元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

記述指導の難しさとおもしろさ 最適解を求めて

みなさんは、「共テ」と聞いて違和感を覚えませんか?「それはセンター試験だよね」と。

1979~89に実施された「大学共通第1次学力試験」がこうしたテストのスタートです。

1990~2020が「大学入試センター試験」

2021以降が「大学入学共通テスト」です。

いったい名称を変えることにどれほどの意味があるのか私にはよくわかりませんが、思考力や判断力を重視するようになった、とのことです。

ちなみに私は共通一次世代です。

AO入試から統合型選抜へ

みなさんは、「統合型選抜世代」(私が勝手に命名しました)でしょうか。

たしか統合型選抜試験が始まったのは、1990年、慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)が最初でした。当時はAO入試と呼ばれていたものです。 アメリカのAdmissions Officeによる選抜方式をまねたというよりは、日本独自の選抜方法といったほうがよいですね。

やがて2000年には国立大学で採用がはじまり、2021年から「統合型選抜」と名称が変わりました。

このほかにも学校推薦型・自己推薦型等も加わり、入試制度もずいぶん複雑化しました。ただ、いずれにしても何かの「論文」的な文章を書かされる場合がほとんどです。

 

私がおもに指導する中学受験生でもそれは同様です。

従来は、記述問題を多く出題する学校は限られていました。

麻布中を筆頭に、武蔵・栄光・海城・芝・鴎友といったところがすぐに思い浮かびます。もちろん、それ以外にも短めの記述を出す学校はそれこそ無数にあるのです。

これは、国語ではなくて社会科の話です。

ところが、公立中高一貫校の「適性検査」が始まると状況は変化しました。

適性検査はご存じかと思いますが、いわゆる「学力テスト」が出せない(公立のため)学校が苦肉の策として始めた入試スタイルと私は認識しています。私立中学入試のように、小学校の学習範囲を無視して高校入試レベルの知識を出題するわけにはいかないのです。入学試験ではなく「適性検査」というネーミングにも表れていますね。

しかし、小学校の学習範囲からのみ試験を作ることは難しい、というより無理なのです。易しすぎて満点が続出してしまいますから。

そこで、いわゆるPISA型とよばれる、思考力・記述力を問うスタイルの「適性検査」が出されることになりました。公立中高一貫校との併願先を狙って、一部の私立でも「適性検査型」の問題を出す学校も増えました。

この適性検査問題、よく見ると実はとても難しいのです。暗記型の勉強しかしてこなかった受験生は苦戦することでしょう。

今のところ、適性検査対策を標榜する塾でも、過去問演習を通じた演習で乗り切っているように思われます。

しかし、論理的な思考力と記述力をきちんと身に着ける指導をすれば、麻布のような高度な記述問題から、適性検査問題まで、クリアすることはできると思っています。

 

必須の技能となる記述力

小中高と、まともな論述指導を受けてこなかった高校生が、大学入試の論文を書くのはまず無理でしょう。多くの難関私立中高では、論文指導もしているようですが、そもそもそこに進学しなければはじまりません。

 

つまり、論述指導のスタートは、小学生のときに始める必要があるのです。

ここできちんとした記述力を身に着けれられれば、その先へとつながるのです。

 

小学生の教養と記述力が高まる授業

 

私は多くの受験生を指導してきましたが、やはり一番面白いのは、記述の指導ですね。ただ知識を覚えさせる授業よりも、楽しいのです。もちろん小学生の書く文章はそれはひどいものです。しかし、着想に見るべきものがある生徒もたまにいるのです。

 

ある時、少子高齢化の授業をしているときでした。

黒板には、高齢化の割合の計算式を書きました。

 

高齢化率=(65歳以上の人口)/人口 ×100

 

そして、

高齢化率 7%以上・・・高齢化社会

    14%以上・・・高齢社会

    21%以上・・・超高齢社会

こう教えます。日本は、7%に到達したのが1970年でした。そしてそれから24年後の1994年に14%に達し、21%を超えたのが2010年です。2025年には29.4%にもなっているのはご存じのとおりです。

すでに世界第一位の高齢大国といってもよいでしょう。もっとも日本より上には、高齢化率が36%というモナコがあるのですが、モナコの場合の事情はちょっと特殊です。質の高い医療や豊かな生活水準のために長命なのに加えて、高齢な富裕層の移住が多いのです。人口が3.6万人程度ですから、すぐに高齢化率に反映するのですね。

そう考えると、実質的な高齢化率トップは日本とみてよいでしょう。

これは本来悪いことではないはずです。ただし、日本の場合には、その高齢化の加速ぶりが問題なのです。

実は、日本よりも早く「高齢化社会」に突入したのは、欧米でした。

イギリスが1929年、ドイツが1932年、アメリカが1942年、スウェーデンが1887年、フランスが1864年に、高齢化率が7%を超えて「高齢化社会」に突入しているのです。

しかしそこから先の経緯が日本とは異なります。これらの国が、7%から14%に達するのに要した年数は以下の通りです。

ドイツ:40年

イギリス:46年

アメリカ:72年

スウェーデン:85年

フランス:115年

日本の24年と比べると、その変化のスピードがまるで違うことがわかりますね。

つまり日本の高齢化の問題とは、「高齢化」が問題なのではなく、「高齢化にいたるスピードが速すぎる」ことが問題なのです。そのため社会体制の変革がまるで間に合っていません。加速する高齢化に社会が追い付いていけない、それこそが問題なのです。

 

さて、この時の授業では、上述のような現状を教えたあと、「それでは高齢化にそなえてどのような対策をすればよいのだろうか」という課題を提示したのです。

 

私の授業では、たとえどんな考えでも発言することを推奨しています。

今回の課題については、私の予想では、「老人ホームをたくさん作る」「病院を増やす」といったものが多いだろうというものでした。

さらに、「老後の生活をエンジョイできるような施設や制度があればよい」というところまで出てくればよしとしよう、と考えていたのです。

「老人とそれ以外を区別するのではなく、社会の一員として当たり前に過ごせる社会を目指す」まで書ければ褒めてげるつもりでした。

 

残念ながら、その日の授業では、「老人ホーム」レベルの解答しか出てこなかったのです。しかし、いつもは元気に発言するA君が、妙に静かでした。やがて何か思いついた顔でA君が手を挙げたのです。

A君:先生、俺わかっちゃった。

私:そうか。何がわかったのかな?

