元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

この時期の風物詩、東大高校別ランキングを見て考えること

毎年この時期になると、「東大合格者数高校別ランキング」の類が、週刊誌やネットニュースを賑わせます。「東大ばかりが大学じゃない」とは思うものの、やはり気になるランキングです。とくに私のように、中高一貫校の中学受験の最前線に長年いる立場からすれば、なおさらです。

今回は、そんなランキングを見ながら、あれこれ考えてみます。

※あくまでも私個人の私見にすぎません。特定の学校を持ち上げるつもりも貶める意図も一切ありません。

 

ベスト20

1~20位

まずは単純に並べてみましょう。

手作業で入力していたので、学校名・数字にミスがあるかもしれませんがご容赦ください。

また、学校の規模=生徒数は考慮していません。卒業生人数が158名の筑駒と、668名の開智を同列に論じるのは無謀ですが、そこは目をつぶるとして。

さらに、現役生と浪人生を区別はしていません。そこを分けると公立高校が不利すぎる点と、「たとえ浪人してでも東大を目指す」生徒が多い学校は評価したかったからです。卒業した浪人生の実績を無視するのは理不尽だという思いもあります。

 

まず目立つのは開成ですね。相変わらず、というより一段とすごい数字です。全盛期の都立日比谷高校が1964年にたたき出した数字がたしか193名くらいでしたから、それを上回りました。私のおぼろげな記憶では、開成が200名越えだった年も過去に何度かあったはず。205名が最高値だったように思います。

いずれにしてもすごい数字です。こうして東大合格者の人数が多いことは学校にどんな影響をもたらすかわかりますか。

生徒の中で「東大を目指す」ということが、別にスペシャルなことではなく当たり前になること、ライバル(というより仲間)が大勢いること、さらに学校教師にもそれを支えるのが当然という雰囲気が醸成されること、こうしたことが大きいのです。難関校ほどそうですが、特に「君たちは東大を目指せ!」などと学校が煽るような下品な指導はしません。それでも自然に目指す生徒が多くなるのですね。

このリストの中にも、あえてどの学校かは言いませんが、「目指せ東大!」と学校が前のめりになっている学校がいくつかありますね。

また、東大進学後もその影響は残ります。東大に限らず、大学生活は情報収集がカギを握るのはご存じのとおりです。単位がとりやすい講座と取りにくい講座、科目選択の注意点、試験情報、サークル情報等々、多くの「表には出てこない」情報は貴重です。しかし、多くの同級生が東大に進学する学校では、別に無理に情報を取りに行かなくても、自然とネットワークに情報が流れてきます。さらに、中学受験のときの塾仲間(塾友)がたくさんいたりもするのです。

ある時、私の教えていたクラスから、それぞれ別の進学校に進学した生徒たちが4名ほど、「東大のキャンパスで待ち合わせて遊びにきたよ」と晩御飯をご馳走になりに現れたことがあります。桜蔭・駒東・麻布・鴎友とそれぞれ進学先は違いましたが、中高時代からSNSでつながっていて、東大でも仲良くしているのだとか。

それに比べて、同級生が全くいない環境で東大に進学した子たちは、情報過疎化に陥るかもしれません。「UTFR」という、非進学校出身の東大生が作った団体まであるのだそうですね。

 

リストに戻ります。

日比谷の復権も確実になりました。昨年よりはだいぶ減らしましたが、ベスト10にしっかり残っています。ご存じのように、俗に「日比谷つぶし」といわれた学校群制度の影響で、一時期は東大合格者がたった1名まで落ち込みましたが、その後時間をかけてやっとここまで復活しました。

同じく公立の、横浜翠嵐と湘南高校も立派です。日比谷にしても横浜翠嵐にしても、各公立中学の本当にトップの子だけが集います。日比谷高校では、評定平均が5.0が基準だとまで言われています。

こうした公立高校からも東大にこれだけ入れるとなると、こうした誤解が生じます。

「別に中学受験なんかしなくても、公立中学から日比谷高校に行けば、東大に行けるのだったら、無理して小学生のときからあんなに勉強する必要なんてないよね。コスパが悪すぎるよ」

これは完全に間違っています。

公立中学から日比谷高校に進学できるのは、中学校でも1名いるかいないか、といったレベルです。この子たちは、おそらく中学受験をしても相当な難関中学に合格できた子たちです。そもそも小学生のときに勉強しないで遊んでいた子ではありません。

やはり小学生のときからきちんとした学習をしてきた子たちが、そのまま公立中学でトップを維持し、さらに努力を重ねて日比谷高校に進学しているのですね。

 

このリストの中には、中学受験では最高難度の人気校なのに、東大実績はそこまですごくないという印象の学校もあります。人気と実力が若干乖離ぎみなのか、それとも東大に価値を見出していない生徒が多いのでしょうか。

 

いつもながら、桜蔭はすごいですね。事実上、一都三県の女子の最上位層を集めています。そのうえさらに鉄緑会への通塾率も高い。もっとも、私見では、桜蔭の上位層は相変わらずですが、桜蔭の真ん中・下位レベルの学力はそこまで高くはないという印象を私は持っています。もう何年も前から、ボーダーラインは女子学院の方が高いと思っています。桜蔭は、上位層の活躍が目立ちますが、そこだけ見ていると進学してから苦労するかもしれません。

 

麻布は相変わらずですね。戦後東大ベスト10から一度も外れたことのない唯一の学校です。自由放任で遊ぶ子も多い印象の学校ですが、きっちりと大学進学は決めてくるのでしょう。しかしこの学校も、突出した上位層にばかり目を向けてはいけません。学校側が東大に向けた進路指導などしない学校ですので、自分で自分を律することができないといけません。

 

この中では早稲田中学が異色です。

早稲田中学は、早稲田大学の係属校ですので、およそ半数が推薦で早稲田大学に進学します。つまりこの東大実績は、残り半数の生徒がたたき出した数字です。

早稲田大学推薦の道と、国公立大学進学の道が併存している学校です。人気もうなずけますね。

 

次回は、21位以降の学校を見てみましょう。