
今回は、よく聞かれる質問にお答えします。
勉強時間についての記事です。
Q:勉強時間って、どれくらい必要なんですか?
受験勉強を始めたばかりだけではなく、高学年でも質問されるのです。
「うちの子は勉強時間が足りないのでは?」
「習い事はやめなければだめだろうか?」
「早く寝すぎなのでは?」
「勉強にとりかかるのが遅いのでは?」
睡眠時間の確保
医学的には、小学生では9時間~12時間の睡眠が必要とされているそうです。ずいぶん幅がありますね。まあこういうものは、個人差がありますので。
「うちの子は寝ないとダメなタイプなので」
そんな話もよく聞きます。
内閣府の調査によると、小学生の平均起床時間と就寝時間は、6:38/21:57だそうです。これだと、睡眠時間は8時間41分ですね。少し足りない気がします。これは2011のデータなので、今はもう少し就寝時間が後ろにずれこんでいるかもしれません。
また、「公益財団法人 博報堂教育財団」の調査によると、小学生の平均睡眠時間は8時間56分だそうです。就寝時刻が21:46、起床時刻が6:42となっています。もっともこの調査の他の項目を見て見ると、夕食後から寝るまでの時間に何をしているのか、という質問に対する答えはこうなっています。(複数回答)
お風呂に入る:70.3%
家族と話す:63.7%
ゲームをする:62.7%
動画を見る:61.3%
テレビ番組を見る:58.7%
学校の宿題をする:55.7%
本やマンガを読む:40.0%
勉強する:35.0%
スマホなどで友たちとやりとり:27.7%
趣味を楽しむ:26.0%
これ、どう見ても中学受験生ではないですね。
お風呂や家族との会話はともかく、ゲームや動画って何ですか? 学校の宿題なんて、学校から帰った直後に30分以内で片づけるものではないのですか? それに、本とマンガが同列にくくられているところも納得できません。
あ、もしかして、塾から帰るのが遅いので、夕飯とお風呂を済ませてすぐ寝るってことかな?
それにしても、小学生でスマホで友達とやりとりするのは納得できないですね。学校の友達なら明日学校で会って話せばよいですし、塾友なら夕飯後に子どもにスマホを使わせる家庭は無いはずです。
あらためて思いました。
中学受験をするということは、小学生にとって多くの犠牲を強いられるものです。 様々なものを捨てないといけないのです。
しかし、その犠牲というのが、スマホ・動画・テレビ・ゲームであるなら、どうでもいいですね。捨てても全く惜しくはないものばかりでした。
こういう調査って、中学受験生の実情を反映していないのですよね。全国の小学生の行動様式しかわかりません。首都圏のどこかの塾が、たとえばSAPIXあたりが同種の調査を実施してくれたらぜひ見てみたいものです。でも、見たくないような気も。
塾に行き始めると、就寝時間がどうしても後ろにずれ込みます。
塾の授業終了時刻はだいたいこんなところだと思います。
小3まで・・・PM7時
小4・5・・・PM8時
小6・・・・・PM9時
これは比較的「まし」なほうです。塾によっては、居残り補習と称して、PM11時近くまで子どもを残す「昭和の価値観」のところもありますし、6年生だとPM10時くらいまで指導するのは珍しくありません。そういう塾にかぎって、軽食休憩等の無駄な時間があるのが矛盾しています。
PM9時に塾から解放されたとして、帰宅してから軽食・風呂などすますと、PM11時くらいが寝る時間となりそうですね。それで朝6時起床だとすると、睡眠時間は7時間しかありません。あきらかに足りない! 8時半までに登校するとして、ぎりぎりの時刻、7時半くらいまでは寝かせてあげて、急いで支度させる、そんな家庭が多いと思います。
勉強時間の確保
基本的には、「朝型」スタイルを推奨します。
最終的に入試に向けては「朝型」に切り替える必要があります。夜遅くに眠い目をこすりながらの勉強よりも、朝の勉強のほうが、はるかに効率的です。たとえ起き抜けでぼうっとしていたとしても。
根拠はありあせんが、朝の30分間の勉強は、夜の1時間の勉強に匹敵すると思っています。
塾の有る日は、帰宅後の学習はほぼ無理でしょう。塾の無い日の平日を考えてみます。
・帰宅~4時半・・・学校の宿題
・4時半~6時半・・・2時間
・6時半~7時半・・・夕食&風呂
・7時半~9時・・・1.5時間
たった3.5時間しかありません。しかし、これは全ての受験生が共通しています。この時間を有効活用できるかどうかが勝負なのですね。
勉強時間の目安
◆1~2年生・・・毎日1時間
◆3年生・・・・・毎日2時間
◆4年生・・・・・毎日3時間
◆5~6年生・・・毎日3・5時間
本当なら、6年生はもっと増やしたいのですが、就寝時刻の制約がありますので、これが限界です。
この時間枠の設定の中で、毎日必ず2科目以上やるようにしてください。
例えば、算数1.5時間、国語1時間、理科30分、これで3時間です。翌日は社会をやりましょう。
