前回の続きです。
塾に通いはじめてからの戦略について考察します。
塾まかせになっていないか?
勘違いしている方が大勢いますので、あえて厳しめの話をさせてください。
「塾まかせ」の学習は危険です。
まず、親のみなさんが、以下の点をチェックしてみてください。
1.塾の時間割を正確に把握してない
2.4科目のカリキュラムを把握していない
3.塾から出される宿題の量と内容を把握していない
4.塾の担当教師全員の名前を知らない
5.塾の開始時刻と終了時刻を正確に把握していない
6.塾の小テストの得点を把握していない
7.次回のテストの日程を把握していない
8.子どもへの声掛けを塾に依頼したことがある
9.塾からの電話が無いことに不満を感じている
10.合格実績だけで塾を選んだ
11.子どもの「苦手教科」を把握していない
12.子どもの「苦手教科の中の苦手分野」を把握していない
13.子どもの「得意教科」を把握していない
14.子どもの「得意教科の中の得意分野」を把握していない
15.受験勉強は子どもが自発的に取り組むべきだ
16.無理やりやらされる勉強には価値がない
17.志望校の入試日程を全て把握していない
18.電車内で制服をみても志望校の生徒かどうかがわからない
19.見に行った中学校は5校未満である
20.入試問題をきちんと解いたことがない(親が)
さあ、いくつチェックがはいりましたか?
◆1~10にチェックがついた
塾への依存度が高いですね。子どもが塾で何をどのように学んでいるのか、また指導は適切なのか、きちんと把握していない、あるいは把握しようとはしていないのでは?
塾にまかせておけばすべて安心、そんなふうに考えてはいないでしょうか。10の項目は、「合格実績は重要でしょ!」と反論されそうですが、その高い合格実績ははたして本物でしょうか? 名前をあげるわけにはいきませんが、粉飾した数字が横行する世界です。また、仮に嘘偽りのない合格実績が掲げられていたとしても、そのことが意味するのは、
・昨年の生徒が頑張った
・そういう学校に合格する生徒を指導するノウハウを持つ教師が多い
・進路指導が上向き
・塾全体に難関校を目指す生徒が多い
ということを意味するだけで、それだけでお子さんの合格を保証するものでも何でもありません。
例えば、現役東大合格率が半数を超える中高に進学したからといって、お子さんの東大合格が保証されるわけではないのと同じです。
◆11~16にチェックがついた
子どもの学習状況に対する関心が低いですね。とくに15・16の「机上の理想論」に傾倒することは危険です。正論に見えますので。
しかし、中学受験勉強の質・量・レベルは、小学生が「自主的」に「一人で」取り組めるものではないのです。例えば、楽器未経験の小学生にヴァイオリンと教則本を渡して、「一人で練習しなさい。3年後にコンクールだから。優勝してね」と言うのと同じです。
◆17~19にチェックがついた
わが子に合う中学校を本気で探す気が薄いですね。まず学校に足を運ばなければ何も始まりません。まさか偏差値やネット情報だけで学校を選ぶわけにはいきません。
◆20にチェックがついた
親の本気が疑われます。わが子がチャレンジする山の高さを、親自身が体験せずに、どうして「がんばりなさい!」と気軽に声掛けができるのでしょうか。
実は最初にやるべきは、親が入試問題を真剣に解くことなのです。
塾のセールストークの陥穽
塾というのは微妙なビジネスです。
教育の皮をかぶったサービス業であり、サービス業に見せかけた教育なのです。
もちろん、多くの生徒に通ってもらうことで利益を上げる営利企業です。
しかし、やっていることは「子どもの学力向上」であり、かっこうをつけて言えば「子どもの未来を広げるお手伝い」であることには違いありません。
しかも日ごろ接しているのは「生徒たち」です。
損得抜きで指導に情熱を傾ける、そんな教師も大勢いるのです。
しかし、そうした熱意と目的、そこに利潤追求の経営陣の思惑が重なると、問題もまた生じるのです。
◆より(偏差値の)高い学校を目指すのが正義である
◆塾でなるべく長時間拘束して教えるべきである
◆大量の宿題・課題を出すことが正義である
このようなまちがった指導がまかり通るようになり、また世間もそれを支持するようになります。とくに長時間の拘束は弊害がとても大きいですね。家庭学習や振り返りの時間がなくなりますので。しかし塾の経営目線でいえば、多くの授業を実施すれば、それだけ多くの「授業料」を徴収できますので、利益があがるのです。
これは教師の「もっと教えたい」本能と合致しますので、世に蔓延る道理ですね。
ここに、「やる気」や「根性」といった意味のない精神論が加わると最悪です。
「〇〇塾は、成績向上の学習を全て塾で完結できます。お任せいただければ最後までとことん成績をあげていきます」
「〇〇塾に全てお任せください。お子さまの成績アップはもちろん、保護者のお悩みも親身にうかがいます!」
「家庭で何もやる必要はありません。全ての学習は〇〇塾で行います」
「言われてやる勉強では身につかない。〇〇塾は、子どものやる気を引き出します」
「長時間指導の為、塾だけで全ての学習が完結できます」
ネットを検索すると、こうした塾の宣伝文句が溢れていました。
日ごろお子さんの学習に悩んでいると、ついふらふらと吸い寄せられそうですね。
しかし、残念ながら、こうした「宣伝文句」が本当である保証はありません。むしろ家庭学習時間を取られてしまい、かえって成績が悪化する可能性も高いと思います。
教育のOutsourcingとは?
企業なら、自社で行っている業務の一部あるいは全部を外部委託することで、経営の効率化をはかることは普通に行われています。
このアウトソーシングは、あくまでも「企業が自社で行える」あるいは「行っていた」業務を外部委託することにポイントがあります。
自社で同様の業務を実施するノウハウやスキルがあることが前提です。
そうでないと、外部委託先の業務内容をチェックすることができないからです。品質の低い仕事内容を、高額で売りつけられかねませんので。
それに対して、自社でスキルもノウハウも無い業務を外部にまかせることは危険です。相手の言いなりになりますので。
教育については、子どもの将来という、失敗が許されないミッションです。
これを安易にアウトソーシングする発想が理解できません。
一部を外部委託するとしても、その内容を親が精査することは必須です。