中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】三田国際学園について深堀りしてみよう

最近保護者から聞かれることが増えたのです。

「先生、三田国際ってどうなんですか?」

注目されている割にはわかりにくい学校のようですね。

そこで今回は、用賀にある共学校「三田国際学園中学校・高等学校」について深堀りしてみます。

※あくまでも私の主観にすぎません。この学校を持ち上げる意図も貶める意図もありません。一つの感想程度にお読みください。

沿革

私は学校について調べるときは、まずは沿革から見ていきます。

新しく学校を作るということは、相当なエネルギーを必要とします。

いったいどんな人が、どんな思いで作ったのか。

その思いがどのように受け継がれてきたのか。

ここを見ないと始まりませんので。

 

学校公式HPよりそのまま引用します。

 

1902(明治35)戸板関子により戸板裁縫学校が創立

1904(明治37)三田四国町へ移転(現在 学校法人戸板学園 本部の所在地)

1916(大正5)三田高等女学校を創設

1937(昭和12)三田高等女学校から戸板高等女学校に改称

1947(昭和22)新制度により戸板中学校を発足

1948(昭和23)新制度により戸板女子高等学校を発足

1993(平成5)世田谷区用賀へ校舎を移転

2015(平成27)「三田国際学園中学校」「三田国際学園高等学校」と改称し、共学化をスタート

 

戸板関子

 この方が創立者です。フェリスで英語を学び、東洋英和と東京女学館で裁縫技術を教えたとあります。この方が32歳の若さで芝公園の一角に開いたのが戸板裁縫学校です。一対一の指導が普通の裁縫に、集団指導を導入した合理化により生徒を集めました。

その後、三田高等女学校、三田博和女学校、大森南女学校、城南女学校、大森高等女学校を次々に創立します。

 

裁縫学校の位置づけ

 

現代の私たちからすると、「裁縫学校?」と少々疑問(違和感)を感じるかもしれません。

しかし、明治期には、裁縫は女子の基礎教養であり、それを教える学校が多数あったのです。

それらの学校の中には、単なる裁縫技術にとどまらず、幅広い教養であったり、女性の自立を目指す学校も出てきます。

すぐに思い浮かぶのは「豊島岡女子学園」ですね。明治25年の女子裁縫専門学校が母体です。

青山学院といえばプロテスタントの学校ですが、歴史を紐解くと「青山女子手芸学校」などという名も出てくるのです。

 

現体制の「三田国際学園」になってから、来年で10年目を迎えます。

 

教育理念

 

戸板女子時代には、「知好楽」という理念が掲げられていました。

論語の一節です。

「子曰、知之者不如好之者、好之者不如楽之者」

子曰く、「之を知る者は之を好む者に如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず」

「知っている者は好む者に及ばない。好む者は楽しむ者に及ばない」

 

孔子といえば今から2500年以上前の人ですが、たまにこうして読むと「深い」ですね。

 

HPには「理念」の項目が無く、もう捨てられてしまったのかと思いかけましたが、ちゃんとありました。

 

122年受け継がれる教育理念『知好楽』
『人生に於ける全てのことは知ることから始め、それを好きになり、最後に楽しむ境地に至ったときこそ、初めて自分のものになり、豊かなものになる』

孔子の教えに由来する『知好楽』は、122年前の創立時から受け継がれる教育理念です。創立者、戸板関子が「楽しさの中にこそ、人間の進歩がある」という思いとともに掲げたこの建学の精神は、時代が変わっても学ぶことの本質は変わらず、未来を切り拓く原動力となることを伝えています。

『知』 知識 / 技能
[あらゆる学びの入り口]
すべては知ること、知識や技能の獲得から始まります。一人ひとりの知的好奇心を刺激し、可能性を広げる多種多様な学びが、学校生活のあらゆる場面に用意されています。

『好』 応用 / 実践
[好奇心・探究心の源]
身につけた知識や技能を実際に使うことで、理解がさらに深まり、「好き」が芽生えます。この気持ちが「もっと知りたい」「自分なりに探究したい」というエネルギーの源となります。

『楽』 批判 / 創造
[自ら学び、創造する力]
「楽」は自ら道を切り拓いていくステップ。今までの “あたりまえ” や “思い込み” を見直し、自分自身に問いかけてみること。その問いを探究していく中で、自分の世界が押し広げられていく喜びが、学ぶ楽しさへとつながります。さらに、一人ひとりの豊かなオリジナリティが形づくられていく中で「伝えたい」という思いが生まれ、大いなるクリエイションの種となります。学ぶ楽しさを実感しながら、生きることを主体的に楽しみ、世界に貢献していく力が育まれていきます。

