
生徒から真剣な顔で相談されました。
塾の模試の日と、小学校の運動会の日が重なったのだそうです。
「先生ならどっちに行くべきだと思う?」
そんなの決まってるだろ!
そう言いたいのですが、言えないのです。
なぜなら、その模試は志望校を決めるデータを得るための重要な模試だからです。
小学校の運動会は、学校生活にとって大切なイベントだからです。
一般的には、小学校を優先させるに決まっています。わかり切ったことです。
しかし・・・・。
ずるい逃げ方
「それはご家庭の方針次第です。私からは何も言えません」
ずるい逃げ方なのは承知していますが、これ以外に何と言えば?
建前
「もちろん運動会に決まっています。小学校生活が第一優先です」
これは建前というより真理ですね。常識です。
「中学受験のための勉強は、あくまでも小学校生活の隙間に行うべきものである。なぜなら小学校は義務教育であり、子どもの健全な成長にとって何より大切な物だからである。」
心の底からこう言えればいいのですが。
塾屋の本音
「模試を優先させましょう」
正直なところ、塾屋の立場からの本音はこれです。
ただし、私にはこれを口にする勇気も覚悟もありません。
中学受験は、子どもの人生を大きく左右する挑戦です。大げさではありません。もちろん、大学入試というちっぽけな目標だけを考えるなら、中学入試はさほど重要性は高くはありません。
「早慶なら中堅私立からでも推薦がもらえるから。頑張って開成に行っても、結局早慶だったら同じでしょ」
「中受なんかしなくても、高校受験で早慶附属を狙えばいいんだよ」
「東大に受かる子は、結局どの学校からでも受かる子だから」
「桜蔭からGMARCH進学じゃあ負け組じゃない。それなら公立中で良かったのに」
こういう声を聞くと、「何もわかってないなあ!」と憤りを覚えます。
中学受験の本質は、中高6年間をどういう環境で過ごすのかにあるのです。その環境を手に入れるために、子どもたちは頑張ってきました。
それを考えると、運動会>模試、とは言いづらいのです。
本音の本音
昔なら、小学校の運動会は、家族ぐるみのビッグイベントでした。両親と祖父母、さらに下の弟・妹までがそろって応援したものです。お昼には、出場した子供たちと一緒に敷物に座って母親が心をこめて作ったお弁当を食べました。
しかし、今やそうした牧歌的な運動会は絶滅しつつあるようです。
午前・午後の時間制に区切ったり、応援にくる家族の人数を制限されたり。お昼も、子どもたちは教室で食べて家族と合流しないケースもよく聞きます。
片親しかいなかったり、親が仕事で忙しくて来られなかったり、あるいはお弁当を作ってもらえない家庭事情の子もいたりしますので。
そうなると、土日開催の意義は薄れますね。
また、異常気象が日常となる昨今、熱中症レベルの日射しだったり豪雨になったりと、開催のタイミングも難しくなりました。
もう、家族の参観を前提とした「運動会」というイベントそのものを見直す時期に来ていると私は思っています。
結論
生徒にはこう話しています。
「運動会には出ること。模試については、問題だけもらってきて、家で時間を測って真剣に解きなさい。模範解答を見て自分で〇付けをして、わからなかったところや間違えたところを徹底的につぶすこと。それが模試の一番の目的だ。さらに得点が出せれば、偏差値や順位は概算できるから、成績も把握できる」
まあ順当な結論ですね。
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