休憩や気分転換は不要
勉強途中で休憩を設けるくらいなら、その分早く寝かせてあげてください。
途中で休憩・気分転換を入れると、どうしても勉強の集中力が一旦ゼロに下がるので、かえって効率が悪いのです。これについては、軽食休憩時間がある塾(例:日能研)と、休憩なしの塾(例:SAPIX)の合格実績を見れば結論が出ていると思います。
合格した生徒の実例紹介
私が知っているごく狭い範囲でお話します。
◆最難関校に合格した女子生徒A子の場合
PM8時半就寝ーAM6時起床・・・睡眠時間:9時間半
小4~小6,受験直前まで毎日このタイムスケジュールでした。
もうお気づきのように、A子は平日は塾に通っていません。土日だけ塾に行きました。
このスタイルをとった理由はたった1つです。
生活リズムを崩したくなかった
規則正しい食事時間もとりたかったし、就寝時刻も守りたかった。家族皆で食卓を囲むことを大切にしたかった。小学校で居眠りするような子にはなってほしくなかった。
いろいろ考えた結果、平日に小学校が終わってから塾に通うことは、「うちは無理」と判断したのです。
◆最難関校に合格した男子生徒B太の場合
塾のある日・・・PM11時就寝ーAM7時起床・・・睡眠時間:8時間
塾の無い日・・・PM10時就寝―AM7時起床・・・睡眠時間:9時間
これは小6のタイムテーブルです。5年生までは、就寝時刻はこれより30分は早かったそうです。
体力のある子でした。睡眠時間については、9時間がベストなのだそうです。ただ、塾のある日はそうもいかない。起床時間は固定したかったので、塾の無い日にはきちんと寝かせることを心がけたそうです。
◆最難関校に合格した男子生徒C男の場合
PM10時就寝ーAM7時起床・・・睡眠時間:9時間
この子は、小6の11月まで野球を続けていました。塾の無い日には練習があるため、結局家庭学習時間はほとんど確保できません。その代わり、塾の授業中に全てを取得することに注力しました。今でも覚えていますが、この子の集中力はすごかったです。親に聞いても、家では全く勉強していなかったそうです。それなのに、1日の私立最難関校と、3日の国立最難関校に合格しました。「地頭」がが良いという理由よりも、時間の無駄がない勉強姿勢に勝因があったと私は思っています。
◆最難関校に合格した女子生徒D子の場合
PM9時就寝ーAM6時半起床・・・睡眠時間:9.5時間
この子は、ある大胆な作戦をとりました。
それは、「塾の最後の授業を捨てる」という作戦です。
その塾では、80分の授業が1日に3コマあったそうです。
5:00-6:20
6:20-7:40
7:40-9:00
こんなかんじですね。
授業は、算数・国語・理科の日と、算数・国語・社会の日があったのですが、国語を捨てました。塾に強引に頼み込んで、国語の授業が3コマ目に実施されるクラスに出席したそうです。毎月成績でクラスが決まる塾でしたが、それを無視して、とにかく国語が3コマ目にあるクラスにしてもらったとか。それで2コマ授業を受けると早退しました。
塾としてはさぞかし「面倒くさい」生徒・保護者だったでしょうね。とくに国語の先生の心中は察せられます。自分の国語の授業を不要と切り捨てたこの生徒の合格を祈る気持ちはさすがに持てなかったことでしょう。いくら授業料を払っているからといって、教師も人間ですから。
こうして塾との信頼関係を捨ててまで帰宅時間にこだわったのは、体調を壊しやすい子だったことが理由です。少しでも睡眠時間が不足すると、すぐに体調を壊すのだとか。そこで、睡眠時間の確保を最優先したのです。その代わり、国語の勉強は親がきちんと指導しました。
◆最難関校に合格した女子生徒E美の場合
PM11時半就寝ーAM6時半起床・・・睡眠時間:7時間
あきらかにこの睡眠時間は少なすぎます。
しかしこの子の場合は、特技があったのです。いつでもどこでもすぐに寝られるという特技が。
小学校から帰ると、30分昼寝をします。塾から帰ると、20分仮眠します。
医学的にこれが正解なのかどうかはわかりませんが、この子の場合は正解だったようです。本人曰く、「30分の昼寝は2時間の睡眠に匹敵する」のだとか。
昼寝するくらいならその分早く就寝すればいいと私は考えるのですが、本人がそれで体調がベストなら言う事はありませんね。ON-OFFの切り替えが上手なのでしょう。
通塾と体調管理のバランス
塾に通うと生活時間は乱れます。食事も不規則になりますし、就寝時刻も後ろにずれこみ、睡眠時間に食い込みます。正直に言って、体調管理という面だけから考えると、いいことは一つも無いのです。
それでも受験勉強のために塾に通うのなら、体調管理とのバランスをどうとるかに心をくだくしかありません。紹介したD子のように、最後の1時間を早退するくらいの覚悟は必要です。
あるいは塾に行かないという選択肢も検討に値します。
そのノウハウをこの本にまとめました。ご一読くだされば、参考になると思います。
