
教え子にも何人もいるのです。
せっかく憧れの志望校に進学したのに、途中で学校に行けなくなる子が。
今回はそうした話題です。
(私は児童心理や脳科学の専門家でも何でもありません。私が見聞きした狭い例をあげることしかできませんが、そこから何かのヒントが得られればと思っています)
たしかに不登校は増えている

このグラフは文科省の調査から作りました。中学生1000人あたりの不登校人数を示したものです。増加しているのが明らかですね。
症名(病名)が診断された場合
起立性調節障害、社会不安障害、全般性不安障害、分離不安障害、強迫性障害、身体化障害、気分変調性障害、適応障害、統合失調症、気分障害、発達障害など、不登校の原因となりうる障害はたくさんあります。
私は全くの門外漢ですので、今回の記事ではこうした症名が付く場合については触れません。
ただ、最近よく耳にするのは「起立性調節障害」ですね。
「一般社団法人 起立性調節障害改善協会」のHPにセルフチェックリストがあげられていましたので、紹介します。3つ以上もしくは強い症状が2つ以上当てはまり、ほかの病気が見られないときは起立性調節障害の可能性があるのだそうです。
☑立ちくらみやめまいを起こしやすい
☑朝なかなか起きられない(午前中は調子が悪い)
☑立ち上がったときに、気持ちが悪くなったり気を失ったりする
☑少し動いただけで動悸・息切れがする
☑入浴時や、嫌なことを見聞きしたときに気持ちが悪くなる
☑食欲不振がある
☑倦怠感がある、もしくは疲れやすい
☑頭痛がある
☑顔色が青白い
☑ときどき腹痛を訴えている
☑乗り物酔いしやすい
思春期に多い症状で、軽症を含めると中学生の1割が該当するというデータも見かけました。
とくに朝起きられずに学校に行けない子は、従来は「ただのさぼり」と見なされがちでしたが、そうではない可能性もあるということなのですね。こうしてきちんと原因がわかり医学的な対処が判明することは良いことだと思います。
無理しても学校に行かせる時代から、無理はさせない時代へと変化してきたのです。
勉強以外に夢中になることができてしまった場合
これは私にも思い当たるふしがあります。私の場合は読書でしたが。中高生のころはよく勉強しに図書館に通ったのですが、それがいけませんでした。禁酒中の人が居酒屋で勉強しているようなもので(例えが悪くてすいません)、私にとって麻薬に等しい誘惑の源である本に囲まれた環境で集中して勉強できるはずがありません。図書館の蔵書を読みつくす勢いで読書にふけってしまったものです。今にして思えば、あの頃の大量の読書体験が現在の私の仕事にも役立っているのですから、無駄にはならなかったのですが、試験の成績には明らかにマイナスでした。
さて、今時の中高生が、勉強以外に夢中になっていることは何でしょうか。
・ゲーム
・動画視聴(YouTube等)
・音楽を聴く
・SNS
・漫画を読む
・アニメを見る
・推し活
・ファッション
・バンド活動
・部活
・ショッピング
・カラオケ
・スポーツをやる
・スポーツを見る
卒業生たちに聞くと、こんなものがあがりました。まあ予想通りです。
男女により、また通う学校や環境により違いはあるものの、今も昔も中高生が夢中になることは大きく変わってはいません。ただし、動画視聴やSNSは最近の風潮です。YouTubeが日本でのサービスを開始したのは2007年ですし、LINEは2011年からです。
また、ゲームについては、任天堂がファミコンを販売開始したのは1983年と古いですが、スマホでゲームをするようになるのはずっと後ですね。2010年にはスマホ普及率はわずか4%でしたが、それが5割を超えたのは2015年です。
つまり、YouTubeもゲームもSNSも、すべてスマホがその中心にあり、その風潮はわずか10年前から本格化したのですね。
時代は変化するとはいえ、急激な変化は軋轢を生じます。
不登校の大きな原因の一つが、この軋轢にあると思っています。
早い話が、スマホが原因の一つです。
お子さんのスマホの利用状況を、iPhoneならスクリーンタイム、androidならファミリーリンクで監視しているはずです。それを1週間、丁寧にチェックしてみてください。
