元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】SAPIX 親の相談ベスト10 その4 そもそもうちは難関校狙いじゃないから

どうも世間には、「SAPIXは最難関校向けの塾だから」という評判が強いようです。

それは真実でもあり、誤解でもあります。

たしかにSAPIXは最難関校には強い

合格実績を見れば明らかですね。

開成・麻布・筑駒・桜蔭・女子学院・渋谷渋谷・渋谷幕張・慶応中等部等、どの塾の偏差値表でも一番上に並んでいる学校への合格実績がずぬけていることは確かです。

これだけの実績を更新し続けている塾は他にはありません。

そしてこの実績が目立つが故に、誤解が生まれてしまうのです。

「SAPIXは難関校に特化した塾」

「開成や桜蔭を目指さないのならオーバースペック」

これが全くの誤解であることは35年にわたりSAPIX内部にいた私が断言できます。

まず、難関校への合格実績が強い理由は複合的です。

〇教師にノウハウが蓄積している

「開成に進学した生徒を10年前に1名だけ指導したことがあるベテラン塾教師」

「3年間で二桁の開成合格者を指導した経験のある新人教師」

この両者では、「開成に合格させる」という点においては、明らかに「新人教師」のほうが優れているのです。難関校に向けた指導には、数字に表れない「経験値」が大事です。

「この生徒は偏差値的には開成に届いていないが、去年のあの生徒も同じ状況だったが合格できた。ということは、この子もここを補強すれば開成に行ける道が開ける」

このような判断が働くのかどうか。こればかりは「指導経験」がないと無理ですね。SAPIXという塾には、新人教師であっても、こうした経験を持つ教師が大勢いるのです。

〇最難関校を目指す生徒が多い

「開成コース」を校舎ごとに作れる塾はここくらいでしょう。大規模校舎になると、「開成1コース」「開成2コース」と複数設置する場合もあります。そこで切磋琢磨できる環境は得がたいですね。大半の塾は、開成志望者だけを1校舎に集めて志望校対策を行うようですが、遠くの教室まで通うのは時間の無駄です。

〇親の意識が高い

某大手塾にいる知人の教師から聞きました。テスト返却後に、「ここは採点ミスでは?」と指摘されたことが皆無だというのですね。テストの出題ミスがあっても、それを指摘されたことも無いと言っていました。これは驚きでした。SAPIXでは、テスト返却直後から、テスト内容に対する相談・苦情などあるのが普通でしたから。親もテスト内容に関心を持ってみてくれている、これは大きいですね。

〇オリジナル教材

塾の教師はわがままですから「他人の褌で相撲を取る」ことを潔しとしません。私も嫌ですね。自分の授業は自分の作った教材でやりたいですから。この塾の強みは、難関校に出される内容をすぐに教材にフィードバックしながら授業を行える点にあります。

〇復習主義

世の中の塾は、「予習派」と「復習派」に2分されます。「予習派」の盟主は四谷大塚です。なにせ教材の名称が「予習シリーズ」です。日能研もこちらの派閥ですね。早稲田アカデミーは四谷大塚の提携塾ですからこの派閥です。

対して、「復習派」は少数派閥です。SAPIXと、そこから分離したグノーブルくらいでしょう。

予習主義のスタイルは、家で子どもが自学自習してから塾に来ることが基本です。これができるのは、相当に優秀な子だけです。逆に復習スタイルでは、生徒は準備せずに塾に来ることが求められます。塾で習った内容を家で復習するのですから、実はこちらのスタイルのほうが多くの生徒に向いたやり方です。さらに復習スタイルのほうが思考力を伸ばすのにも効果的ですので、難関校に強みを発揮できます。

〇教師の力量

教師は生徒に育てられる。これが私の持論です。多くの優秀な生徒を指導すればするほど、教師の力量も成長します。また、復習スタイルの授業では、「テキストを持たない」授業が基本ですので、教師に負荷がかかるのです。この負荷が教師を成長させます。

 

どの学校にも対応

当たり前の話ですが、特定の学校のみに特化した授業というものはあまり意味をもちません。すべての受験生が1つの学校しか受験しないのなら別ですが。

開成・筑駒・栄光・渋谷渋谷・渋谷幕張・浅野

桜蔭・豊島岡・鴎友・洗足・頌栄・慶応中等部

これくらいの受験校を併願するのは普通です。となると、指導する場合には、オールマイティにどの受験校でも合格点をとれる指導が基本となるのです。

このあたりの事情は、他の塾でも同じはずです。

SAPIXに通っていると難関校以外は受からない、というのは論理破綻しています。

 

教師の職業倫理

職業倫理というほど大げさなものではありませんが、いやしくも生徒を教えて「先生」とよばれる仕事をしている以上、今目の前にいる生徒の学力向上に全力を尽くすのは当たり前のことですね。「この子は開成を目指しているからより力をいれよう」だとか、「この子は〇〇中を受験するから手を抜こう」などといった発想が浮かぶはずもないのです。

教えていた生徒が、偏差値65の学校に合格するのも、偏差値30の学校に合格するのも、教師の立場からいえば何の差もありません。むしろ苦戦した生徒がやっと進学校を見つけたほうの喜びのほうが大きいくらいですね。

「SAPIXは難関校に特化していて、それ以外の生徒はお客様扱いだ」

この根も葉も無いデマを聞くたびに、怒りがこみ上げたものです。もし本気でこんなことを言っている塾関係者がいたとしたら、「生徒を教えたこともない、何もわかっていない」人間なのか、あるいは「意図的にデマを流そうとする悪意ある人間」なのか、どちらかでしょう。

 

ただし、真実もある

SAPIXという塾は、この業界の中ではかなり「生真面目」な塾だと思います。教師には営業成績を求められることは一切なく、ただひたすら、良い授業、良い教材、良いテストを求められるのです。

そう考えると、別に開成や桜蔭を目指すのではなく、偏差値が30台、あるいは40くらいの学校を目指す生徒にとっても良い塾であると思います。

ただし、2つ問題があります。

たとえば、京華女子中学校、麹町学園女子中学校、聖セシリア女子中学校、東京家政大学附属女子中学校、中村中学校、国士舘中学校、桜丘中学校、駿台学園中学校、帝京中学校、目白研心中学校などを第一志望とする場合です。これらの学校はSAPIXの合格実績から「1名合格」の学校をピックアップしてみました。つまり、SAPIXからの合格者(おそらくは受験者)が1名しかいない学校です。さすがに教師としても、どんな学校なのかについての情報が希薄にならざるを得ません。進学した卒業生からの情報も入ってこないでしょう。模試のデータも算出できません。

より精確なデータ分析や情報提供を求めるのなら、首都圏模試を採用している塾のほうがそうした情報が集積しているはずですね。

もう1つの問題は、「塾にすべておまかせ」「家庭学習はしない」方針のご家庭はSAPIXは合わないでしょう。「無理して勉強しないで受かる学校に進学できれば上出来」というご家庭にはこの塾は合わないと思います。