 

「知」はともかく、「好」と「楽」、とくに「楽」=「批判・創造」というのは若干こじつけにも思えますが、三田国際学園はこのように解釈しているのですね。

 

さらに、教育の3つのキーワードとして掲げられているのはこのようなものでした。

THINK & ACT・・・昨日よりも前へ、明日はさらにその先へ、より良い学びと創造のために

INTERNATIONAL・・・世界を視る眼を養う、深い思考がここから生まれる

SCIENCE・・・地球市民として、その意識と行動が、自分と世界を変えていく

 

さらに12のコンピテンシーを掲げています。

「共創」「創造性」「責任感」「リーダーシップ」「探究心」「問題解決能力」「革新性」「コミュニケーション」「異文化理解」「生産性」「率先」「社会参画」がそれです。

どれも重要なものばかりですね。

 

※英語・カタカナ語が多用されていますね。新しい学校に多く見られる傾向です。

 

大学実績

東大 2名
一橋 1名
東工大 1名
筑波大 4名
早稲田 44名
慶應 37名
上智 23名
理科大 17名
ICU 6名
明治 34名
青山学院 34名
立教 47名
中央 19名
法政 20名
医学部医学科 8名

卒業生 184名

 

なかなかの実績だと思います。

 

中学入試の現在の偏差値は、サピックス:47、日能研:57、四谷大塚:57 となっています。

同じ偏差値帯の学校としては、攻玉社巣鴨芝浦工大桐朋、法政大学、東洋英和などといった学校が並んでいます。

 

ただ、新設校ですので、この大学実績を出したのは6年前に入学した生徒達です。

 

そこで、6年前の偏差値を見てみると、サピックス:45、日能研:50、四谷大塚:50 となっていました。

 

6年間で、四谷大塚日能研の偏差値は7,サピックスは2上がったのですね。

サピックス偏差値の上昇が少ないことが気になりますが、その1・2年前には偏差値30のところに書かれていたと記憶していますので爆上がりです。おそらくは最初の数年間はサピックスからの合格者がほぼいなかったレベルだったのでしょう。

 

ちなみに、同偏差値帯の攻玉社の実績を見てみるとこのようになっています。

東大 9名
京大 2名
一橋 5名
東工大 12名
早稲田 108名
慶應 111名
上智 30名
理科大 90名
明治 129名
青山学院 34名
立教 28名
中央 52名
法政 60名

卒業生 245名

卒業生数が異なること、男子校と共学校ということで単純比較はできませんが、明らかに攻玉社のほうが実績は良いですね。

それでは、6年前の同偏差値帯の学校である世田谷学園はどうでしょう。

東大 5名
京大 1名
一橋 3名
東工大 4名
早稲田 59名
慶應 64名
上智 31名
理科大 84名
明治 91名
青山学院 23名
立教 17名
中央 46名
法政 34名
医学部医学科 25名

卒業生 約240名

 

少しだけ世田谷学園のほうがいいですが、こちらは男子校ですので。

女子校からは、6年前にサピックス偏差値42だった大妻を見てみましょう

一橋 3名
東工大 1名
筑波大 2名
早稲田 37名
慶應 27名
上智 48名
理科大 29名
明治 74名
青山学院 41名
立教 63名
中央 39名
法政 75名
ICU 1名

卒業生 273名

 

だいたい同じか、三田国際のほうが少しよいくらいでしょうか。

異なる学校、しかも共学・男子校・女子校の大学実績の単純比較はあまり意味をなさないのですが、なんとなく三田国際のレベルが見えてきたと思います。

 

現在入学してくる生徒の6年後が楽しみです。

 

★海外大学について

HPによれば、錚々たる大学に合格しています。

※数字は4年間総計です。

Princeton University 1名
University of California, Berkeley 7名
University of California, Los Angeles 3名
University of California, San Diego 11名
Cornell University 1名
University of Washington 3名
New York University 1名
University of California, Davis 5名
University of California, Irvine 9名
University of Toronto 10名
University of British Columbia 9名
University of Melbourne 1名
University of Sydney 5名
University of Western Australia 8名

 

主要大学に4年間で175名、その他を合わせて300名程度の合格とありました。

海外大学の場合は、日本の大学のようなペーパーテストで合否が決まるのではありません。いわゆるアドミッション・オフィスが書類で入学許可を出しますので、1人で10校も合格をとることも可能です。とはいえ、三田国際の海外大学実績は特筆すべき成果です。

 

