
「先生、国語・算数・理科・社会ではどれが一番大事ですか?」
いきなり質問されました。
私にそれを聞くか?
そうも思いましたが、こうした悩みを持つ方も多いと思うので、少し考えてみることにしましょう。
結論
私の記事はとかく長く回りくどいのだそうです。そこで、はじめから結論を書くことにします。
合格のためなだけなら算数
やっておかないと不合格になるのが国語
即効性があるのが社会
中学生になって役立つのが理科と社会
なんだ、結局4科目が大切ってこと?
そうがっかりしないでください。
それはもちろん4科目は全て重要にきまっています。4科目のバランスが悪い生徒は不合格一直線です。苦手科目をなくし、4科目で満遍なく得点できる子が最も入試では強いのです。
しかし、冒頭の質問をした親は、そんな答を聞きたいのではないのでしょうね。
そこで、結論を書きました。
説明しましょう。
合格のためなだけなら算数
「算数が一番重要です」
「算数さえできれば受かります!」
塾屋が一番口にするのがこのセリフです。
これを聞くたびに、「何もわかっていないなあ」と私は思います。
もし本気でこう言っていたとしたら、その塾屋は素人ですし、それを信じる親の側も、やはり何もわかっていないのです。
4科目の中で、最も親が教えづらいのが算数です。
さすがに4年生くらいの内容なら、教えられると思いますが、5年生にもなってちょっと複雑な特殊算が出てくるともうお手上げです。
もちろん解けるのです。答は出せるのです。ただし、方程式を使って。
方程式を使わないでどう解くんだ?
ところが、どうやら塾の先生は、スラスラと解いてみせて、教えているのですね。
素直に感心します。
こうして、塾に多額の費用を支払って教えてもらおうとするのです。
家ではできないこと
親には教えられないこと
こうしたことを教えているからこそ、塾は成り立つのですね。
塾側もそれは承知しています。
そこで、こういうトークとなるのです。
「家でおかしな教え方を絶対にしないでください!」
「私の指導(塾の指導)では、最も効率の良い解き方だけを教えています。他の塾や家庭教師に習うと、かえって子どもが混乱し成績が低下します!」
「算数は私にまかせてくれれば大丈夫です!」
もちろん嘘ではありません。
しかし、そんな特殊なことをやっているわけでもないのです。
それをあたかも「特別な」指導のように見せかけることで商売が成り立っているのですね。
算数という科目は、入試で「数学を出せない」という縛りがあるのです。そこで、あくまでも算数の領域で問題を組み立てます。
その算数の領域、実はそう深くも広くもないのです。
ほとんどの問題が、いつかどこかで出題されたような、つまりよく見かける定番問題です。
だからこそ、対策の道筋は見えやすいのです。
もちろん、数の性質や場合の数、順列の問題など、ひねろうとするといくらでもひねることができますので、やたらに時間のかかる意地悪な問題も作れます。一部の学校ではそうした出題も見かけますね。
しかし、そんな問題は「捨てて」しまえばよいのです。
基本的な問題を素早く解く力さえあれば、ほとんどの学校で6割~7割の得点は見込めます。それだけとれれば、合格点に達します。
しかし、こうした算数の問題は、解いた経験が無ければ何ともなりません。
一定の時間を費やして、問題演習の量をこなさない限り、算数の得点は得られないのです。
だからこそ、合格するためにはまず算数、というのは正解です。
ただし前述したように、特殊な問題や意地悪問題は捨てる覚悟が大切です。そこまで何とかしようとすると、無限に時間がかかりますので。
しかも、どうやら塾の教師、とくに算数の教師というのは、こうした「解きづらい」問題を解いてみせたり教えることが好きなようなのですね。
私のイメージでは、やたらに複雑なアドリブソロを披露したがるジャズミュージシャンだと思っています。そこには、「すごい」という感想は生まれても、「感動」はないですね。
わかりづらい例えですいません。
塾の言うような「算数至上主義」は否定したうえで、基本問題・標準問題の力をきちんとつけることが大切な教科だということが言いたかったのです。
やっておかないと不合格になるのが国語
国語は、後回しにされる宿命の教科です。
今やらなくても、すぐには点が下がらないからです。
しかも「日本語」ですので、大人の目からみれば、別にとくに対策しなくても何とでもなるように見えるのです。
そうやって後回し・後回しにしているうちに、手遅れになる、そうした教科特性があるのです。
だからこそ、低学年のうちから、きちんと取り組む必要があります。
最も手を抜いてはいけない教科、それが国語です。
しかも、中学入学後に、国語力が無いとどれだけ苦労することか。
