば「宇治」に連れていくとしましょう。

宇治といえば、「平等院鳳凰堂」ですね。
当時の末法思想と浄土信仰が融合した、まさに日本の仏教文化の最高傑作です。
だからこそ行く価値・見る価値があるのです。池のほとりにたたずんで、極楽浄土をイメージしましょう。

さらに宇治といえば「宇治茶」があります。宇治駅前から平等院に続く道筋には、風情のある老舗の宇治茶専門店が軒を連ねています。
「お茶」もまた、日本の文化の真髄ですね。茶道として飲む「抹茶」もよいですし、江戸時代には「煎茶」が誕生しています。
こうしたことを語りはじめると、800字ではとても足りないですね。
海外にいて、やがて日本の中学受験を帰国生入試で考えている場合は、海外文化・社会について学ぶのは当たり前として、常に日本との比較を意識する必要があると思います。