実は三田国際に限らず、海外大学への合格の大半は、「帰国子女」が出していることは周知の事実です。主要大学の求める語学レベルは相当ハードルが高いからです。

◆ネイティブ同等の英語力

 例えば、事実上のスタンダードな英語力検定であるTOEFLiBTのスコアで見ると、80あれば州立大学に進学できるとされていますが、UCLAアイビーリーグで100、ハーバードやプリンストンは最低基準すら設けていないのですが、最低でも100、できれば110などと言われています。ネイティブスピーカーでも100に達するのは大変だとも聞きますね。

いわゆる「純ジャパ」と呼ばれるような、海外在住経験が無く、中学生になってから英語の学習を始めた子が6年間でここまで到達するのは困難、というより無理なレベルです。もちろんそうした子もいるでしょうけれど。

◆学業以外のアピールポイント

アメリカの大学の場合は、学業成績だけでは入学できません。何らかのアピールポイントが求められます。実は日本人の場合、ここが弱いのです。

◆高校の成績

 

これら3つを揃えないとアメリカの大学には入れません。英語だけをやっていてもダメなのです。帰国子女で、すでに中学入学時点で英検なら準1級レベルでないとなかなか難しいと思います。

 

ただし、こうしたレベルの英語力の生徒が学内にいることは、他の生徒にも良い影響をもたらします。

また、海外大学へ出願する際には、書類の準備がなかなか難しいのですが、そうしたノウハウを持つ先生が学校にいることも重要ですね。

 

入試

 

◆帰国生入試

 海外1年以上、帰国3年以内という東京都私学協会の基準にのっとっています。

インターナショナルクラス・・・英語・面接

インターナショナル・サイエンスクラス・・・英語・算数・国語・面接

 ※英検準1級orTOEFLiBTスコア72以上は英語免除

 英語試験免除レベルは、あとちょっとでアメリカの大学に出願できるレベルですね。

 

この学校の一般生の入試制度も複雑です。

 

用意されているクラスは3種類です。

◆インターナショナルクラス

◆インターナショナルサイエンスクラス

◆メディカルサイエンステクノロジークラス

 

試験科目はこうなっています。

4教科入試・・・インターナショナルサイエンスクラス/インターナショナルクラス
算数・理科入試・・・メディカルサイエンステクノロジークラス
英語・面接・・・インターナショナルクラス
英語・国語・算数・面接・・・インターナショナルサイエンスクラス
 ※英語試験免除制度あり

 

授業も英語にそうとう力を入れている様子がうかがえます。

今は多くの学校はそうとも言えますが。

 

すでに英語力がある生徒・英語力をしっかり身に着けたい生徒には向く学校であることは間違いないでしょう。

 

※注意その1

この学校に限りませんが、入試を細分化して一回の募集定員を絞っている学校は要注意です。

まず、偏差値が正しく算出されにくくなります。

普通塾は模試の四科目の点数で生徒の偏差値を算出し、その生徒たちの実際の合否結果に基づいて学校の難易度の偏差値を算出します。

入試が細分化して試験科目も多岐にわたると、難易度の偏差値が正しく出せないのです。

多くの場合は、実際よりも高めに出る場合が多いですね。

 

では、いわゆる偏差値表よりも低めと考えればよいのかというとそうでもないから厄介です。

募集定員が少ない入試は大番狂わせが起きやすいのです。

実力が上回る生徒がおもわぬ不合格となる場合が必ず起きるのです。

 

※注意その2

クラス編成や入試制度が変更されてきています。

新興校によくある話です。

実際に入試をやってみないと、どういった学力の生徒がどれくらい集まるのか、そして合格者のうちのどれくらいが入学してくれるのかについてのデータが不十分なため、調整を加えてくるのですね。

過去の事例が該当しづらく、また数年後に変更される可能性もあります。

学校説明会にまめに足を運んで情報取集することが必須です。

 

率直な感想

 

◆国際

◆共学

進学校

◆帰国生

◆新興

 

これらが今注目のキーワードであることは間違いありません。

 

いわゆる伝統校のほぼすべてが別学です。

古くからある共学校は大学付属ばかりです。

そこに、新たな選択肢が加わりました。

神奈川の桐蔭が早かったのですが、注目されたのは渋谷幕張からだと思います。

その後、渋谷渋谷、広尾学園と広がり、今では随分増えました。

 

田園都市線用賀というロケーションは悪くはありません。

二子玉川から1駅です。

用賀駅から瀬田方面は世田谷でも人気の住宅地です。

駅周辺には、繁華街と呼べるほどの通りはありませんが、ファストフードやカフェ・レストラン等は一通りそろっています。住みやすい街ですね。

学校の立地としては悪くありません。

 

