中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】塾選びの陥穽

そろそろ中学受験結果を各塾が公表しはじめています。

それを見て、塾選びを考える方、転塾を検討される方がいると思います。

今回は、塾選びで気を付けるべき点についてお話します。

※少々厳しめの意見になります。ご容赦ください。

アットホームな塾でいいのか?

 

「子どもが塾通いが楽しくて仕方がない」

「雰囲気がのんびりしていて、子どもに合っている」

「成績で追い立てる塾でなくてよかった」

「アットホームな塾が良い」

そうした意見やニーズがありますね。

 

しかし私は不思議でならないのです。

それは果たして塾にとって大切なことなのでしょうか。

 

合格に必要な学力をつける

 

これだけが「中学受験塾」に求められる全てです。

 

残念ながら、「アットホームな雰囲気」は不要です。

 

もちろん、「ギスギスした雰囲気の塾」「教師の怒鳴り声が響く塾」は最低です。

塾ですから、必要な学習を効率よく進めてくれることが最重要だと思います。

 

精神論を振りかざす塾はどうなんだろう?

 

気合・根性

私の大嫌いな言葉です。

小学生の感情をコントロールすることなど、大人である塾教師にはたやすいことです。

いわゆる「洗脳」ですね。

しかし、もし私が親だったら、そうした「気合系」の塾を忌避します。

子どもの心を弄ってほしくはないからです。

 

面倒見の良い塾が良い塾なのか?

 

保護者が求めるものに「面倒見の良さ」がありますね。

ニーズがある以上、それを全面に出す塾がたくさんあります。

この「面倒見が良い」というのはどういうことでしょうか。

 

(1)わが子の学習状況を完全に把握し、わが子だけのための指導をしてくれる

(2)我が家の志望状況を完全に把握し、希望に即した進路指導をしてくれる

(3)常に親の不安に寄り添い、相談に乗ってくれる

 

こういったあたりでしょうか。

 

すいませんが、これを「集団指導塾」の教師に求めるのは無理ですね。

 

例えば、1クラス15名の「少人数」制の塾があったとします。

1日の授業コマが3コマだったとします。

週5日授業をします。

15名×3コマ×5日=225名

この255名というのが、一週間に1人の教師が指導する延人数になります。

普通は6年生だけを担当するわけではありませんので、3学年でこれくらいの人数の生徒の指導は普通です。

毎日授業後に5名の生徒のご家庭に電話をかけたとします。

生徒の質問対応を適当に切り上げたとしても、21時半~22時半の1時間くらいしか時間はつくれません。一人10分程度の電話でも5軒に電話するのが限界でしょう。

255名全員のところに1回ずつ電話をするだけでも、3か月近くかかります。

3か月に1度、10分程度の電話がかかってくるのが「面倒見」の良さの限界です。

教師にとって1日5時間程度の授業時間は普通です。

授業以外に使える時間は実はあまり無いのです。

 

仮に4科目の教師で手分けをしたとして、進路指導ならともかく、教科指導については1人で頑張るしかありませんので。

 

教師の授業担当コマを減らすか、授業担当講師以外の人材を活用するしか、「面倒見の良さ」を向上させる方法はありません。

前者は、多大な人件費の高騰を招きますので、授業料を倍以上にするか、あるいは人件費を切り詰めるしかありません。

後者は、実のある「面倒見」は期待できません。

 

ちょっと冷静に考えればわかることです。

 

集団指導塾に期待できるのは、「授業中の生徒の出来具合を教師が良く把握している」レベルまでです。

それだってほとんどの塾では実現できていないのですから。

 

もし「面倒見が良い」塾があったとすると、教師の仕事で大切な何かが削られていることを私は疑います。

それが「過去問の研究」であったり「授業の予習」でないことを祈ります。

 

全ておまかせしていいのか?

 

「勉強はすべて塾にまかせてください」

そういう塾を私は「おまかせ塾」命名しました。

「おまかせ塾」が、本当にまかせて良い塾ならいいのですが、そうではない塾も多数あるのが厄介です。

塾に言われるがままにたくさんの「オプション講座」を受講し、ほとんど毎日通塾し、家庭学習が全くできずに受験してうまくいかなかったというケースなどたくさんあるのです。

親が子どもの学習状況を把握する、これは基本です。

そのうえで、塾の学習内容を精査することも必要です。

 

「大丈夫です」は本当に「大丈夫」か?

親の不安に寄り添うことも大切ですが、程度問題です。

とくに受験校選びに関して、「大丈夫ですよ、今のまま行きましょう」しか言わない塾は危険です。

「数打てば当たる」受験指導である可能性があるからです。

塾にとっては「合格実績」は最大の宣伝材料です。

受験しなければ合格者も出ないわけですので、どの塾も、経営陣からは「強気の受験指導」を求められます。

現場でそれをどこまで実施するのか、そこに塾の良心、教師の良心というものが発露するのです。

合格実績が堅調な塾は比較的安心かもしれません。

合格実績が急伸している塾はちょっと怖いですね。

合格実績が低迷している塾は何かがかみ合っていないのかもしれません。

冷静な判断が必要です。

 

もちろん信頼関係が大切

 

もちろん、受験には、塾・保護者・子どもの信頼関係が重要です。

とくに塾教師も人間ですので、保護者から信頼されてこそ力を発揮できます。

私がこの記事で申し上げたいのは、「常に塾を疑え」ということではないのです。

塾の限界を知っていただき、その範囲の中で信頼するくらいがちょうどよい、ということなのです。

 

塾選びについてはこちらでも書きました。参考にしてください。

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