中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

中学受験|模試の偏差値が下がった! と慌てる前に、親がすべきこと、対応

さあ、いよいよ入試に向けての終盤戦が始まりました。

登山でいえば、最終アタック。マラソンでいえば、国立競技場に帰ってきた。

この時期になると、塾では各種模試が毎週のように実施されます。

しかし、思うように高成績をとり続ける子なんてほんの僅かです。

「どうしよう!」とうろたえる前に、深呼吸を一つして、この記事をお読みください。

なぜ模試の偏差値は上下するのか

中学受験では「模試の偏差値が下がる」と親は不安になります。しかし、模試の偏差値は必ずしも子どもの実力が落ちたことを意味しません。模試の点数に影響を及ぼす要因はいくつも考えられるのです。

◆母集団の変化

まさか、異なる塾の異なる模試の順位や偏差値をそのまま比較している方はいないと思いますが、今一度、偏差値の意味を思い起こしてください。そのテストを受けた集団の中での立ち位置を示す目安にすぎないのです。

例えば、四谷大塚の実施する「合不合判定テスト」。多くの受験生が受験する老舗の模試ですが、その昔にはSAPIXの生徒達も全員受験していたことをご存じですか? まだまだ自前でこの規模の模試を実施できなかったSAPIXが、四谷大塚の模試に相乗りしていたのですね。もちろんSAPIXは四谷大塚の準拠塾・提携塾ではありませんので、生徒たちが自主的に受験する形でした。合不合判定テスト実施日は、なぜか?SAPIXの授業は休みになっていたそうですね。しかしその頃からSAPIXの生徒層は上に固まっていました。その上位層の生徒たちが大挙してこのテストを受験するため、従来から四谷大塚のテストを受け続けていた会員たちの偏差値が軒並み下がったそうです。

これは極端な例としても、その時々の受験生の層によって偏差値が上下するのは当たり前なのです。とくに受験人数が少ない模試は要注意です。少なくとも5000名以上の受験生がいない模試の偏差値は当てにならない、目安程度と考えましょう。

◆出題範囲

 模試には全ジャンルの問題が網羅されているわけではありません。たまたま自分の得意(不得意)なジャンルの問題が出れば、当然点数も上下します。

◆問題の質

残念なことに、模試の問題の質が低いこともよくあるのです。模試の作成は各塾の先生がやっていますが、その教師の力量次第では、良い問題も悪い問題も作られているのですね。授業が上手い教師はいくらでもいますが、模試をきちんと作成できる力量の教師は少ないのです。精度の低いテストからは精度の低い結果しかもたらされません。

◆不安定な得点力

小学生の得点力は不安定です。いつもは間違えない問題を間違える、知っているはずの知識を勘違いする、いきなり読解が冴えわたる、そんなことは日常茶飯事です。

模試の点数のブレは「想定内」なのです。

 

このように、模試は生徒本人の本番での実力をそのまま反映するものではありません。

模試の成績に過敏に反応せず、冷静に背景を理解することが親に求められます。

 

親がしてはいけない対応

「模試の成績が下がったのはなぜ?」と子どもを責めるのは逆効果です。親のプレッシャーによって子どもは自信を失い、やる気をなくす危険があります。さらに、偏差値が下がるたびに勉強量を急に増やすのもよくありません。疲労やストレスが蓄積し、集中力が落ちて逆効果になります。中学受験は長期戦であり、一時的な模試の偏差値に振り回されると本来の力を伸ばせません。「成績が下がるのは自然なこと」と理解し、落ち着いた対応をすることが大切です。

親にとって、模試の成績はおそらくわが子の学力を測る唯一のものさしなのはわかります。しかし、そのものさしが不安定なものなのです。偏差値で10以上の変化ならともかく、1や2くらいの変化は誤差の範囲と「ドンと構える」度量が大切です。

 

親ができる効果的なサポート

模試の偏差値が下がったとき、親ができる一番のサポートは「一緒に振り返ること」です。解き直しを行い、ケアレスミスや理解不足の分野を確認することが次の成績アップにつながります。

