元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

この時期の風物詩、東大合格者高校別ランキングを見て考えること その2

前回に続き、高校別東大合格者ランキングを見ていきます。

※手入力で表を作りましたので、数字・学校名にミスがあるかもしれませんがご容赦ください。

※特定の学校を持ち上げるつもりも貶める意図もありません。ただの私見です。

21位~40位

東大ランキング

20位までのランキングだと、一都三県以外の学校は、2位:灘(兵庫)、7位:西大和学園(奈良)、12位:久留米大付設(福岡)、20位:東海(愛知)の4校でした。

圧倒的に一都三県に東大合格者が集中している現実が浮き彫りとなっています。

もちろん最大の理由は、人口=学校の集中です。また、そもそも東京の大学ですから、自宅から通学できる子が多く受験するという当たり前の理由もあります。昨今の経済不況から、大学生の一人暮らしを親が負担できないという理由もあるでしょう。東京の一人暮らしの場合は、初期費用が50万円、毎月の家賃等が15万円もかかるそうですね。もちろん昔ながらの昭和の匂いのする貧乏学生下宿は相場も下がりますが、セキュリティを考えたオートロックのマンションともなると相場も跳ね上がります。

そして、20位までのリストの中では、高校から入る学校(=公立高校)は日比谷、横浜翠嵐、湘南の3校だけでした。中学受験を経て進学する中高一貫校が圧倒的に有利な現実がそこにはあります。

 

さて、21~40位までのリストを見ていると、今度は公立高校の頑張りが目につきますね。12校が公立高校です。また、地方の高校の名前も多くあがってきました。9校が一都三県以外の高校です。

ご存じのように、私立中学受験がさかんなのは、首都圏と関西圏のみです。その他の地域は、そもそも私立中高が少ないことに加え、中学受験のカルチャーそのものがありません。地元の優秀な子は、公立中学から県下トップの公立高校を目指すのが王道で、そうした公立高校に進学できない生徒の受け皿としての私立高校という位置づけな地域も多いのです。

 

武蔵がちょっと元気が無いのが気になります。誰が言い始めたのか、「御三家」と呼ばれる学校があります。開成・麻布・武蔵だそうです。ちなみに女子御三家は桜蔭・女子学院・雙葉です。もともと何の根拠もない勝手なグルーピングですが、高偏差値&伝統&大学実績がずぬけている3校といったくらいの位置づけでしょうか。さらにすべてが2月1日の単発入試のため、受験生がかぶらない、つまり塾にとっては実績アピールに都合が良いという事情もあるでしょう。

しかし、武蔵は開成・麻布の安定と比べると、だいぶ見劣りします。1970年代から1990年代にかけての勢いは今はありません。この頃は50名以上は当たり前、87名(1979)、86名(1984)、85名(1982)という時代から比べると、近年は20名台ですので、寂しいですね。このことをもってして、「もう武蔵は御三家ではない」と揶揄する人もいます。しかし、もともと武蔵にとっては「御三家であるかどうか」はどうでもよいことでしょう。そもそも卒業生数は171名の小規模校です。高校入試組を加えて412名の大規模校の開成と単純比較はできません。それに、武蔵は唯一無二の魅力を持つ学校です。校内にヤギが飼われているとか、小川が流れているとかいう表面的なことだけではありません。「自由」を謳う学校は多々ありますが、その大半は「見せかけだけの自由」で、本当に生徒の自主性を尊重した自由な学校は少ないのです。武蔵は麻布と並んでリベラルな学校の代表格ですね。

しかし、最近は保護者からはこうした「リベラル」な校風は敬遠されがちです。「自由にみせかけた管理型教育」が人気のようです。

個人的には武蔵校内を流れる小川を気に入っています。水辺の散歩道は緑蔭が濃いのです。あんな環境でのびのび過ごす6年間は素敵だろうと思います。

ぜひ一度HPをご覧ください。

www.musashi.ed.jp

リストに戻ります。

35位の芝は健闘していますね。例年10名台で推移していました。昨年は8名です。今年は大躍進といえるでしょう。もともと、がつがつしていないのんびりした校風が持ち味の学校です。昨今こうした学校は希少なのです。手元のSAPIX版偏差値表では47でした。SAPIX基準では「中堅校」ですが、実は難関校レベルの実績です。

 

25位の女子学院、26位の洗足学園、35位の豊島岡女子が女子校では3校だけランクインしています。これに9位の桜蔭を加えると、40位までの45校のうち4校だけが女子校ということになります。

女子学院は安定ですね。例年20名台から30名台で推移しています。この学校は進路指導をやらないのです。もちろん相談には丁寧に応じますが、学校側から「あなたの学力ならこの大学を受験すべきだ」といった指導はありません。すべてが生徒の自主性に任されています。そもそも校則すらほとんどありませんし、服装も髪色も自由です。女子校でここまで自由な学校は他に知りません。唯一無二の学校です。卒業生が多彩なことでも知られています。

