渋谷教育学園渋谷中高と広尾学園、この両校って共通項が多いと思うのです。
そこで今回はこの2校をあれこれ比較してみます。
※どちらの学校も持ち上げる意図も貶める意図もありません。そもそも教え子もずいぶん通っていますので。
渋谷教育学園 渋谷中学高等学校 、何とも校名が長いので、この記事では「渋谷渋谷」という名称で表記させてください。
沿革
【渋谷渋谷】
この学校の沿革については、公式HPには無いので、あちこち調べてまとめてみました。したがって正確かどうかは不明で恐縮です。
1924 中央女学校開校
1934 渋谷商業実践女学校に改称
1943 愛泉女学校・東洋家政女学校を統合して、渋谷女子商業学校に改称
1946 渋谷高等女学校に改称し、渋谷中学校を開校
1948 渋谷高等学校を開校
1963 高等学校を渋谷女子高等学校に改称
1996 渋谷中学高等学校が開校
2001 渋谷女子校高等学校閉校
簡単にいうと、それまであった「渋谷女子」という学校を、1996年に共学校にリニューアルした、ということですね。
【広尾学園】
1918年 順心女学校設立(校長・下田歌子)
1947年 順心中学校設置
1948年 順心女子高等学校設置
1951年 学校法人順心女子学園成立
2007年 広尾学園中学校・高等学校に改称し、共学化
広尾学園も、もともと広尾の地にあった「順心女子」を2007年に共学化した学校です。
つまり、渋谷渋谷は29年前、広尾学園は18年前にできた新しい学校である、とそいうことになります。
大学実績
両校の東大・早慶の合格者数をまとめてみました。
卒業生数は渋谷渋谷のほうが広尾の75%くらいの人数であることも考え合わせると、さすがに渋谷渋谷の実績のほうがはるかに上ですね。早慶では互角に近いですが、東大実績が違います。
偏差値で4(1日午前比較)ほど開きがある学校ですので、仕方がないのかもしれません。
また、広尾学園は入試を細分化していますので、どうしても偏差値が高目にでる傾向があります。実際の両校の偏差値の差は4ではないだろうというのが私の感触です。
試験日について
両校は複数回入試を行っています。
募集人数と合格者数をまとめました。
広尾学園は、入試結果を公表していないので、合格者は見込み数となっています。
複数回入試は、受験生にとっては非常にありがたいのですが、塾屋泣かせでもあります。受験生の合否の見込みが立ちにくいからです。
それでも、「最も多く合格者を出す入試回」が、その学校のメインの入試日であると考えると、渋谷渋谷は2月2日の午前、広尾学園は2月1日の午後が、学校もメインと設定している受験日とみなせるでしょう。
2月1日の午前には、多くの学校の受験が重なります。そのほとんどが、「第一志望」として受験する生徒ばかりです。
両校は、あえてメインの試験日・回をずらすことで、そうした優秀な生徒が受けやすくしている、と考えられますね。
これは、「併願校」戦略です。
2月1日には、男子なら開成・麻布・武蔵・駒東・慶應普通部・早大学院・早稲田実業
(共学)といった学校が並んでいますね。女子なら、桜蔭・女子学院・雙葉といった学校です。
新規開校する学校が、2月1日に1回だけの入試日を設定することは勇気がいります。上述したような学校とまともに競合しますので。
渋谷渋谷開校当時には、共学の進学校が、神奈川の桐蔭くらいで都内にはほとんどありませんでしたので、それは大きなセールスポイントでした。渋谷幕張の成功も追い風です。ただし、それだけで、開成・麻布・桜蔭・女子学院の受験生を奪うことができるかどうか。
そこで2日にメイン試験日を設定したのでしょう。2日だったら、ライバルと呼べるのは、聖光・栄光・慶應湘南藤沢・白百合・豊島岡くらいしかありませんので。そういえば豊島岡も複数回入試で、2月2日が第一回目の入試日です。同じ戦略なのでしょう。
実にうまい戦略です。
いくら渋谷幕張の人気を受けての開校だとしても、さすがに新しくできた学校にわが子を預けるのには勇気がいりますね。でも、1日に第一志望校を受けて、押さえとしての2日の受験なら、と考える人たちも一定数いると思われます。
結果として、1日の第一志望校の受験に失敗した生徒達が入学してくることになります。こうして優秀層を集めることができるのですね。
こういう書き方をすると、学校側は嫌でしょうね。でも入試日設定が全てを物語っています。
出願者と受験者数を見てみます。
1回、2回、3回、帰国、それぞれの人数です。
受験者数/出願者数 で表記しました。
357/385 、748/854 、659/846 、158/174
これを見ると、渋谷渋谷を第一志望とする受験生は、そうでない受験生の半分以下であることが見て取れます。第一志望なら1日に受験するはずですので。
もっとも、こうして試験日を巧妙に設定しただけでは、学校は伸びません。優秀な生徒達を満足させ伸ばす教育ができなければやがて失速するでしょう。
渋谷渋谷はそこにも成功したのでしょう。
さて、広尾学園はさらにあからさまですね。
広尾という都心の立地を生かして、2月1日の午後受験で最も多くの受験生を集め、最も多くの合格者を出していますので。
さらに2月2にも午後のみ入試として、次に多くの合格者を出しています。
完全に、午前に他の学校を受験した「優秀な」層を集めることに注力しています。
また、帰国生入試の合格者人数の多さも目立ちますね。広尾学園の海外大学の合格実績は彼らが担っていると考えるべきでしょう。
その学校を本当に好きで熱望している生徒を受け入れたいのか、それとも大学実績に寄与してくれる優秀な生徒を優先したいのか。
学校によって考え方は様々なのでしょう。
個人的な感触では、渋谷渋谷については、10年ほど前から、第一志望とする生徒が多くなりました。開成・桜蔭・麻布・女子学院といった学校に合格できるレベルの生徒が渋谷渋谷を志望するのですね。共学の進学校に進みたい場合、他に選択肢は無いという事情もありますが、学校を気に入って第一志望にする生徒が増えました。
広尾学園については、私の教えている子達の中で、第一志望とする生徒はまだそう多くはありません。本当に優秀な生徒が志望するようになるのには、まだ時間がかかるのでしょう。
立地・環境
この両校は都心の学校です。校地も最低限以下というべきでしょう。
そのかわり、アクセスも良いですし、必要十分な施設をコンパクトにまとめてありますので、使い勝手は悪くなさそうです。
渋谷と広尾の立地は、あきらかに広尾に軍配があがりますね。
広尾近辺も、本当に高級なエリアは坂を上った麻布のほうですが、広尾学園周辺も、大使館や聖心女子大に加え、広尾ガーデンヒルズがあり、私のような庶民には無縁な地域です。もっとも広尾商店街は昔ながらの雰囲気を残していますし、庶民的な飲食店もあるのが便利です。
広尾駅から学校まではほんのすぐですし、通学環境はとても良いですね。広尾駅一路線利用なのは災害時に不利ですが、恵比寿まで歩けない距離でもありません。
渋谷という立地は、正直中高生にふさわしい街とはいえません。ただし魅力と誘惑に満ちてはいますので、生徒達の意見は異なるのかな。渋谷周辺には多くの学校が集まっていますので、学生にとって利用しやすい街だともいえるでしょう。
ただし、渋谷の中でも、渋谷渋谷が立地する環境は悪くはありません。少なくとも、新宿や池袋に比べればはるかに良いと思います。