
今回は、塾の選び方の基本についてまとめてみます。
同様の記事は、過去に何度も書いていますが、少し詳細に書きすぎたかもしれません。今回は初歩の初歩からまとめてみます。
1.塾無VS塾有
いきなり驚かれたかもしれません。
「中学受験って、塾は必須でしょ?」
普通はそう思いますよね。しかし、実のところ中学受験に塾は必須ではないのです。
そもそも中学受験の黎明期は1950年代ですが、勃興期は1970年代です。悪名高き都立高校の学校群制度の影響により、私立中学受験が盛んになりました。その頃でも、家で参考書と問題集を使って自学自習をして中学受験に臨む受験生もたくさんいたのです。
別に生まれつき頭が良い天才の話ではありません。 家で計画的に学習を積み上げることで、中学受験は可能です。
それでは、なぜ皆中学受験塾に通うのでしょうか?
◆塾にまかせたほうが楽だから
◆効率よく合格に導いてくれるはずだから
◆皆が通うから
◆中学受験には塾は必須だと思いこまされているから
理由としてはこういったところでしょう。
たしかに塾の作ったカリキュラムやテキストに乗っかったほうが楽なのには違いありません。彼らは受験のプロのはずですので、合格まで導いてくれるはずです。私もここまで否定するつもりはありません。ただし、慌てて塾選びに奔走する前に、塾の必要性を一度じっくりと考えてみるべきだと思うのです。
こんな子がいました。
両親とも難関中高出身であり、子どもにも中学受験をさせることは既定路線でした。
幼稚園生のときにはさすがに通いません。家で両親が市販の本を使って普通に教えていたのです。
小1のときに、周囲は塾に行き始める子がでてきました。そうした塾の説明会に行き、教材を見た結果、まだ通わせる必要は無い、と判断しました。
小3のときに、周囲で通塾する子もだいぶ増えました。しかし、「うちの子は4年生からで十分でしょう」と判断しました。
小4のとき、はじめて塾のテストを受けてみました。かなりの高成績でした。「自宅学習でこれくらいの点が取れるのなら、今やっている勉強は間違っていないということだろう。もう少し自宅学習を継続しよう。もし成績が下がってくるようなことがあれば、自宅学習の限界ということで、塾に通うことにしよう」
ところが、成績は下がることなく、たまに受ける公開模試の結果も順調です。さすがに6年生になると不安になりました。「せめて6年生の夏期講習くらいから塾に行かないとまずいのでは?」そう思って私のところに相談に訪れたのです。
6年生の夏前に、いわゆるカリキュラム学習は終了しています。その段階で成績が良いということは、カリキュラム学習が順調に仕上がっていることを意味しています。夏以降は、どの塾でも問題演習中心となります。授業で教わるというより、問題演習の間違い直し中心の指導に切り替わるはずなのです。
「ここまで来たら、塾に行く必要はもうないでしょう」
これが私のアドバイスでした。
このお子さんは、とくべつに頭が良いというわけではなかったそうです。ただ、家庭での学習習慣がきちんと身についたため、時間の使い方がとても良かったのですね。
もちろんそれを支え切った両親の努力は相当なものだったはずです。
塾無で中学受験をする方法について本を書いています。ぜひご一読ください。
2.集団塾VS個別指導塾
これについては、条件を揃えないと比較できないのです。
◆同じ授業料なら・・・集団塾>>個別指導塾
単純な話です。1対1(1対2の場合も)は授業料が高額です。塾は人件費が多きな割合を占める業態です。一人の教師が1度に20人を指導する集団塾と、1人を指導する個別指導塾では、授業料が違う(ざっと5倍~15倍)のは当然です。
したがって、同じ授業料なら集団指導塾の指導の方が良いにきまっています。
◆同じ時間数なら・・・個別指導塾>集団塾
これも単純な話ですね。一人の教師を1時間独占できる個別指導塾のほうが、指導密度は濃いのは当然です。
◆同じ指導レベルなら・・・個別指導>>集団塾
1人のベテラン教師を独占できる個別指導塾に軍配が上がります。
◆時間効率最優先なら・・・個別指導>>集団塾
集団塾はとにかく無駄な時間が多いのです。これは致命的な欠点です。
◆お金が無尽蔵にあるなら・・・個別指導>集団塾
ほとんどの個別指導塾では、担当教師のグレードによって価格が異なります。中学受験の指導ができるベテランともなると、授業料は非常に高額です。正確に計算するのは難しいのですが(個別指導塾で授業料を公開しているところはほとんどない)、ざっと調べてみると、学生講師だったとしても、集団指導の時間をそっくり個別指導に置き換えると、月額50万~60万になるはずです。ベテランプロ教師を依頼すれば、おそらくはその2倍~3倍は覚悟しないとならないでしょう。
このように見てくると、打ち出の小槌さえあれば、個別指導一択のように思えるかもしれません。
ただし、個別指導塾には、授業料以外にも致命的な問題があるのです。
◆的確な進路指導を求めるのなら・・・集団塾>>個別指導
致命的な問題、それは、個別指導では教師の経験が積めない、という問題点です。
集団指導塾であれば、一人の教師の年間の指導人数は普通に3桁に達します。10年指導していれば、4桁になるでしょう。それくらいの生徒の指導経験があることが、「プロ」を名乗れる最低条件だと思います。しかし、個別指導では、圧倒的に指導人数が少ないのです。
過去に開成受験生を100名指導した教師と、過去に5人しか指導したことのない教師、どちらが経験値を積んでいるのかは言うまでもありませんね。
また、集団指導塾も大手ともなると、自前のテキスト体系・テストを持っています。そして豊富なデータも。