去年に続き、洗足学園がいますね。この学校の方針は、女子学院と真逆だと思いますが、それでもこれだけの実績を連続するのはただ事ではありません。最近の受験生達の中でも、第一志望にあげる生徒が増えてきた印象があります。優秀な生徒を集め、さらにそれを伸ばす指導、体制が充実していることの現れなのでしょう。宿題や補習等が大変過ぎるという声もありますが、中高生は勉強しなくてはならない時期です。放っておけば遊びにシフトしがちな年代なのはご存じの通りです。学校がきちんと学力向上を図ってくれるのはありがたい話だと思います。

 

豊島岡も、10年ほど前の41名をピークとして、その後は20名前後で安定しています。SAPIX偏差値表を見ると、62くらいと高いのですが、これには理由があります。豊島岡の受験日は2月2日、3日、4日の3回に分かれ、それぞれ160名、40名、40名の募集です。それに対する出願者数は、それぞれ665名、788名、609名となっています。倍率20倍!とおびえますが、これは「出願者数」ですので、実際には桜蔭や女子学院に合格した生徒は受験しませんから、実質倍率は1回が2.2倍、2回・3回が5.5倍程度です。

この学校がなぜ1日入試をしないのかはわかりませんが、現実には桜蔭・女子学院受験生の受け皿的なポジションとなっています。それに3回受験機会があるというのも受験生にとってはありがたいですね。

学校説明会に参加した保護者は、皆がファンになって帰ってきます。やはり魅力的な学校の一つなのだと思います。

ただし、個人的にどうしても納得かいないのが、「算数・英語資格入試」の存在です。

英検の級を持っていると、それだけで英語の「みなし得点」が与えられ、それに算数の試験を受ければ合否が決まるという変則入試です。

英検級の提出だけでもらえる「みなし得点」はこうなっています。

準1級以上・・・100点
2級・・・・・・90点
準2級プラス・・80点
準2級・・・・・70点
3級・・・・・・50点

ところで、この「算数・英語資格入試」の合格最低点は、1回で300満点中224点となっていました。英語が100点、算数が200点満点です。算数の入試問題は一般入試と同じで、得点を2倍に換算します。一般入試の算数の合格最低点は非公表ですが、合格者平均点は200点満点換算で146点です。

ということは、英検準1級を持っていれば、算数は124点で合格できることになります。算数の得点が一般受験生の合格者平均点よりも20点マイナス、受験者平均点よりも少しだけ点をとれば合格できることになります。

つまり、英検3級ではほぼ無理(算数が満点でなければ)、準2級でも危ういですね。英検2級以上がマスト、準1級以上が求められる入試です。

みなさんは、英検準1級のレベルをご存じだと思います。大学中級レベルとされていますし、最難関進学校でも普通に学校の英語の授業だけを頑張った生徒が高1~高2で何とか受かるかどうかというレベルです。まして国内の中学受験生が科目学習を頑張りながら頑張ってどうにかなるレベルではありません。

これは、明らかに帰国生のための入試とみてよいでしょう。

国内で算国理社の勉強を必死に頑張っている受験生を見てきた私の立場からすると、なんとも「ずるい」ように思えてなりません。

ただし、帰国生で、英語はできるが国語・理科・社会に苦戦している生徒にとっては福音です。

 

学芸大学付属の凋落傾向が続きます。1980年代~90年代にかけては、100名以上の実績が続いていたのですが、その後減り続けて現状にいたります。

その原因は複合的です。

もともと学芸大附属高校は、複数の付属中学からの生徒に加えて高校入試で生徒を集めます。付属中学からの進学率は5割程度です。まずここで熾烈な競争が生まれます。中学受験で学芸大附属の中学に進学しても、そこからすぐに塾通いが始まるのです。

さらに、高校受験できる国立としての希少性がありました。しかし、都立高校の復権や都立中高一貫校の増加により、その優位性は失われます。そもそも中高一貫教育でないというのがウィークポイントとなってしまいます。また、10年ほど前に起きたいじめ問題とその対応も問題だったようです。優秀な生徒が敬遠し、二次募集や繰り上げ合格を行ったこともブランドイメージを棄損しました。

中学受験の側から見ると、やはり6年間一貫教育でないことが奨めにくい最大の理由でしたね。

「学芸大学付属中を志望するのですね。あそこは中高一貫教育ではないのですよ」

「ええ。うちの子は高校受験があるくらいのほうが遊ばなくていいのです」

こんなかんじでした。それでも学費の安さは得難い魅力だったのですが、それなら公立中高一貫校に流れるのは仕方がないのでしょう。