とくに論文・作文・レポート等、長い文章を提出させられる場面が多くなりますので。
国語力が無いと苦労することになるでしょう。
即効性があるのが社会
社会は暗記科目です。
正確にいうと、暗記した知識の土台の上に、思考力と記述力を構築する教科です。
しかし、そこまでの思考力・記述力を要求する学校はたくさんはありません。
麻布・武蔵・海城・鴎友、こうした学校を受験するのでなければ、暗記した知識だけでもある程度の得点は見込めます。
学校によっては、「馬鹿々々しい」としか言いようのない幼稚な知識レベルの問題を出題しています。
とりあえず6割の得点にはすぐに到達できます。
もう少し頑張ると、7割には到達します。
それだけでよいのなら、社会科の学習は即効性のある教科だといえるでしょう。
ただし、もう少し欲を出そうとすると、たちまち深い思考力や記述力が必要となります。
また、即効性のあるというのは、入試直前半年で何とかなるという意味ではありませんのでご注意ください。
少なくとも4年生から3年間かけて学ぶ必要があるのは当然です。
しかし、毎回の小テスト等の際に、少し真剣に勉強していけばすぐに得点につながる、そうした即効性がある教科だという意味なのです。
中学生になって役立つのが理科と社会
合格のその先には、私立(国立)中高6年間が待っています。
そこでは、理科と社会の基本知識があることを前提として、その先の勉強が求められます。中学入試レベル、つまり文科省の定めた中学生の学習内容くらいは完璧になっていることが当たり前なのです。
中学入試の理科・社会の知識レベル・範囲は、だいたい中学生の学習内容と重なります。したがって、理科・社会をやっていないと、中学生になってから大変なことになるのです。
過去にこんな生徒もいました。
小学生まで長い間海外(英語圏)に住んでいたその生徒は、帰国生入試で、とある難関校に進学しました。英語力だけで合格できたのです。
しかし、中学生になったとたん、英語以外の教科で完全に落ちこぼれました。いくら帰国生入試で英語だけで合格できたとしても、その学校の大半の生徒達は、一般入試で合格した生徒たちです。中学受験のハードな理科・社会を勉強してきた生徒ばかりなのです。当然学校の授業もそこを基準に進みます。「私は帰国生だから理科社会はやっていなかった」などという言い訳は通用しなかったのです。
そのまま高校に進学することはできませんでした。
これは、わかりきっていた未来を無視して準備していなかったのが失敗です。
仮に算国2科目で受験できる学校だとしても、進学後には理科・社会の知識が必須だということは心得ておくべきでしょう。
まとめ
冒頭に結論を書いたつもりですが、まだわかりづらかったかもしれません。
具体的にはこうしましょう。
学習時間を6等分してください。
そして、算数・国語・理科・社会の比率を、3:1:1:1にするのです。
例えば2時間を使うのなら、算数1時間、国語・理科・社会を20分ずつ勉強します。
そして、算数については、基本問題と標準問題だけに絞り込みます。
これで、だいたいの学校はとりあえず合格します。
ただし、合格するだけです。
これでは、算数に比重を置きすぎているのです。このままでは中学進学後に苦労しますね。
もし中学進学後のことを考えるなら、算国理社の比重は、1:2:1:2が理想です。
算数的な思考は中学数学にも役立つのは間違いないですが、そこを追求しようとすると、マニアックな算数の沼にはまります。算数は最低限の合格点だけとれればよいと割り切って、取り組む時間数も最低限にしましょう。入試が終わった直後から数学に取り組むほうがはるかに効果的です。
理科と社会は、中学受験内容は、一般的な中学生の学習範囲から出題されますので、ここでやる価値はあるのですが、実は理科については少々事情が異なります。たしかに中学受験では中学生理科から出題されますが、それはあくまでも「公立中学校の生徒が学ぶ教科書レベル」にすぎません。中高一貫校の理科は、高校生まで指導している教師が専門的な内容を個別に突き進みますので、中学受験で身に着けた知識などすぐに飛び越えていくのです。もはや星座なんてやりませんので。それくらいなら、こちらも中学生になってから頑張ったほうが正解でしょう。
その点社会は事情が異なります。中学受験の社会の学習は、そのままシームレスに私立中高一貫校の学びにつながります。いくらやっても損は無い教科です。
国語については、私立中高一貫校に進学すると、国語力の必要性を痛感する科目です。長文読解・長文記述の能力が無いと通用しないのです。中学進学後のことを考えると、最も力を入れておくべき教科だといえるでしょう。
中学進学前後のアドバイスを本にしました。ぜひお読みください。