まずは大手の集団指導塾を検討。
これが正解です。
3.集団指導塾の種類
シンプルに、信頼できる模試を自社作成・実施しているかどうかで考えましょう。
◆SAPIX
この塾は、テキストもテスト体系も全てが自前です。それが可能な教師陣をかかえています。中学受験生でも上位層を抱えている塾ですので、開成や桜蔭や筑駒を本気で目指すなら、素直にこの塾に通うべきでしょう。
◆日能研
この塾も、テキストもテスト体系も全てが自前で完結しています。この塾の特徴としては、授業を指導している教師と、現場校舎の運営が分離しているところです。いわゆる予備校スタイルのシステムですね。また教材やテスト作成も、普段生徒の授業を担当している教師以外の専門チームが作成しているようですね。SAPIXとは真逆のスタイルです。
◆四谷大塚
1950年代創立のこの塾は、中学受験を切り開いたパイオニアです。「予習シリーズ」というテキスト、そして毎週行われるテストが基本となっています。もともとは、テスト会が母体なのです。
自前でテキストやテストを作ることのできない中小塾が無数に「YT-net」という四谷大塚のネットワークに加盟しています。いわば「他人の褌で相撲を取る」やり方ですが、クオリティの低い教材やテスト・プリントを使われるよりはるかにましといえるでしょう。
ところで、早稲田アカデミーもYT-net加盟塾です。
◆首都圏模試
「首都圏模試センター」というテスト屋さんが実施しています。こちらも、自前のテストが作れない中小塾が無数に参加しています。ただしテキスト体系はありません。
大きいところでは、市進学院や栄光ゼミナールがそうですね。この模試の特徴は、学力が下のレベルの受験生が多く受験していることにあります。そのため、上にあげた模試よりも異なる偏差値が算出されます。同じ学校の合格偏差値を較べると、首都圏模試-10=四谷大塚・日能研、四谷大塚・日能研-10=SAPIX といったかんじでしょう。
塾に通う目的の一つは、模試の受験にあります。どの塾を選ぶのか=どの模試を選ぶのか、ということなのです。
一度、各塾・模試が算出している偏差値表を見てください。考えている中学校の偏差値が50前後にある模試が、適正レベルの模試ということになります。そして、選ぶべき塾は、その模試を使用している塾ということになるのです。
※注意
中小塾の中には癖の強い塾も多いので要注意です。私が知っている中規模塾(教室を数校展開している)では、塾生には模試を受けさせないという方針のところがあります。もし受けるのなら、SAPIXの模試だけを受けるようにと指示されているとか。ちなみにこの塾の生徒のレベルは、SAPIX模試を受けるレベルではありません。意図が不明です。
もしまだ具体的な中学校がわからない場合は、とりあえず日能研か四谷大塚の公開模試を一回受験してみるべきでしょう。
日能研と四谷大塚のレベルにはさほどの差はありません。自宅近くで受験可能な塾を選べばよいと思います。
◆まずは集団指導塾を検討する
①とりあえず四谷大塚か日能研なら無難
②物足りなかったらSAPIX
③歯が立たなかったら首都圏模試採用塾
これが正解でしょう。
4.個別指導塾の種類
最初から全てを個別指導塾にまかせて中学受験に臨む方は少ないと思います。
集団指導塾に通いながら、足りないところを個別指導塾で補う、そうした使い方が普通でしょう。
あるいは、集団指導塾にはどうしても通えない(時間が合わない・性格が合わない等)場合もあるかもしれません。
個別指導塾には、3種類あります。
(1)大手集団指導塾の系列
SAPIXーPRIVATO(プリバート)
日能研ーユリウス
早稲田アカデミーー早稲田アカデミー個別進学館
栄光ゼミナールービザビ
いくつかの大手集団指導塾では、系列に個別指導塾を展開しているところがあります。もしその集団塾に通っているのなら、使い勝手がよいでしょう。
これらの個別指導塾にはいくつかのメリットがあります。
・広告宣伝費・・・集団指導塾の生徒に宣伝するだけである程度の集客が見込めますので、広告宣伝にコストをかけなくてすみます。これは授業料に反映します。
・教材開発費・・・こちらも集団指導塾の教材開発チームに頼れますのでコスト削減につながります。
・教室立地・・・だいたいが、集団指導教室に隣接したところに展開しているので、併用しやすくなっています。
(2)大手個別指導塾
・TOMAS
・東京個別指導学院
・個別教室のトライ
・森塾
・ITTO個別指導学院
・スクールIE
・個別指導明光義塾
他にもまだまだありそうです。これらの個別指導塾は、家庭教師センターから派生したものや、大手教育企業の傘下にあるものなどさまざまです。
いくつかの特徴があります。
・費用が高い・・・これは仕方がありません。個別指導塾の構造的な問題です。
・広告宣伝に力を入れている・・・この費用は授業料に転嫁されます。
・教師の指導力がバラバラ・・・個別の性質上、人材育成にコストをかけられません。また人件費もかけられません。集団指導塾の時給の半額程度で募集していますので、学生非常勤アルバイトの質は玉石混交になるのは避けられません。プロともなると破格の授業料となります。
・教材の質・・・自前で教材開発までできるところは僅少です。
・小中高生すべて扱うところが多い
・合格実績は意味がない・・・集団塾と併用している生徒がほとんどですから。
(3)中小個別指導塾
これについては、それこそ玉石混交だとしか言えません。
地元密着型の個別指導塾など無数にありますので。
評判の良い先生が近くにいれば、それが最善かもしれません。
