
今回は、受験の世界から離れた話題です。
ウィーンの美術館にて
ウィーンの「美術史美術館」は、ウィーンの中心部、ホーフブルク王宮の後ろにあります。古代のギリシャ・ローマの時代から、19世紀バロックにいたる、ハプスブルク王朝の栄華を物語る収集品の数々が展示されています。
ヨーロッパの美術館はどこもそうですが、絢爛たる建物内に一歩足を踏み入れただけで圧倒されます。

絵画・美術に全く造詣の深くない私ですら、陶然とするような作品の数々が飾られているのです。
しかもこの美術館、さほど混雑していません。パリのルーブルのように、入場するだけで長蛇の列を覚悟することなく、気軽に立ち寄ることができます。
さて、この美術館で私のお目当てといえば、16世紀のブリューゲルの作品、「バベルの塔」でした。
114cm×155cmのサイズの絵は細密に描かれています。建設途中のバベルの塔を訪れるニムロド王とその取り巻きたちや、働くレンガ職人たちなどが詳細に描かれているのです。建設作業の細部まで執拗なまでに細かく想像を巡らせて描いたこの作品を、間近でじっくりと見ることができるのが楽しみでした。
私が見に行くと、絵のまわりには4・5名の人々が集まっていました。私も絵の正面に陣取り、じっくりと眺めることにします。みなそうして鑑賞していたのです。
その時、私を横に突き飛ばすようにして一人の女性が立ちました。驚いて見ると、アジア系の男女が、そこで記念撮影をしようとしているのですね。女性が絵にお尻を向けて立ち、それを男性が撮影するところでした。
絵の正面に立つ私がさぞかし邪魔だったのでしょうね。
写真を撮り終わるとすぐにいなくなったので、鑑賞を再開できたのは幸いでした。
そこで思い出したのが、パリのルーブル美術館に行ったときのことでした。
ルーブルも、すさまじいまでの名画の宝庫ですが、一番人気&有名な作品といえば、モナ・リザでしょうね。

他の作品は手が触れられるほどの距離に無造作に展示されているのですが、モナ・リザだけは強化ガラスの向こうに飾られています。
そしてこの人混みです。
それでも、鑑賞した人は満足すると去っていきますので、少し待つだけで、モナ・リザの顔を正面から覗き込むことができるのです。
そうしてほれぼれと鑑賞していたときのことでした。
後ろから声をかけられたのです。
「お前は邪魔だからどけ!」
という内容です。驚いて後ろを見ると、アジア系の男女が記念撮影をしようとしていました。彼とモナ・リザのツーショットを撮るのに私が邪魔だったのでしょうね。
不快だったのですぐその場を離れましたが、件のカップルは記念撮影だけをして退散したようでした。
有名作品とのツーショット撮影、意味がわかりません。
「私はバベルの塔(モナ・リザ)を見たぞ!」という証拠写真が必要なのでしょうか?
ツーショットでなくても、美術館に行くと、必ず作品を写真撮影している人を見かけます。そんなもの、収蔵品カタログを買えば、もっと詳細で美しい写真がいくらでも手にはいるのに、手振れをしたスマホ写真を集めることに何の意味があるのでしょうか?
まあ、思わず写真を撮りたくなるような作品があることはわかります。周囲に人がいないときに、つい撮影をしてしまうことは私にもあります。
しかし、日本から十数時間かけてたどり着いたウィーンの美術館で、絵の鑑賞の妨げになる行為はしたくありません。それよりじっくりと絵の世界に浸りたいじゃないですか。
鑑賞マナー
絵画の鑑賞マナーなんて難しいものではありません。
絵の世界にじっくりと浸る
ただそれだけです。
そして、他人がそうやって鑑賞している邪魔をしない。
これがマナーです。
もし混雑していたら、絵を独り占めしない、というものマナーでしょう。
ヨーロッパの美術館のほとんどに、座り心地の良い椅子が置かれているのもよいですね。もし日本にやってきたら長蛇の列必至の名画を、ゆったりと座って心行くまで鑑賞できるのが素敵です。これこそが、海外で美術館に行くことの醍醐味だと思います。
どう考えても、写真撮影はマナー違反としか思えません。
そもそも本人が絵を本当に見ているのか怪しいものですね。写真を撮るとすぐに立ち去る人ばかりですから。
もしかしてスマホの普及が、鑑賞マナーを棄損してしまったのかもしれませんね。
美術館に行くことでしかこうしたマナーは身につかないのでしょう。
だからこそ、中高生時代から、美術館に足を運んでほしいのです。