
塾にとって教材はいわば生命線です。塾を選ぶ際にも教材についてもっと注目すべきなのです。
1.完全オリジナルテキストの塾
教材の開発には多大な労力がかかります。
そもそも教材を作るスキルを持つ教師が少ないのです。そうした教師を総動員して、手分けして教材を作るのは物凄く大変です。
さらに著作権の問題があります。ちょっとした写真1枚使うにも費用が発生します。
例えば金閣の写真をテキストに入れるとすると、そうした写真を有料で販売している業者から買う必要があります。
「自分で撮影すればタダだよね?」と思われるでしょうけれど、そうはいきません。
金閣寺(臨済宗相国寺派)に事前申請を行い、媒体の性質(教育目的の参考書か、商業広告かなど)、出版部数、期間に応じて規定の冥加金を納める必要があるのです。この費用が1点あたり数万円かかります。「金閣は世界の遺産なのだから、写真くらい好きに使わせてよ」と思いますが、そうはいかないのです。
国語になると、本の著者に支払う著作権料がなかなかの金額です。なかには「塾には私の本は使わせない!」という作家もいますし、多額な著作権料を要求する団体もあるのです。
さらに、教材のレイアウトは専門家にまかせる必要がありますし、ファクトチェックや法的な対応を行う専門家も必要です。もちろん校正もプロの仕事です。
これらの対応をクリアしつつ、「クオリティの高いオリジナル教材」を作るのですから、相当な体力のある塾でないと無理なのはお判りいただけると思います。
私の知る限り、完全オリジナルの教材のみで授業を行っている塾は、SAPIX・日能研・四谷大塚の3つだけですね。関西の浜学園もそうだと聞きますが、実際の教材を見たことがないのでコメントできません。グノーブルについても、SAPIXのDNAを受け継いでいるとすればオリジナル教材を開発して使用しているのでしょうけれど、こちらも未確認のためコメントはできません。
こうしたオリジナル教材がなぜ優れているのかの理由は簡単です。最適だと考えたカリキュラムに即した、最適な教材体系で授業を行えるからです。
私も教科責任者時代には、「自分たちが最も使いやすく、生徒が最も目を輝かせ、合格につながる」ことを考えて教材体系を作りました。
もっともその仕事量は、控えめに言って「地獄」です。過労死基準が裸足で逃げ出すレベルでした。
こうした教材づくりにきちんとコストをかける塾は信頼できます。
私が集団指導塾でおすすめするとしたら、この3塾になります。
2.オリジナル補助教材
メインの教材は他の塾が開発したものを流用し、補助的な教材だけ自作する、そうした塾です。
四谷大塚の提携塾に多いスタイルですね。早稲田アカデミーはその典型です。
四谷大塚の「予習シリーズ」という教材は、完成度も高く、補助教材も充実していて、テスト体系ともリンクしています。カリキュラムも考えずに四谷大塚のものに乗っかればよいので、全国の中小塾がこぞって採用するのも道理です。
この予習シリーズとその補助教材だけで、十分な教材量があるのですが、そこに「〇〇中特訓」といった学校別対策の教材を追加したり、「〇〇マスター」といった反復トレーニング的な教材を追加するのですね。
教材開発の地獄を知っている私からすれば、他人の苦労の成果だけをかすめとる姑息な塾に思えるのですが、それは私の偏見です。四谷大塚は、この「予習シリーズ」商売で成り立っている塾なのです。それに、下手な教材を作られるよりは、予習シリーズを採用してもらったほうがはるかに安心できるのは確かです。
3.塾向け教材
需要あれば供給あり。自前で教材を作れない塾のために、塾向け教材を作っている会社がいくつかあるのです。
◆『中学受験新演習』シリーズ・・・株式会社エデュケーショナルネットワーク(栄光ゼミナールなどを擁するZ会グループ)
これも『予習シリーズ』に次ぐ勢力です。もともとは「栄光ゼミナール」の内部教材をベースに外販用にブラッシュアップされた体系です。またこの教材の進度に完全連動した塾向け模試「アタックテスト」(開発:同社)が提供されているので、教材とテストをセットで導入する中小塾が日本中に多数存在します。
◆ 『新小学問題集(中学入試編)』シリーズ・・・教育開発出版株式会社
この会社は塾ではなく、塾向け教材屋です。通称「新小問」とよばれる教材を採用している塾、私立小学校は多いですね。
このほかにも「適性検査対策」に特化した『ピラミッド』などの姉妹シリーズも広く塾へ提供されています。
◆『実力錬成テキスト(中学入試)』 / 『シリウス21(小学・中学受験編)』・・・株式会社育伸社
この会社の教材も塾では有名です。とくにどこかの塾の色もないので、地元系個人塾・零細塾が多く採用しています。
セットで模試もあります。
実はSAPIXも、塾向け教材を作っていますが、一般に目にする機会はありませんので、ここではとりあげません。
4.オリジナルプリント
小規模塾、個人指導塾の中には、先生オリジナルのプリントで授業をすすめるところもありますね。授業で多忙な中、生徒のためにプリント作成に時間を費やす先生には頭が下がります。
ただしこうしたオリジナルプリントには問題があるのです。
まず、クオリティの問題です。どんなに気を使って作ってもミスはつきものです。また独りよがりのリスクもあります。
そのあたりが気にならず、その先生の指導法に心酔している場合はよいでしょう。
しかしもう一つの問題の方が深刻です。それは、著作権の問題です。他人の著作物の引用、ネットで拾ってきた資料や写真の転載、自分の持っている本のコピー。そうしたものを使っている先生も多いのです。
もしお通いの塾の先生がそうしたプリントを配っているようなら、転塾の一択です。遵法精神のない人間に子どもの指導はまかせたくはないですから。