おそらくどの塾でも、今社会科では公民分野を学んでいることでしょう。
どうも、生徒にとって公民分野はよくわからない=点がとれない分野のようです。
そして、親(あるいは教師)にとっても、教えづらい分野のようなのですね。
今回は、今一度、公民分野の勉強法について考えてみたいと思います。
公民の難しさ
実は、以前、こうした記事を書いたのです。
そこでは、公民分野を学ぶコツとして、このようにまとめました。
(1)民主主義を徹底的に理解する
(2)日本国憲法を学ぶ
(3)政治のしくみについて学ぶ
(4)現代社会の問題について理解する
王道ですね。
しかし、どうやら言葉がまだまだ足りなかったようです。
「すでにそうして学んでいるのに、得意にならない」
「新聞記事について話題に出すようにしているのに効果がない」
「子どもは全く興味を持ってくれない」
こうした声を何人かの保護者からいただきました。
公民の難しさとして、前回の記事では、「用語の難しさ」について指摘しましたが、実は他にもあるのです。
それは、「細かく区切って教えられない」という点です。
地理なら、「第一次産業」「第二次産業」「貿易」といった具合に、ジャンルごとに区切って少しずつ学ぶことができます。「中部地方」「関東地方」といったように、地域ごとに区切るのもよいですね。
歴史なら、「鎌倉時代」「江戸時代」といったように、時代ごとに区切って順番に少しずつ学んでいきます。
地理・歴史は、このようにして、子どもの理解のペースに合わせて、少しずつ知識を指導していくことができるのです。
しかし、公民分野はそうはいきません。
基本的人権について教えるときには、日本国憲法の規定ばかりか、ドイツのワイマール憲法も教えなくてはなりませんし、フランス人権宣言についても触れる必要があります。朝日訴訟や家永教科書裁判についても教えなくてはなりません。
そもそも訴訟・裁判はまだ教えていませんから、司法制度についても指導します。ということは、裁判員制度についても必須ですね。国会の仕組みについて教えるときには、選挙制度についても教えますし、アメリカの大統領選挙についても指導します。ということは、日本の議員内閣制について指導する必要がありますし、内閣不信任案が可決した例を説明するということは、55年体制とその崩壊についても説明が必要です。
国連について教えるときには、PKO協力法の成立の混乱について教えますが、そのためには湾岸戦争について講義しなくてはなりません。
きりがないからこれくらいで止めますが、もうおわかりでしょうか。
公民分野というのは、あらゆる知識が切れ目なく複雑に融合している分野なのです。公民分野ばかりでなく、歴史分野にも密接にかかわっています。
つまり、細かく分野ごとに区切って、少しずつ説明し理解させていくことがほぼ不可能なのです。
これが公民分野を指導する・学ぶ際の障害となるのです。
また、「用語丸暗記」が通用しません。
「公共の福祉」という語句を暗記したところで、それだけでは使い物になりません。「死票」「シルバー民主主義」「憲法9条」を語句として暗記しただけではだめなのですね。
完璧な理解が伴わないと、使える知識とならないのです。
それなのに、入試では得点の分かれ目となるような問題が出されます。おそらく、入試問題を作成する学校の社会科の先生が、日頃授業をしている中学生たちが公民分野が弱いからなのでしょうか、気合の入った問題=難しい問題を出題する傾向にあると思います。記述も多いです。
「日本国憲法制定直後の内閣の国会答弁と、1950年代後半の内閣の国会答弁を読んで、自衛隊と憲法の関係について、どうして内閣の意見が変わったのか説明せよ」といった記述問題が普通に出題されます。ちなみにこの問題は女子校の出題です。
どうしたらいい?
さて、ここからが対策編です。
最善なのは、公民指導に長けた教師に習うことです。
これに勝る方法はありません。
生徒がどこでつまずくのか、どこが理解できないのか、どのように説明すればわかってもらえるのか、そうしたことを熟知していて、さらに豊富な事例を紹介しながら、「生きた」公民の授業ができる教師に習えれば、きっと公民分野が好きで得意になることでしょう。
しかし、残念ながら、そうした教師は多くはありません。この分野は、教師にとっても指導のハードルが高いのです。
そこで、次善の策を考えることにします。
(1)中学校の公民の教科書を手に入れる
出版社はどこのものでもかまいません。と言いたいところですが、癖の強すぎるものもありますので注意しましょう。
東京都の採択数のランキングでは、
①東京書籍 25地区
②教育出版 13地区
②帝国書院 13地区
となっていましたので、この3社のものから選ぶのが無難です。
(2)公民資料集を手に入れる
中学生用の公民資料集を1冊買いましょう。
これも各種出版社のものがありますので、書店で手に取って気に入ったものを買えば良いと思います。
例えば、帝国書院からは、「アドバンス 中学公民資料」というものが出版されています。
帝国書院は地図に強みを持つ出版社ですね。小学校・中学校・高校で使う地図帳は、全てこの出版社のものです。
※注意
公民資料集の多くは、「高校生用」、つまり大学受験用です。くれぐれもそれを買わないようにしてください。
(3)教科書ワークを手に入れる
購入した出版社に準拠したワークを手に入れましょう。
あとは教科書を少しずつ、親子で読み進めます。時折資料集を参照するとよいですね。そして、ワークの演習をやらせます。
中学校教科書は、中学受験をせずに、小学校の勉強だけで中学生になった子どもを対象として、そうした子たちにも何とか理解させる目的で編纂されています。
これが、中学受験をする子供たちの学びにちょうどよいのです。
写真や資料も豊富ですし、塾の教材よりもはるかに優れています。
そして、簡単なワーク・ドリルで知識を定着させていきます。
これだけで、中学入試に必要十分な学びが得られると思います。
ちなみに、これを親子でやると、親にとっても勉強になります。
おすすめです。