元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

塾に行きたがらない子ども

 

最近少なくなってきた気がします。

塾に行きたがらない子が。

と思っているのはどうやら私だけのようでした。SAPIXは恵まれた環境だったようです。

塾に入りたがらない

まず第一関門として、そもそも塾に入ることを拒否する子がいます。

気持ちはわかりますね。

毎日楽しく遊んですごしていたのに、いきなり「塾に行け!」では、拒絶反応も当然です。

これは最初の前提からして間違っているのです。

勉強は塾でするもの

→いつまでも遊んでいてはダメ

→だから塾に行きなさい!

勉強は塾でするものではありません。家でするものです。塾は、勉強しやすい環境提供、教材提供、指導、カリキュラム、そうしたものをパッケージ化して販売しているだけです。本来家でやるべきものの代替サービスを提供しているのですね。

したがって、正しくはこうあるべきでした。

家で勉強している

→もっと勉強したい

→塾に行きたい

子ども自らが望むものなのか? そう思われるかもしれませんが、そうした生徒を過去にたくさん見てきました。

みな、塾に入る前から家できちんと勉強させてきたご家庭です。

「塾に行けば、もっといろんなことを教えてもらえるらしい!」

子どもはそう考えるのです。

 

つまり、塾に入れる前に、すでに家庭で継続した学習をしている子が塾に入る資格があるのです。そうでない場合には、能動的な学びは期待できません。

 

塾に通いたがらない

行きたがらない理由はさまざまでしょう。

(1)教師が怖い

 昭和の時代には主流でしたね。厳しい(怖い)指導が。

私がこの仕事を始めた頃、大先輩の先生に言われたことがあるのです。

「塾にとって、『あの塾の指導はぬるい』といって生徒が辞めていくのは大問題だ。だが、『あの塾の指導は厳しい』といって生徒が辞めるのは問題ない。一人やめても2人、3人と生徒が入ってくる」

つまり、「ぬるい」という評判より「厳しい」という評判のほうが良い、ということですね。

別にその言葉を真に受けたわけではありませんが、かつての私の指導は「鬼」でした。私の授業が怖すぎて教室に入ってこれない生徒がいたくらいです。今考えれば実に「愚か」でした。もちろん感情的に生徒を怒ったことはありません。生徒の「甘え」を許さない指導が厳しかったのです。たしかに確実に成果はあげていましたが、他のやり方だってありますね。その後反省して、今の「仏のような?」優しい指導へと進化しています。かつての私の指導を受けた卒業生(社会人)が私に会って言った一言がこうでした。「先生、まるで別人だね」 ずいぶん失礼ですね。

さて、世の中の塾教師は、皆私のように悟りを開いたわけではありません。そもそも理不尽に生徒に怒りをぶつけることが「良い教師」だと勘違いしている「おバカさん」が大勢いる世界なのです。それでもSAPIXは、冷静で落ち着いた指導が売りで、感情的に声を荒げることを厳しく戒めています。しかし残念なことに、廊下の教師の怒鳴り声が響くことは皆無とはいえないのです。

まして、熱血指導を売りにしている塾は危険です。生徒によっては「怖いから行きたくない」となりかねません。

 

(2)教室がうるさい

 個人的にはとても信じられません。教師が教室をコントロールできないのです。新人の教師にありがちですね。あまりに教室が騒がしいから注意しにいったところ、教室の真ん中に教師が立っていた、そうした場面をずいぶん目にしました。

これは、「新人だから生徒になめられる」というよりは、「授業力が無い」「教科力が無い」からなめられるのです。興味深い授業、点数につながる授業なら生徒はきちんと聞いてくれますので。

ただしこれは、SAPIXという理想環境の場合です。

学童保育替わりに塾に活かせるご家庭が多いような塾では、そもそも教師も生徒を厳しく指導するどころか、一緒になって遊んでいるところもあるのです。

「塾に行くのが楽しい」というので安心していたら、成績は下がる一方だった、そんな場合は要注意ですね。

しかしそうした塾にだって、まじめに勉強したい生徒もたくさんいます。

「教室がうるさくて先生の声が聞こえない。もうあんな塾には行きたくない」

もしお子さんがそうこぼしたら、即座に転塾の一択です。

 

(3)授業がわからない

これはつらいですね。授業が理解できない教室に4時間も座っているのです。

登塾拒否も当然です。

集団指導塾の場合は、どうしても理解度に差がある生徒が教室内にいますので、全員を満足させる授業は困難です。8割の生徒が理解しているのなら、残り2割は無視して授業することもやむを得ないのです。

しかし、それでもなお、わからない生徒を出さず、わかる生徒をあきさせない授業をするのが「塾教師の腕の見せ所」です。

それができない教師は、授業力が低いのです。

これも転塾の一択です。

 

(4)人間関係

塾内にだって「いじめ」は存在します。小学校より希薄な人間関係ですので多くはないのですが、ゼロではないのです。

ある校舎での実話を紹介します。

A子は優秀な生徒でした。ただしひどいイジメ体質でした。この子のイジメは陰湿です。教師が見ている前ではやらないのです。塾の行き帰りといった教師の目の届かぬところで、仲間を動員した陰湿なイジメを繰り返していました。A子の母もなかなか強烈な方でした。A子が家で「B君に筆箱隠された」と訴えると、即座に授業中の塾の教室に怒鳴り込んでくるのです。「うちのA子をいじめたのはお前か!」といってB君の胸倉を掴んで怒鳴り散らしました。あまりの権幕にその場にいた教師も凍り付きました。ちなみにA子が筆箱を隠されたといのは狂言です。気に入らないB君を排除するために嘘をついて母親を利用したのですね。

このA子母子をめぐる騒動には多くのエピソードがあるのですが、ここで紹介するのはやめておきましょう。書いている私も読んでいる皆さんも気分が悪くなるだけですので。

もしお子さんが、塾の人間関係が理由で塾に行きたがらないのなら、これは即座に転塾の一択です。子どもが我慢する必然性が一つもありませんので。塾なんていくらでもあります。我慢してまでその塾にしがみつく理由などないのです。

 

(5)勉強が嫌い

ああ、この理由はどうしようもないですね。

これは「改善不可能」という意味ではありません。

そもそも塾で学ぶ内容は難しいのです。それを「好き」になるほうがおかしいのです。

それでも教師の力量によって、あるいは子どもの好奇心によって「おもしろく」感じさせているのです。

勉強は、「好きだからやる」「嫌いだからやらない」というものではありません。好きだろうが嫌いだろうが「やらなくてはならないからやる」ものなのです。

お子さんの心得違いを諭し、勉強させるだけです。