
中学受験の世界では、この世界だけで通用している用語というものがいくつかあります。例えば「御三家」なんてその典型ですね。いったいいつ頃誰が使い始めたのは定かではないのですが、都立高校が悪名高い「学校群制度」により衰退した1960年代以降に、開成・麻布・武蔵の3校が「男子御三家」と呼ばれるようになったようです。それに引きずられるようにして桜蔭・女子学院・雙葉の3校が「女子御三家」、さらに「栄光・聖光・浅野」が神奈川男子御三家、フェリス・横浜共立・横浜雙葉の3校が「神奈川女子御三家」と呼ばれ始めたようです。いかにもどこかの塾屋・受験産業が使いそうな用語です。
今回はそうした特殊用語のうち、「サンデーショック」を取り上げます。
サンデーショックとは?
2月1日の東京・神奈川の入試解禁日が日曜にあたることを「今年はサンデーショックの年だ」などと言います。
ミッション系の女子校のいくつかが、日曜に入試がぶつかる年には、次の月曜日に入試日をずらすからなのですね。
最もわかりやすいのは、女子学院でしょう。女子学院といえば、桜蔭と並び立つ人気・実力校で最難関校の一つです。首都圏女子受験生の最上位層が目指す学校の一つなのです。桜蔭と女子学院。校風がだいぶ異なりますので、その志望者は重なりません。そうした人気校の2校の入試日は、どちらも2月1日と昔から決まっています。(あとは雙葉も2月1日です)
ところが、2月1日が日曜に重なると、女子学院は入試日を月曜にずらすのです。これが「サンデーショック」です。桜蔭・女子学院のダブル受験&ダブル合格が可能となる、まさに受験生や塾にとっては夢のような合格パターンが可能となるのですね。
それなら「ショック」と呼ぶ必要はないではないですか。「ラッキーサンデー」とでも名付ければよいのに、何が「ショック」なのでしょう。
これは、受験産業にとって「ショック」なのです。積み上げてきた受験パターンと合否のデータが意味をなさなくなるからです。受験指導が難しくなるのですね。
しかも、この状況は、5年~11年毎にやってきます。少なくとも20年以上は受験指導をしていなければ、指導する塾側にだって経験値が蓄積しないのです。「これは大変だ!」「まさにショックだ!}ということで、「サンデーショック」という呼び名が使われるようになったのでしょう。
しかも、この用語は塾にとっても好都合です。「お子さんが受験する3年後はサンデーショックですから!」「来年はサンデーショックなので!」と連呼することで、保護者の不安を掻き立てることができるのです。
嫌な書き方をしてしまいました。塾は、保護者の不安を掻き立てることで売り上げにつながる産業構造であることは否定できません。もし全ての受験生の保護者が冷静かつ的確な判断をするようになると、生徒減・売上減は免れませんので。
(本当は塾なんか行かなくても受験・合格は可能です。拙著をぜひお読みください)
サンデーショックの実態
1987/1998/2004/2009/2015/2026/2032/2037
現在小6の生徒が受験する2026年が「サンデーショック」ですね。そして次の2032年に受験するお子さんは現在幼稚園の年長です。さらに次のサンデーショックは今年生まれた子が受験するときでしょうか。

四谷大塚偏差値で50以上の主な学校をあげてみます。色がついているのがミッション系の学校です。そのうち、2026年入試では、青背景で表示した学校が2日に入試をずらします。
推測ですが、複数回入試を実施している学校、とくに2日にも入試を実施している学校は入試日がずらせなかったのでしょうね。全ての入試日を弄るとなると学校にとっても歩留まり(合格者に対する実際の入学者人数)がまったく読めなくなりますので、追加合格・補欠繰り上げ合格はあまり大量に出すと世間から批判を浴びますし、教育機関としては望ましいやり方とはいえません。
昔とは違う受験事情
かつては、ほとんどの学校が「一回入試」でした。その場合は、サンデーショックが文字通り衝撃波となって、様々な学校に影響を及ぼしたのです。
しかし、今や複数回入試は当たり前、午後入試も普通になりました。
そうなると、別にいくつかの学校が受験日をずらしたからといって、その影響が及びにくくなっているのです。
つまり、本当の意味で「ショック」となるのは、1日のみの1回入試を行っている学校と、その学校の併願校として、2日に1回だけ入試を行っていた学校なのです。
それに該当する学校は、女子学院と立教女学院だけです。また、桜蔭・雙葉・フェリス等はその影響を受けるでしょう。影響を受けそうな2日校としては、豊島岡や洗足がありますが、どちらも複数回入試校です。白百合くらいでしょうか。
言ってしまえば、その程度の「ショック」です。
そもそも受験は一生に一年だけ
ごく当たり前のことですが、受験生にとって受験するのは1年だけのことです。前年がどうだとか、普段の年度はこうだったとか、そんな受験事情は関係ありません。
「私が受験する2026年は、1日に桜蔭、2日に女子学院が受験日となっている」
ただこれだけなのです。
その受験日程に合わせて受験戦略を組み立てるだけのことですね。
浪人があり得る大学入試とは事情が異なるのです。自分の受験する年度のことだけを考えればよい。そう割り切ると、ずいぶんすっきりとするとは思いませんか?
くれぐれも塾・受験産業のいう「サンデーショック」という語句に踊らされないようにしてください。