こども家庭庁の2025年の調査によると、スマホの平均使用時間は、小学生(10歳以上)は3時間54分、中学生は5時間24分、高校生は6時間44分だそうです。
これが「平均」だというから驚きです。
「いや、アプリで勉強したり宿題の知識を調べたりしているし」というのはただの言い訳です。その大半の時間は「趣味・娯楽」に費やされているというデータもあります。
どうやったらスマホに6時間もしがみついていられるのか不思議ですが、おそらくは夕食後、自室に籠っている間なのでしょうね。中には食事中にもスマホの画面から目を離さない子もいますが。
私が先日レストランで見かけた子もそうでした。ちょっとした「良い」レストランで、隣のテーブルには家族が座っていたのですが、下の小学生の男子はずっとスマホでゲームを、上の中学生の女子はスマホで動画やSNSに夢中のようでした。いっさいの会話がない不思議な食事風景です。いったい何のためにレストランに来たのか謎でしたね。
これだけスマホ中毒になると、明らかに睡眠時間が不足します。それは朝起きられない道理です。しかも、勉強時間も不足しますので成績も下がります。学校の授業についていけなければ、ますます学校から足が遠ざかるでしょう。
自分の能力を過信していた場合
私立中高、とくに難関中高だけに見られる傾向です。
中学受験のときには「優等生」だったのです。そうでなければ合格できません。そうして「成功体験」を持って進学したため、地道な努力をしないのですね。定期試験間際の一夜漬けでなんとでもなるのですから、毎日コツコツと勉強する習慣は身につかないのです。しかし、やがてそれでは通用しなくなる時が訪れます。しかし「私はできる」というプライドが邪魔をして、先生を頼ることができません。気が付けば、赤点の常連となり、進級も危うい、そうした状態になってしまいます。
これでは学校が楽しいはずはありません。おのずから足が遠のくというものです。
退学して(正確には落第させられる前に退学して)海外に留学する子もいましたね。
また、ある子は、積極的不登校でした。つまり、適度に学校をさぼっていたのです。「学校の授業なんかまじめに受ける必要はないよね」という、青臭い理由でしょう。それでも難関進学校で上位の成績だったことに慢心したのか、体育祭・文化祭と八面六臂の大活躍で中高生活をエンジョイしまくった結果、大学受験には失敗しました。「大学受験は、半年もあれば俺なら何とかできる」と思った結果です。
学校が合わなかった場合
校風が合わないことが原因の場合もあるかもしれませんが、これは明らかに事前のリサーチ不足が問題だったのです。例えば、厳格なカトリック校に進学してから、「宗教の押し付けが嫌だ」と言われたところで、学校側には何の対応もできません。私学は独自の教育理念を持って運営していますので、その理念を理解してから入学するのが大前提だからです。
ただし、生徒間の関係までは、事前に把握することはできません。賢い子が多い学校ほど「いじめ」のようなくだらないことに情熱を傾ける子は少ないとはいうもののゼロではないでしょう。また「いじめ」までいかないとしても、思春期ですから、少しの人間関係の軋轢で学校に行けなくなってしまう場合もあると思います。
とある女子生徒は、先輩・後輩の上下関係の厳しい部活に入ってしまったことで、学校にまで行けなくなってしまいました。「そんな小さなことで」と思うのは大人だからです。本人にとっては重大なことなのですね。
どうしたらいいのか
私ができるアドバイスは3つだけです。
スマホの使用を制限すること
こればかりは親が強権発動すべき場面だと思います。監視アプリで使用時間をチェックするのは常識として、夜はリビングの充電台に置くというルールくらいは定めるべきでしょう。もちろんタブレットもベッドルームに持ち込ませることは厳禁です。
親子の会話を増やすこと
さまざまな悩み事をなんでも親に相談できる環境はとても大切です。家庭が安住の地であるべきなのです。
勉強すること
極論すれば、学校に行かなくても勉強は可能です。勉強不足が不登校の原因になるのはそもそもおかしいのです。
かりに留年することになろうと、留学することになろうと、退学して通信制高校に行くことになろうと、勉強は必要です。逆にいうと、やるべき勉強さえしっかりとしていれば、環境がどう変わろうと未来を切り開くことはできるのです。