この際には、たとえ正解していた問題も確認するようにしてください。当て勘が冴えただけ、たまたま合ってただけ、という場合も結構多いものなのです。

また、模試直前に生活リズムが乱れていないかを見直すことも重要です。睡眠不足や食事の偏りは成績低下の原因になり得ます。

この時期の模試は、高偏差値を目標にするのはやめましょう。そのために必要な努力が膨大すぎるからです。模試は現在のお子さんの立ち位置を示す目安程度にとらえてください。

 

中学受験で偏差値が下がるときほど、親の冷静な支えが必要です。

 

模試の結果を本番に活かす方法

中学受験における模試は合否を決める判定ではなく、課題発見の場です。

模試を受験する最大の意義がそこにあることを忘れてはいけません。せっかく集中して受験したテストですから、現時点での子どもの課題をあぶりだす材料ととらえてください。

また、全教科を一度に改善しようとせず、苦手分野に優先順位をつけて補強することが効果的です。また、模試の結果が下がった場合でも、複数回の成績を比較すれば長期的な成長が見えます。そのデータをもとに、併願校の選び方や学習戦略を修正していくと安心です。模試の偏差値が下がることを恐れるのではなく、戦略を立てる材料ととらえましょう。親が模試の成績をどう扱うかで、子どもの本番力は大きく変わります。

 

模試も過去問演習の一つ

 私の推奨する模試データの活用法は、模試の得点も、自宅で行っている過去問演習の一つと捉えるやり方です。毎回の過去問演習の得点を、算数・国語は150点ずつ、理科・社会は100点ずつに換算し、その得点の推移を見てきました。模試だって同じように得点を500点満点に換算してデータ化してしまうのです。毎回の得点は激しく上下しますので、5回くらいの移動平均をとってグラフ化することをお勧めします。これによって、得点力の推移が「見える化」されますね。同様に4科目ごとの移動平均もグラフ化してみましょう。苦手教科が浮き彫りになってきます。

まとめ

「中学受験で模試の偏差値が下がった」「もう〇〇中学には受からない!」「志望校を下げなくては!」と焦る親は多いですが、成績の上下は自然なことです。模試は子どもの努力を測るだけでなく、改善点を見つけるためのツールです。親が冷静に受け止め、適切な声かけや生活サポートを行えば、子どもは必ず成長します。中学受験の模試は「下がることもある」と理解し、次につなげる姿勢が合格への一番の近道です。

 

今でも覚えている二人の生徒がいます。

A君とB君は、どちらも大変優秀な生徒で、二人とも開成と筑駒を目指していました。このレベルの学校になると優先順位はつけ難いですね。開成と筑駒の両方が第一志望だったのです。成績的には若干A君の方が上でした。

しかし、そろそろ願書を準備しようかという時期になって、A君の親、とくに母親が怖気づいたのです。模試のデータのみを信じて、開成から駒東へ1日の受験校を変更しました。駒東なら2日に合否がわかりますので、その合格を見てから安心して筑駒を受験しようという作戦ですね。

結果は、A君は駒東〇で筑駒×となりましたが、初志貫徹したB君は、開成も筑駒も合格したのです。B君はそうとう悩みましたが、筑駒を選びました。

もちろん駒東も良い学校です。それはわかってはいますが、A君母子の心中は複雑でしょう。「作戦成功」とみなすべきなのか、それとも。受験に「もし」は禁句ですが、もしあのまま開成・筑駒と受験をしていたら、どちらも合格していた可能性はあったと思います。

 

11月の段階で、受けた模試の合格可能性が「40%」「20%」で合格した生徒など多数みてきました。もちろんその逆だった生徒もいます。

 

今できることは、一つ一つ穴を埋めていく作業を継続する、それだけなのです。

くれぐれも模試の結果に一喜一憂することのないよう、冷静に対処しましょう。

peter-lws.net

  

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私立中高一貫校に進学予定の方全員に読んでほしい本です。