A君:みんなわかってないよなあ(そういって他の生徒を見る)。答えは黒板に書いてあるじゃないか。(そういって黒板の高齢化率の式を指す)

一同:?

A君:だって、高齢化が問題なんだろ? だったら解決策は二つしかないよね。まず一つは、分母を増やす。

私:なるほど。人口を増やせばいいんだね。たしかにその通りだ。

A君:でも、人口を増やすのは難しい。子供を産みなさいっていうわけにもいかないし、外国から来てもらうのも難しいよね。だったらもう一つの解決策しかないじゃないか。

私:まさか・・・。

A君:分子を減らせばいいんだよ。解決策はこれしかないって。

 

子どもは残酷ですね。いきなりそんなことをいいはじめたので教室は騒乱状態です。A君はすっかり悪魔よばわりです。

しかし、これはある意味真実でもあるのです。

老人ホームをたくさん作ればいいという発想だって、お年寄りを目の前から消し去ることで解決するという意味ですから、A君の悪魔の発想と根本は変わりません。

1986年に政府が考案した「シルバーコロンビア計画」というものがありました。高齢者の海外移住を積極的に進める計画でしたが、「海外姥捨て山」と猛批判を浴びて頓挫したことを思い出します。

 

その日の授業は、A君の発想をきっかけとして、高齢化問題の根本について討論する実り多いものになったことを今でも覚えています。

 

こういう討論があるから、記述指導は面白いのです。

難しいですけれどね。

 

今日からスタートする新講座について

 

このような指導、塾の枠組みの中ではなかなかできません。

そこで、私が思うような指導ができる体制を作ることにしたのです。

 

本日より、LWSーLocical Writing Schoolは新たな講座体制をスタートします。

(この後は、私の塾の宣伝になりますのでご了承ください。)

 

自己紹介

あらためまして、自己紹介いたします。

私はSAPIX小学部という塾で、35年にわたって中学受験の最前線に立ち続けてきました。

SAPIX創成期より社会科の教科責任者として、カリキュラム・全テキストを制作し、テストも多数作ってきました。現在のSAPIXの躍進は私の手柄、と勝手に自負しています。

また、各校舎の室長以外にも、海外帰国生の受け入れ部門や、環境教育部門、中高一貫校生対象部門、さらには海外大学進学支援の部門等、さまざまな部門を統括してまいりました。詳細はHPをご覧いただくとして、まあ一言でいえば何でも屋のようなものです。

おかげさまで、中学受験はもちろんのこと、大学受験・帰国生受験・中高一貫校生の指導等、教育にまつわることには詳しくなりました。SAPIXの講師研修部門も統括していましたので、講師の指導育成についても力を入れていましたね。

しかし、あくまでも私の本分は、「生徒の指導」にあると思っています。

どんなに業務が忙しくなろうとも、授業から離れようとは思いませんでした。

授業は楽しいですから。

 

講座概要

 さて、今日からスタートする講座の概要を説明します。

 

(1)添削指導講座

 名前のとおり、シンプルな添削指導です。論理的な記述指導のやり方については、結局のところは古典的な添削指導が最も効果が上がります。

 内容は、中学受験のための添削指導と、大学受験レベルの添削指導に分かれています。

 

(2)個別指導

 これも単純に、個別指導をオンラインにて実施します。本来は対面での個別指導を実施したいのですが、そのためには教室まで通う時間が必要になります。当ブログでも再三指摘してきたように、その時間が無駄になるのです。

とくに中学受験生には時間がありません。小学校から帰ってからのわずかの時間で、ものすごい量の勉強をこなさなくてはならないからです。

オンライン指導には、そのタイムロスがありません。対面指導に比べたデメリットを補って余りあるメリットだと思います。

 

(3)麻布対策ディベート講座

 これも文字通り、「麻布社会科記述」に焦点を合わせた講座です。

麻布を志望する皆さんは、すでに麻布中の社会科の入試問題をごらんになったことと思います。大人でも考え込むようなあの記述、お子さんに書けると思いますか?

しかし、私の目からは、あの記述問題が「理想的」な入試問題に見えるのです。

社会的な課題について、さまざまな角度から考察できる思考力、そしてそれを記述できる論理記述力。これらを見てくれる入試問題です。

けれども、これが難しい。

そもそも、子供たちは社会的な問題について深く考えたことなどないのですから。

そこで、この講座では、私が以前からやりたかった「理想的」な授業を実践しようと思っています。

それは、麻布をめざす生徒たちをごく少人数集めて、互いに意見をぶつけ合いながら討論し、そしてそれを記述に落とし込み、その場で私がそれを指摘し、また皆で意見を出し合う、そうした授業です。

これも、オンラインで実施します。

理由は前述のとおり、時間が節約できるからです。

 

麻布中の社会科の先生方の思いに迫る講座を目指しています。

 

これらの講座にご興味のあるかたは、ホームページをぜひご覧ください。

 

https://lws.peter-lws.net


lws.peter-lws.net