さあ、塾に通おう!
勢い込んでの通塾がはじまって一か月たちました。
でも、まったく授業についていけないのです。
宿題も大量で全くこなしきれません。
もしかして無理だったのでは?
他の塾のほうがよかったのかも?
迷いが生じます。
今回は、こうした悩みに向き合った記事となります。
体験授業と本番授業の乖離
ほとんどの塾で、入塾前に何らかの体験授業を受ける機会が設けられています。いくつか迷っていた塾の体験授業を子どもに受けさせました。
「僕、A塾が一番気に入ったよ」
お子さんがそうってくれた塾に、普通は入れますよね。
ただし注意したいのは、この体験授業と本番授業は別物だということです。
あくまでも「集客を目的」とした体験授業と、「学力向上を目的」とする本番授業とが同じはずもないのです。
塾によっては、「一か月無料体験」などと銘打ち、通常の授業に参加させてくれるところもあります。
これなら本番授業の様子が多少はつかめますが、それでも全く同じというわけではありません。
「体験生」に対しては、強いプレッシャーをかけたり過大な宿題を課したりはしないからです。
セールストークは要注意
集団指導塾の場合、できないこともたくさんあります。また生徒の学力向上を考えると、どうしても話は厳しくなるのです。
「受験した入塾テストの結果がひどかったのです」
「そうですね。あのテストは基本レベルです。この成績は問題ですね」
「入塾してもついていけるでしょうか?」
「このままでは難しいです。入塾前にこれくらいの課題をやっておく必要があるでしょう」
「宿題は多いのですか?」
「当たり前です。成績を上げるために必要な勉強量ですので」
「毎回のテストでクラスや座席が変えられると聞きました。うちの子はそういう競争は苦手なのですが」
「それではそもそも中学入試に向きません。入試というのは競争の世界ですから」
「家で自分から勉強できない子なのです。先生のほうから声をかけてくれませんか?」
「個別の対応はできません。それはご家庭で行ってください。集団指導塾ではそこまでの学習のコントロールを期待されても無理です。個別指導か家庭教師をご検討ください」
「面談や学習相談はできますか?」
「こちらから個別に声はかけませんが、申し出ていただければ対応します」
「自分から質問に行けるタイプの子じゃないのです。先生から声掛けしてもらえますか?」
「できません。大勢の生徒を一度に担当していますので、不可能です。お子さんが質問に来てくれれば対応します」
「途中から入塾するので、抜けているところがたくさんあります。塾でケアしてもらえますか?」
「できません。個別指導か家庭教師を利用して自分で埋めてきてください」
「わからないところはわかるまで補習で教えてもらえますか?」
「できません。個別指導か家庭教師を利用するしかないでしょう」
「やる気がわかないと勉強しない子です。塾でやる気が出るような指導はしてもらえますか?」
これでは身も蓋も無さすぎですね。おそらく入塾してくる人はいなくなります。
そこで、こんなセールストークとなるのです。
「受験した入塾テストの結果がひどかったのです」
「あのテストは難しかったのです。その割には良くできていたほうですよ。初めてでこの点数ならなかなかの成績です」
「入塾してもついていけるでしょうか?」
「大丈夫です。全く問題はありません」
「宿題は多いのですか?」
「心配するほどではありませんよ。きちんと出来る量だけに調節しますので」
「毎回のテストでクラスや座席が変えられると聞きました。うちの子はそういう競争は苦手なのですが」
「競争を煽るようなことは避けています。皆楽しそうに通っていますから、すぐに慣れますよ」
「家で自分から勉強できない子なのです。先生のほうから声をかけてくれませんか?」
「わかりました。私どもにおまかせください」
「面談や学習相談はできますか?」
「もちろんです。頻繁にお電話しますし、面談も随時来てください」
「自分から質問に行けるタイプの子じゃないのです。先生から声掛けしてもらえますか?」
「わかりました。私どもにおまかせください」
「途中から入塾するので、抜けているところがたくさんあります。塾でケアしてもらえますか?」
「もちろんです。全て私どもにおまかせください」
「わからないところはわかるまで補習で教えてもらえますか?」
「もちろんです。わかるまでとことん教えますよ」
「やる気がわかないと勉強しない子です。塾でやる気が出るような指導はしてもらえますか?」
「それこそ私どもにおまかせください。我々は、生徒のやる気を引き出すプロですので、ご安心ください」
どう考えても、後者のほうが入塾したくなるでしょうね。
でも、私なら前者の塾を選びます。
出来ること・できないことを明確にしており、正直に答えてくれているからです。
出来もしないことを「安請け合い」する塾は信頼できません。
宿題について
塾から出される宿題の多さに驚き悲鳴を上げる方がほとんどです。
集団指導塾の場合、一番優秀でスピードがある子がこなせるかこなせないかギリギリの量の宿題を出すのが普通です。
そうしないと、優秀な子が「この塾は物足りない」「もっとたくさん勉強させてくれる塾に移ろう」と考えてしまいますので。塾にとって合格実績を出してくれる優秀層が抜けられることは死活問題になります。
だから、どうしても最優秀層を基準として宿題・課題を出すことになります。
したがって「多すぎる」のは当たり前なのです。
そこで、各御家庭で、宿題の「間引き」をすることになります。
それは普通のやり方です。
小学校の課題は「簡単」で「量も少ない」、つまり全てを完璧にこなすのが当たり前という感覚に慣れていると、「宿題が終わらない」「課題がひたすら積み残されていく」ことに恐怖を抱くのですが、そこは割り切ってください。
「塾の宿題は終わらない」ものなのです。
ただし、間引くといっても注意が必要です。
楽に終了できる量まで間引くものではないのです。
成績が低い子が成績を伸ばすためには、すでに成績の良い生徒の何倍もの努力が必要です。
それなのに、成績が低い子のほうが学習量も学習時間も少ないのはどういう訳でしょう?
これでは差が広がるばかりです。
子どもに常に負荷がかかる状態をキープする、そして同じ時間内に処理できる量を少しずつ増やしていく、こうした学習姿勢を心がけましょう。
楽しい「だけの」塾は意味がない
中学受験勉強は過酷な勉強です。
高校入試レベルの内容を、わずか12歳で解けるようにする勉強ですので。
したがって、楽に「楽しく」勉強しているだけでは、どこにも到達できないでしょう。
今通い始めた塾が「宿題が多く」「ついていくことができない」からといって、「宿題が少なく」「ついていくのが簡単」な塾に移ると、どういうことになるのかは明らかです。
中学受験からの撤退
はじめてはみたものの、あまりにも過酷な中学受験勉強。塾の宿題も膨大であり、子どもも疲れています。
いっそのこと中学受験をやめよう。
それもまた一つの決断ですから尊重します。
なにも小学生全員が中学受験をする必要はないのです。
公立中学からの高校受験のほうがマジョリティなのですから。
ただし、「中学受験しない」ことと「勉強しない」ことをイコールでつなぐのは間違っています。
中学受験とは質も量も方向も変わる学習になりますが、「負荷」のかかる勉強をしなくてはならないことに変わりはありません。