
「A塾はB中学とつながっているらしい」
「C中学の入試のときに塾名を書かされた。それで有利(不利)になる」
そんな噂を聞いたことがあります。
今回はこうした話題です。
塾と私立中学の関係
結論からいいます。
全くの無関係です。
ちょっと考えれば、いや考えなくてもわかることです。
学校にとって特定の塾と繋がることには何のメリットもないのです。
それなのに、こうしたデマが登場する背景について説明します。
デマの背景
(1)学校から塾への営業
私立中学も生徒募集に苦戦する時代となりました。定員割れとなる学校もみかけます。募集定員が1学年200名なのに、合格者数が2桁の学校もありますね。複数クラスどころか、1クラスも運営できないレベルの学校もあります。こうした中学の多くは、入試制度で迷走します。なかには「随時」という学校や、「ダンス入試」と言う学校もありました。
生徒を確保するためには、多くの受験生に受験してもらわなければはじまりません。そして、中学受験生のほぼすべてが塾に通っています。進路相談も塾が主体です。そこで、塾に営業に行く。自然な発想です。なかには、とても先生とは思えないほど「営業トーク」が巧みな先生もいます。
海外の某塾に仕事でお邪魔した際、都内の女子校の先生が営業に来ていたのに遭遇したことがあります。「こんなところまで!」と驚きました。
しかし、いくら営業にいらっしゃっても、それだけで学校の評価が上がるはずもありません。せいぜい、「直接先生から話を聞いた」情報を保護者に伝えることができる程度ですね。
また、せっかくいらしても「逆効果」の場合もあります。
ある大学付属校の校長先生と教頭先生が訪ねてきたときのこと。いろいろお話をうかがい、最後にこう聞いてみました。
「御校が一番大切にしている理念やアピールポイントは何でしょう? それを保護者にお伝えしたいので」
そうすると、二人は顔を見合わせてしばらく黙ってしまいました。そして校長先生がこう答えられたのです。
「〇〇大学に進学できる、ということでしょうか」
生徒に積極的に薦める気がなくなりました。
(2)塾主宰の学校説明会
いかにも塾と学校が結託している印象がありますね。
しかしこれも違います。学校としては、たんにアピールできる機会が欲しいだけで、そこの利害が一致しているだけです。もちろん金銭も動きません。
せいぜい美味しいお弁当を用意することがある程度、と聞いています。
もっとも、某塾が仕掛けた、「〇〇中学海外講演会」は別物です。
飛行機はビジネスクラス、ホテルは一流、そうした費用を全額塾が負担しました。塾にとってみれば、「あの〇〇中学の先生を海外まで呼ぶことができるほどの塾なんですよ」アピール、さらには「〇〇中学とうちは実は関係が深い」とミスリードを誘えますのでメリットは大きいのでしょう。しかし、そんな思惑にのる学校はあまりにも浅はかです。行くなら自腹を切らないとだめでしょう。そこが「超えてはならない一線」です。
(3)アンケートでの塾名記載
私立学校の見学会などで塾名を書かされることがあります。「どうして?」と思うでしょうけれど、これはただの営業のための情報集めにすぎません、。学校側が「どの塾の生徒が自校に興味を持っているか」を分析し、今後の塾回り(営業)に活かすためのマーケティング目的なのです。
(4)高校受験の「確約」
埼玉県では、「北辰テスト」とよばれる、民間業者の主催するテストが、もう70年以上にわたって実質的に埼玉県中学生の学力判定テストとしてスタンダードの地位を確立しています。
そこで、このテストの成績を、私立高校の秋の個別相談会に持参します。成績が基準を満たしていれば「確約」となるのです。もちろん「確約」という言葉は一切使われません。「安心して受験してください」「大変良い成績ですね」などと言われるのだとか。
これは実質的な「合格の内定」に相当します。
当然塾も「どの偏差値でどの学校の確約が取れるか」の最新データを握っていますので、生徒の進路指導に反映させます。
この話を最初に知ったときには、目が点になりましたね。受験というシステムは残酷なシステムです。点数で合否という運命が分かれるのですから。ただ、それをみんなが受け入れる絶対条件は、「公平さ」が担保されることにあります。それが崩れる制度ですね。
このほかにも、高校入試では「事前相談」とよばれるものもあり、中学校の先生と高校の先生が相談して実質上の内定となるのだとか。
公平な中学受験のなんと潔く公平であることか、あらためて感じます。
(5)塾推薦ルート
これも高校入試の話です。公式ではありませんが、そうやら裏ルートがあるようですね。一部の高校、一部の塾に限った話ですが。内容は上述した「事前相談」と同様です。
これは中学受験には存在しません。
ただし、こんな例外的なケースはありました。
中学受験全日程が終了したころ、定員割れした私立中学から塾に泣きついてくる連絡が入ることがあるのです。塾の成績表を持ってきてくれれば、入試免除で合格させるという連絡です。
もちろん、こうした情報を保護者に伝えることもしませんし、実際に利用した人も私の知る限りいません。そんな学校に進学する価値は無いからです。
まあもしかして私の知らないところでは、こうした制度に救われた子もいたのかもしれません。
もっともこれは癒着でもなんでもないですね。
営業に力をいれる学校
昔から、塾に対する営業に力を入れる私立中学は存在しました。塾教師向け説明会に行くと、美味しいお弁当に加えてお車代まで配る学校もあるのです。
しかし、黙っていても生徒が集まる「良い」学校は決してそんなことはしません。
生徒募集に苦戦するからこその「営業重視」姿勢です。
したがって、私としてはそうした「営業」熱心な学校に対する評価を下げざるを得ないのです。力をいれるところはそこじゃないだろう! と思うからです。
生徒の育成に全力を注ぎ、そのことをきちんと情報として開示する。
そうした学校をこそ評価したいと思います。
蛇足
まれに、「私は〇〇中学に顔がききますから」といった、学校との距離の近さをアピールする塾・教師があると聞きます。だいたいが零細塾・個人塾です。
これは、良くて勘違い、悪くて詐欺です。
そんなことを聞いた瞬間、転塾の一択ですね。