私はよく、中高生が集って遊びに行くのはどの街なのかを考えます。

学校帰りに寄ったり(禁止されていなければ)、休日に集まって遊びに行ったり。

あるいは、買い物に出歩いたり映画を見に行ったりするのはどの街なのかを。

私立の生徒達は各地から学校にやってきます。集まろうとすれば、結局は学校から遠くない街に集うのです。

 

この学校の生徒達が遊びに行くとすると、おそらくは

二子玉川

②渋谷

③自由が丘

このあたりになるのでしょうね。

渋谷は若干気になりますが、どこも中高生が出歩くのに問題なさそうです。

 

ただし、田園都市線の朝の通勤ラッシュは地獄です。

そこは要注意ですね。

 

併願校としては、広尾学園・都市大等々力あたりが候補になるのでしょう。

渋谷渋谷が本命で合格可能性が高い生徒は第二志望は広尾学園という生徒が多そうですね。三田国際まで考える生徒はまだ少ないと思います。

広尾学園が本命の生徒の場合、三田国際を併願校とする生徒が多そうです。

三田国際が本命の生徒の場合、芝国際はまだ未知数すぎるので、都市大等々力あたりを併願する生徒も多いと思います。

共学校にこだわらなければ、都市大付属や駒場東邦世田谷学園、鷗友や恵泉、さらに洗足学園の名前が挙がることでしょう。

 

「三田」にないのに「三田国際」という校名も、当時は揶揄する声もあり、たしかに違和感がありましたが、数年たてばすっかり気にならなくなりました。

たとえ「用賀国際」でも問題なかったと思いますが、地名イメージが「用賀」<「三田」という判断だったのかもしれません。

 

これはこの学校に限らないのですが、帰国生入試に力を入れている学校の場合、非帰国生にとって良い環境かどうかのジャッジは必要です。

正直言って、小学生である程度の英語力を持って進学したほうがよい学校だと思っています。

また、新興校の宿命ですが、教育理念・指導方針・集まる生徒の学力・大学実績・偏差値、保護者の期待値、こういったものがしっくりとなじまないのが普通です。

この学校もまだ10年目です。初年度の入学者がまだ社会に羽ばたいていないのです。

志望するなら、何度も何度も足を運び、通っている生徒・卒業生の声を収集し、自分の目でじっくりと確かめることが重要だと思います。

 

★学校名が変わります

 

もうみなさんご存じでしょう。

来年から学校名が変わります。

学校HPのお知らせを引用します。2024,11/6に公表されました。

 三田国際学園中学校・三田国際学園高等学校は、2025年4月より更なる教育の充実と発展を目指して「三田国際科学学園中学校・三田国際科学学園高等学校」へと校名を変更いたします。

 これからも、変化が激しい時代の中を生き抜く力を培い、グローバル社会で活躍する人材の育成を目指して教育活動に邁進してまいります。

 引き続きご理解・ご支援を賜りたく、お願い申し上げます。

     学園長 大橋 清貫

「科学」の2文字が入ったのですね。

 

やっと「三田国際」の校名が浸透しつつあるこのタイミングでの校名変更の理由は正直言ってよくわかりません。

あるいは、まだ10年目だからこそ校名変更が波紋を広げないという判断かもしれません。

東工大+医科歯科→科学大のときには、OB達が相当暴れた?と聞きますので。

 

学校の説明では『「国際」+「科学」の教育をさらに充実・発展させる』ことを目的としているようですが、それで在校生は納得したのかな?

 

そういえば、最近「国際」を冠した学校が増えています。従来は「暁星国際」くらいしか思いつきませんでしたが。

 

2018 法政大学女子高等学校→法政大学国際高等学校

2022 星美学園→サレジアン国際学園中高

2023 東京女子学園→芝国際中学校・高等学校

2024 蒲田女子高等学校→羽田国際高等学校(2026中学校開校予定)

ちょっと思いついただけでもこんなにあります。ちなみにサレジアン国際の学園長も大橋 清貫氏です。複数の学校の学園長を兼任するなんて凄いですね。

 

これは私の完全な邪推にすぎませんが、もしかして「国際」の2文字だけでは差別化ができないと判断したのかもしれません。確かに新鮮さは薄れています。

 

個人的には、「科学」にふることで、「文化・芸術・文学・哲学・歴史」といった教育が軽視されることがあると嫌だなあ、と思っています。

STEM教育がもてはやされ過ぎですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらにもあれこれ書いています。

peter-lws.hateblo.jp