
保護者、とくに父親と面談をしていると、たまにこうした方がいらっしゃるのです。
「先生、うちの子は〇〇中と△△学園しか受けません。他の学校の入試問題をやらせないでください!」
「うちの子の受ける学校の入試傾向はこうなっています。だから他の勉強は一切やらせるつもりはありません!」
お父様自ら、わが子の受験校の入試問題を詳細に分析し、傾向と対策を立てている。素晴らしい努力です。しかし、無駄で、かつ危険な努力なのです。
中学入試の意味
そもそも、なぜ私立中学は入試を行うのでしょう?
「そんなの当たり前だろ!」と怒る前に、根本から考えてみてほしいのです。
例えば、200名募集定員のところ、1000人が出願しました。倍率5倍です。
1000人の応募者からどのように200名を選んだらよいのでしょうか。
それより、そもそもこの学校ではどのような200名が欲しいのでしょう?
◆6年間、学費を支払い続けてくれる生徒
◆6年間、学校の方針に従って言うことを聞いてくれる生徒
◆6年間、他の生徒に迷惑をかけない生徒
◆6年間、事件・犯罪に巻き込まれない中高生らしい生活を送れる生徒
まずこの4つが基本でしょう。
当たり前すぎるほど当たり前ですが、最も重要です。
例えば、イジメが原因で3回小学校を転校している生徒はどうでしょうか。まあ公立小学校の場合は考えづらい(転校できない)ので、私立小学校とします。
本当にイジメがあったのかもしれません。いや、あったのでしょう。しかし、3回も転校しているという事実を、中学校はどのように判断すればよいでしょう。
「もしかしてこの生徒自身に問題があるのでは?」
「もしかして、この親に問題があるのでは?」
このように考えてしまうかもしれませんね。
例えば、ブロガー・ユーチューバーが親だったらどうでしょうか。子どもの小学校の様子や塾の様子を詳細にブログにあげているような保護者です。いわば子どものプライバシーを切り売りしているのですね。この場合、子ども本人に限定された情報公開とすることは不可能です。どうしても周囲の友人や学校教師の言動がネットにさらされることになります。学校としては、最も受け入れたくない生徒ですね。
例えば、親が反社の疑いがあったり、あるいは腕に派手な入れ墨があったらどうでしょう。そうした親の子どもが真面目で良い子である可能性は否定しませんが、学校はリスクをとりたくないですね。
例えば、入学する前から、学校に対して個人的な要望ばかりつきつけてくる御家庭はどうでしょう。もちろん、しごく真っ当な要望なら別です。しかし、あきらかに家庭の我儘としか考えられないような要望ばかりだと、「このご家庭はわが校の方針に従う気は全くないのだな」と判断されると思います。
◆6年間勉強をしてくれる生徒
◆6年間きちんと通学してくれる生徒
これも当たり前すぎるほど当たり前です。
学校は「勉強をするところ」「勉強を教えるところ」です。
その基本が揺らぐような生徒は、学校としても入学させたくはありません。
思春期のことですから、不登校の生徒がいることは学校もよく承知しています。しかし、それが「意図的」なさぼりの場合は、話は別ですね。
◆学校の指導についてこられる学力の生徒
◆大学実績につながる生徒
私立ですので、学校が考えている教育水準というものがあります。そこについてこられるレベルの生徒でないと、学校としても授業が成立しません。
大学実績については、おそらくほとんどの私立の本音でしょうけれど、それを表に出すのか、出さないのか、ここに学校に品性が表れると思います。
どんな大学であっても、その生徒が真剣に努力し、未来の希望を託して進学するのなら学校はそれを応援する、これが基本のはずですね。
しかし、一部には、国公立・医学部・有名私立の進学実績ばかりにこだわり、その他の生徒たちの実績が「なかったこと」にされているような、教育者を語る資格のない学校も存在します。
◆学校の校風を理解して、教育方針に共感して努力できる生徒
私立ですから、特色のある教育が実践されています。例えば英語教育を考えても、文法中心の古典的な英語指導の学校もあれば、英会話に力を入れたコミュニケーション重視の学校もあります。プレゼンに力をいれる学校もあれば、多読を推奨する学校もあります。英検級をとらせることに燃える学校もありますね。
こうした教育方針をきちんと理解し、共感し、そして努力できるレベルの生徒を求めているのです。
どう選ぶのか?
学校としても、本当なら、ペーパーテストだけではなく、面接や口頭試問、あるいは行動観察や親の面接、こうしたことを丁寧にじっくりとやりたいと思います。
しかし非現実的です。
そこで、1回のペーパーテストで選び出すしかありません。
◆基礎的な学力はあるのか?
◆記述力は備わっているのか?
◆思考力はあるのか?
◆集中して問題に取り組めるのか?
学校によって重視する項目は異なりますが、ペーパーテストでこうした力を測ることができます。
さらに、小学校時代の努力値を測ることもできるのです。
学校が欲しくない生徒とは?
前述したような項目をクリアしていない生徒が、「学校が欲しない生徒」ということになるのでしょう。
さらに付け加えると、このような生徒も嫌われるでしょうね。
◆カンニングをする生徒
こんな生徒を受け入れたい学校は皆無です。だって、他人の努力の成果を盗む生徒ですから。
◆小手先のテクニックだけの生徒
入試がペーパーテストで実施される以上、対策はあります。そして学校は毎年同じような傾向で出題するため、そこを詳細に分析することで、効率よく合格点を獲ることも可能かもしれません。
その学校に憧れて、学校の過去問を一生懸命勉強してきた。こうした生徒なら歓迎です。
しかし、その学校に出そうな問題だけやってきた、そうした生徒は歓迎したくありません。なぜなら、本当の学力が、テストの得点以下であることが予想されるからです。
そこで、各学校は、二つの対策をとります。
◆傾向を変えてみる
◆記述問題を増やす
さすがにガラリと傾向を一新するのは難しいですね。正当な努力をしている生徒まで弾かれてしまいますので。
しかし、少しだけ傾向を替えるのはよく見られます。
例えば、国語で毎年論説文と随筆を出題していた学校が、小説を出題するとか。
いつもは現代史をほとんど出題しない学校が出題してみるとか。
そんなのでうろたえるような生徒は、学校としては「いらない」生徒です。
また、記述問題は、小手先のテクニックが通用しません。ここで生徒の実力をきちんと見ることができるのです。
対策を立てないのが対策
実は、私のような「受験産業」がいけないのです。
「〇〇中はこういう傾向です。当塾ではそれに沿った指導をします!」
「〇〇中対策特訓講座をとりましょう!」
「〇〇中はここだけやっておけば受かりますよ」
さも偉そうに、学校の傾向と対策を語る塾のなんと多いことか。
私に言わせれば、「戯言」ですね。
きちんとした学力をつけることだけが重要だと思います。