元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】学校選びの選択肢に地元の公立中学を入れるべきか

今回の記事は誤解を招きそうなのであらかじめお断りしておきます。

私は「地元の公立中学への進学」を否定する気はありません。

全国的には、中学受験のほうがマイノリティであり、公立小学校→公立中学校→高校受験のほうが普通であることはわかっています。

今回の記事は、あくまでも一都三県の中学受験生が、「志望校選びの中に地元公立中学への進学という選択肢を入れる」ことの是非についてです。

 

昔と今の変化

20年ほど前までなら、志望校を相談する面談の際に私が必ず冒頭に確認することがありました。

「もしすべての受験校が不合格になった場合は、地元の公立中学へ進学してもかまわないとお考えですか?」

「この学校よりレベルを落とすくらいなら公立中学進学でかまわない、と考えるラインはありますか?」

 

すると、大半の方が、「最終的に地元の公立中学進学でもかまわないと考えている」とお答えになったのです。そのころはまだ、高校募集をしている私立中高一貫校はいくつもあったのですね。

しかし状況は大きく変わりました。

2011年には海城が高校募集を停止し、2014年には高輪、2019年には成城、2021年には本郷、2022年には豊島岡と次々と続きました。

さらに、「併設型」とよばれる、高校募集をしていた公立中高一貫校も、高校募集を停止します。

2021年・・・都立富士・都立武蔵

2022年・・・都立両国・都立大泉

2026年・・・横浜市立南

 

今手元にある「SAPIX高校受験偏差値表」を眺めてみると、中学受験用のそれと比べて学校数があまりに少ないことに驚かされます。女子で比べてみましょう。

高校受験偏差値表(女子)

一番左の一列は千葉・埼玉の学校で、右の4列は都県立高校です。

高校募集している私立高校は、これしかないのです。

もちろんこれは、SAPIX中学部の偏差値表に載せられている学校だけです。

中学受験偏差値表(女子)

比較のために、中学受験用のSAPIX偏差値表も見てください。

一番左の2列が千葉・埼玉県の学校で、それ以外が東京・神奈川の学校です。複数回入試や午後入試を実施する学校が多いことを考慮しても、学校数も高校受験とは桁違いです。

首都圏(一都三県)でいえば、高校入試の選択肢は非常に狭いのです。

公立中学から高校受験のルートはこうなっています。

 

〇都立高校・県立高校

 これが主流です。学校数・募集定員からいっても、これが主流にならざるを得ません。 東京都で見てみると、公立中学校の卒業予定者数(77,555人)に対して、都立高校全日制の定員(40,240人)は約 51.9% の割合となっています。

それ以外の48%の進路が気になりますね。

私立高校がおよそ31%、通信制高校が7%、定時制高校が4%、都外の高校が4%となっています。国立は0.3%です。

「別に無理して中学受験しなくても、公立中学から日比谷高校→東大でもよい」と考えるのは早計です。都内の公立中学校から日比谷高校へ進学する生徒数は、0名~1名、多くても2名程度なのです。その中学校でとびぬけて優秀な生徒が1名進学できるかどうか、というレベルです。

 

〇大学付属高校

 残念ながら、大学付属校についても、完全中高一貫化が進んでいます。募集枠は減少傾向にあるのです。

 

〇中高一貫進学校

 こちらも前述したように高校募集を停止するところが増えました。上の偏差値表(女子)を見てみると、広尾学園・山手学院・桐光学園・淑徳巣鴨・十文字・富士見丘・郁文館・桐蔭学園・朋優学院・都市大等々力・江戸川女子くらいしかありませんでした。

男子では、開成・筑駒・灘がありますね。あとは城北、鎌倉学園、佼成学園、保善高校くらいです。

この偏差値表には載っていませんが、このほかには、内申が低すぎて都立・県立高校に進学できない生徒の受け皿の私立高校や、中高一貫私立だが定員割れをしていて中学で生徒が集まらない学校の高校募集があります。

 

このような現実を踏まえて、最近では、「中学受験の際には地元の公立中学校を選択肢に含めない」方が多くなってきた実感があります。

 

公立中学進学

中学受験が思わしくなく、結果として地元の公立中学に進学する子ももちろんいます。

こうした子たちの中学受験に向けた努力は決して一つも無駄にはなりません。中学での学習を大きくリードして、数学や英語に注力し、高校受験に向けてさらに努力を続けることは素晴らしいことです。私は全力で応援します。

 

私が気になるのは、「うまくいかなければ公立中学でかまわない」という「逃げ」の気持ちなのです。

中学受験は過酷な試練です。高校受験と同等かそれ以上の難易度の問題を、小学6年生の子どもが解かなくてはならないのですから。

高校受験生と中学受験生では勉強量もまるで違います。

逃げ出したくなるのも当然です。

しかし、逃げずに頑張っている子こそ私は応援したい。

 

もし「地元の公立中学でもかまわない」と考えるのなら、いっそのこと中学受験をせずに、高校受験を目標とした勉強に切り替えるべきだと思います。

中学進学までの数年間、英語と国語にフォーカスした勉強をすることができます。

また、理科・社会についても手を抜かず、中学3年間の先取りを小学生のうちに済ませてしまいましょう。

そうやって胸を張って公立中学に進学するのなら、素晴らしいと思います。