元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

作文と記述の違いを理解して、記述力をつけよう

記述問題が苦手な生徒が多いですね。いや、全員が苦手です。

とくに社会科記述。たった1行程度の簡単な記述なのに、後回しにして結局空欄のままという生徒がとても多いのです。100字レベルの記述になるともう手に負えません。最初から試合放棄で、鉛筆を置いてぼんやりしていて私に怒られる生徒も多数です。

いったい彼らはどうして記述が苦手なのでしょうか。

答は簡単です。やり方を知らないからなのです。

作文と記述は別物

小学校の「書く」指導は、作文と読書感想文になります。作文は、いわば「独り言」のような文章ですので、何か個性的なネタを書くと高評価となります。本当はそれではいけないのですが、ありきたりなことを普通に書くよりも評価されるのです。とくに、そこに「自分はこう思った」といった心情を入れることを求められます。

例えば、夏休みに親戚の家に行って従妹と遊んだことを書いたとしましょう。そのまま提出すると、必ずこう赤が入ります。

「そのとき君がどう感じたのかを書くようにしましょう」

読書感想文も曲者です。作文以上に書きづらさを感じる小学生が多いのです。

「だって、たいしておもしろい本じゃなかったんだもの。でもまさかそうは書けないから、おもしろかったです、って書くしかないじゃないか。でもそれでは1行で終わっちゃうよね。だから、あらすじを長く書いてごまかすんだ」

そこで、稚拙なあらすじ紹介の最後にちょこっと感想めいたことを書いてあるだけ、そうした読書感想文が量産されるのです。

これらの「作文」をいくら書いたところで、記述力は身に付きません。この両者は、全くの別物だと考えるべきなのです。

 

作文は自己の成長

本記事の目的は「記述」を深堀りすることにあるのですが、その前に少しだけ、「作文」

について書いておきます。

小学校で課される作文には共通したテーマがあるのです。

それは、「自己の成長」です。

内容は何でもよいのです。ポイントは、そうした「体験」から、何を学び、どう成長したのか、それについて書くことにあります。

したがって、そこから逆算してネタを選ぶことになります。学びや成長につなげやすいネタを選び、それを最初に書いていく、そうした書き方が「王道」となるのです。

こう聞くと、何だか「いやらしい」やり方のように思われるかもしれませんが、それこそが求められている作文なのですから仕方がありません。子供らしいピュアな心情を素直に書くことを求められているように見えて、実は違うのです。

 

記述は推理ゲーム

記述には、出題者の求めている「解答」が存在します。その模範解答をいかに推理するのか、そうした推理ゲームだと考えましょう。

模範解答は、定番の記述問題のようなわかりやすいものから、何を書いてもよさそうに思えるわかりづらいものまでさまざまです。

 

だいぶ昔になりますが、麻布中の社会科記述でこうした問題がありました。

地名の変遷がテーマでした。

ご存じのように、歴史的な地名が次々と「合理的」な地名へと変更されています。市町村合併もそれに拍車をかけましたね。

そうした「歴史的な地名」が失われて便利になっていくことについて、賛成か反対か、理由とともに書く、そうした記述問題だったのです。

麻布らしく、問題は6000字程度の長文を読んでからの記述になります。

解答は2通りに分かれるように思えますね。難読字の多い古い地名では、書きづらく読みづらく人に伝えづらいという問題があります。宅配便だって届きづらそうです。住居表示など生活に密着するのですから、合理的になるべきだという考えもあります。一方で、地名には歴史があります。昔から今へとつながる歴史的遺産でもあるのです。だから、たとえ不便でも残すべきだ、そうした考えもありますね。

どちらを書いても、それがその生徒の意見なら良いと思われるかもしれませんが、この問題には明らかに模範解答が存在します。

もちろんそれは、「歴史的な地名を大切にしよう」です。

問題を作っているのは社会科の先生です。社会の教師というものは、歴史が大好きな人種です。古い地名を大切にしたいに決まっているではないですか。

つまりこの問題は、そういった方向性で書くべき問題だったのです。

もっとも、懐の深い麻布のことですから、反対意見を書いたとしても、その論陣の張り方を評価してくれるはずですが。

 

記述にはもう一つの大切な特徴があるのですが、それは次回にまわしましょう。

 

☆4月から、あたらしい指導体制をスタートします。

HPも新規公開しますので、お楽しみに!

 

ところで、記述についての実践的指導について本を書いています。ぜひお読みください。