中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】塾の夏期講習、思い切って休むのは「あり」ですか?

そろそろ塾の夏期講習の申し込み時期になりましたね。

しかし、やり残した教材が山積みです。

夏期講習、本当に出ないと駄目なのかな?

今回はこの疑問にお答えします。

塾の夏期講習日程

いくつかの塾の夏期講習日程をHPから拾ってみました。

【SAPIX】

◆夏期講習 6年生・・・16日間(226000円)

13:30~19:30(100分授業×3コマプラス小テスト30分×2コマ)

算国が18コマずつ、理社が9コマずつとなっています。理社が隔日ということなのでしょう。

カリキュラムはこうです。

算数  
01 数の性質(1)
02 和と差に関する問題
03 割合(1)
04 平面図形(1)
05 速さ(1)
06 規則性
07 場合の数(1)
08 平面図形(2)
09 立体図形
10 数の性質(2)
11 割合(2)
12 速さ(2)
13 図形の移動
14 平面図形(3)
15 推理と論証
16 文章題総合
17 場合の数(2)
18 表とグラフ

国語
01 説明文
02 物語文
03 随筆文
04 物語文
05 説明文
06 詩など
07 物語文
08 説明文
09 随筆文
10 物語文
11 論説文
12 随筆文
13 物語文
14 論説文
15 随筆文
16 物語文
17 詩など
18 論説文

理科
01 森林と食物連鎖
02 気体の発生
03 星総合
04 月総合
05 力学(1)
06 電気回路
07 中和と水溶液
08 光総合〜凸レンズ〜
09 力学(2)

社会
01 地理総合問題演習(1)
~日本の国土~
02 地理総合問題演習(2)
~日本の第一次産業~
03 地理総合問題演習(3)
~日本の第二次産業~
04 地理総合問題演習(4)
~日本の交通と貿易~
05 歴史総合問題演習(1)
旧石器時代~平安時代
06 歴史総合問題演習(2)
鎌倉時代~安土桃山時代
07 歴史総合問題演習(3)
江戸時代~明治時代
08 歴史総合問題演習(4)
大正時代~現代
09 公民総合問題演習

 

6年生のこの時期は、もうカリキュラムなどなく、総合入試問題演習かと思ったら、一応細かくカリキュラムが作られています。

 

受験学年で18日間は少し少ない気もしますが、このほかに「夏期集中志望校錬成特訓」という講座が別にありました。

こちらは全5日間、13:30~19:30、80分×4コマプラス小テスト40分となっています。

料金は72600円です。

 

時間帯も同じなのだから、23日間の夏期講習としてもいいと思うのですが、何かの思惑があるのでしょう。

 

【日能研】

14:00~20:35(70分×5コマ×24日)

国算各36回、理社各24回 計120回 テスト4回

199650円とあります

カリキュラムは見当たりませんでしたが、まあこの時期はどこの塾も大差ないでしょう。

・総合復習

・問題演習

この2つですね、きっと。

 

【四谷大塚】

◆夏期講習・・・ 197450円

400分×16日間プラステスト2日

◆8月特訓授業・・・8日間 79750円

400分×8日

 

まあ予想通り、日程も料金も横並びです。

350分~400分程度の授業・テストを24日間程度実施する、ということのようです。

 

塾の思惑

実は、この夏期講習は、塾にとっての思惑は以下のようなものがあるのです。

(1)利益をあげる

 まあそういってしまっては身も蓋もありませんが、事実です。普段の授業は、小学校が終わった後の4時間程度を週3回程度、あとは土日くらいしかありませんが、夏休みは毎日塾に来てもらえますので。ここで収益を確保しないと。

(2)学力を上げる

 もちろん、これだっておろそかにするはずもありません。現場の教師はこのことしか考えていないでしょう、たぶん。小学校がない分、塾でがっつりと指導ができる貴重な機会です。

(3)生徒を獲得する

 6年生ではなく、5年生以下の場合です。夏期講習から初めて塾に通う子もいます。また、転塾を検討して夏期講習を申し込む生徒もいます。これらの生徒達に「良い」授業を見せることで、今後の入室につなげようという思惑です。

(4)合格実績を獲得する

 6年生の夏期に、妙に積極的な集客をしている塾は、このケースでしょうね。たとえばライバル塾の日程の隙間に巧妙に「〇〇特訓」のような講座を設定するとか。本来なら、この時期の外部生の混入はノイズでしかありません。それまで1年も2年も継続して指導してきた生徒の最後の追い込みに加速をかける時期ですので。

 

夏期講習は有効か?

 夏期講習は有効か否かと問われれば、もちろん答はYESです。

夏の間に家にいたところで、夏期講習を受けるのに匹敵する質と量をこなすのは難しいでしょう。

 しかも、塾にまかせておけば「安心」です。きっと鍛えてくれているはずです。

しかし、必ずしも「有効」とはいえない事情もあるのです。

とくに6年生の場合です。

 

6年生の夏期には、実はやらねばならない大事なことがあります。

過去問を解くことです。

◆受験予定校の過去問

 もし5校予定しているのなら、5校×5年分で25本は解く必要があります。

◆多くの学校の過去問

 今年の入試問題を、多様な学校のものを解かなくてはなりません。これも最低でも25本くらい。

 

これらを合わせて、50本は受験までに解く必要があります。

もちろん解きっぱなしというわけにはいきません。解いたあとには、必ず丁寧な答え合わせと間違い直しが必要です。

1.入試問題を時間を測って解く・・・午前中

2.答えあわせと間違い直しをやる

3.わからなかったところを解消し、弱点を補強する

 

もし、夏期講習中にこれら全てを塾でやってくれるとすると、良心的な塾だと思います。

しかし、1つ問題があるのです。

問題を解かせている時間に、高額な授業料を払っていただけないという問題です。

しかも、教材もカリキュラムも、地味?なため、アピール力に欠けます。

そこで、どの塾も、復習教材をつくり、「授業」をやるのです。

 

つまり、夏期講習に参加してしまうと、大切な過去問演習の時間がなくなるのです。

夏期講習のテキストだって、授業中に全部消化できないでしょう。家へ持ち帰る「宿題」が出されるはずです。それだけで手一杯になることが十分に予想できます。

 

ただし、非常に優秀で、夏期講習の授業内容くらいならその場で吸収し、家へ何一つ課題を持ち帰らなくて済む生徒なら、その限りではありません。

しかし、そのレベルの生徒に、この夏期講習は必要ですか?

 

5年生までの夏期講習で、カリキュラムが先に進むような内容なら、ぜひ参加しましょう。しかし、6年生の夏期講習については、受講するかどうかは冷静に判断してもよいと思います。

 

いっそのこと、夏期講習を休むという判断もありだと思うのです。

 

さすがに、塾には相談できないでしょう。お子さんの様子を把握しているご家庭でこそ判断しなくてはなりません。

 

ただし、この場合は、親子できちんと予定をたてて、時間を無駄にしない学習をしなくてはなりませんね。