中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【Q&A】合格後の燃え尽き症候群を防ぐ!中学受験後の学習習慣の作り方

今回は、中学受験で燃え尽きてしまった子へのアドバイス、燃え尽きないようにするやり方について書いてみます。

燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)とは?

私はてっきり、「燃え尽き症候群」というのは医学的根拠のない俗説だとばかり思っていたのですが、そうでもないようです。

1970年代のアメリカの精神心理学者が使い始めたとありました。

医学的知見については、様々な医療機関等が発信している情報を見ていただくとして、この記事では単純に、「受験が終わった後」に見受けられる生徒の様子について考えてみるだけとします。

そもそも私は専門家でもなんでもありませんので、そんなに大仰なことを書くつもりはありません。私の知っているごく狭い範囲の子たちの顔を思い浮かべながら、多少でも参考になるかもしれないことを書いてみるだけです。

 

どんなかんじ?

◆朝起きられない

◆学校に行く気が起きない

◆家族や友達と話すのが面倒くさい

◆好きだったこともやる気が起きない

◆自己肯定感が持てない

◆夢中になれることが見つからない

◆何事にも冷めた態度になる

 

よく聞くのがこういったあたりですね。いわゆる「第二次反抗期」や、思春期特有の「背伸びしたシニカルさ」とも区別しづらいのがやっかいですね。また、起立性調節障害も最近よく聞くようになりました。

そうしたはっきりとした原因や医学的所見もないとすると、いわゆる「燃え尽きた」状態なのかもしれません。

※もちろん素人判断は危険です。深刻な場合は専門医を訪れてください。

原因

これは単純です。中学受験は、非常にわかりやすい目標設定なのです。それだけを第一優先目標として、全ての時間・生活を捧げてきました。その目標を達成してしまえば、途方に暮れるのは無理もないのです。

「合格はゴールではなくスタートだ!」

言うのは簡単ですが、子どもには理解されません。何年も準備して、ついにアフリカ大陸最高峰のキリマンジャロ(5895m)に登頂成功直後に、「次は10年後のエベレスト・K2だ!」と言われて次の日から頑張れますか?

そういえば、昨年、世界最年少の10歳(小5)でキリマンジャロに登頂した子がニュースになりました。幼い頃より家族で登山に親しみ成し遂げた成果だそうです。登山どころか上り坂すら嫌いな私はただただ感心するばかりです。

しかし、中学受験に挑んで合格していく子たちも、キリマンジャロ登頂と同等の偉業達成だと私は思っています。登山と勉強、ベクトルは全く違いますが、そこに費やしたエネルギーは同等、あるいはそれ以上だと思うのです。少なくとも、父親と一緒に登頂したこの子とは異なり、最後は自分一人の孤独な戦いだったのですから。

 

話を戻します。

合格という偉業達成後に、目標を見失ってしまうのは当然です。

かといって、「6年後の東大合格目指してスタートだ!」というのも酷な話です。

それでは、どう対処するべきなのでしょうか?

 

対処法4例

 燃え尽き症候群からの脱出法は、簡単に言ってしまえば、次の目標をどう設定するのか、これに尽きると思います。

その目標は、なるべく身近で大きくないものが良いでしょう。

 

(1)学校の定期試験でトップを目指す

 一番オーソドックスかつわかりやすい目標設定ですね。そして最も大事な目標です。

まずは前期(一学期)定期試験で満点を目指しましょう。日々の学習の復習をするだけですので、やるべきことは単純です。

 あるいは、全科目トップを目指すのは荷が重すぎるのなら、得意教科でトップを目指すのはどうでしょうか。

「歴史は得意だから満点をとるぞ!」

まずはここからなのだと思います。

 

(2)部活に燃える

 これもわかりやすい対処法です。受験勉強という価値観しか知らなかったところに、スポーツ・音楽といった別の価値観へシフトするのです。例えばテニス部に入ったからといっていきなり大会に出られるはずもありませんが、「うまくなりたい」というモチベーションは単純なだけに大きな力を生み出します。

 

(3)英検級を目指す

 これもわかりやすいですね。もちろん英検級でなくても、TOEFLでもかまいません。例えば、中1の秋の英検で3級を目指すのはどうでしょう? 小学校のときに全く英語をやっていなかったとしたら、これくらいの目標が良いと思います。その前哨戦として、夏前の英検で4級にチャレンジして現状把握するのもよいですね。その調子で、高1の春に準1級まで到達できれば、大きな武器&自信につながります。

 別に英語でなくても、漢字検定でも歴史能力検定でもいいのです。目に見える形で成果が得られるような目標設定がよいと思います。

 

(4)他人と話す

 子どもの社会は案外狭いものなのです。今までは、小学校・塾・家、この3か所をぐるぐるしているだけでした。中学生になると、小学校が中学校に変わるだけです。小学校よりは少しだけ広がりますが、同年代の子どもたちだけがいるという環境に違いはありません。

 本当なら、異なる年代の人間ともっと話をするべきなのです。ここまで核家族化が進行する前なら、家に年寄りもいましたし、親戚づきあいもありました。また近所のつながりというのもあったのです。

 そこで、大人たちも混ざっているような習い事やサークル・ボランティア等に参加してみるのも一つのやり方です。

 多様な人間と接し、多様な価値観を知ることは、視野を広げるのに役立ちます。視野が広がるということは、自分を客観視することにつながります。

 

予防

 燃え尽きるというのは、あまりに狭い目標・価値観にとらわれていたことが原因になるのだと思うのです。これは親にもそのまま当てはまることですね。お子さんが志望校合格後の未来をきちんと思い描いていましたか? まさか、「合格したら、鉄に通って、次は東大(医学部)だからね!」などと言ってはいませんよね。

もしかして、親のほうが燃え尽きてはいませんか?

 

 親が多様な価値観を持ち子どもにそれを示してあげることこそが大事なのだと思います。

 

※今回のテーマに関連し、私立中学進学前後の勉強について本を書きました。