
昨年の猛暑を考えると、今年の夏はだいぶましでしたね。9月に入り、秋の気配もしてきました。
この時期なると増えるご相談は、決まっています。
「この成績では受からないのでは?」
「夏にあんなに頑張ったのに・・・」
「志望校を下げたほうがよいかも・・・」
一言でいわば、弱気になってしまうのです。
弱気の原因
(1)成績不振
ここで注意が必要なのが、「成績」の定義です。
大半の方が、「成績=偏差値・順位」と思っています。
なにせ中学受験塾に通うようになってから数年間、ずっと「偏差値」という魔物に追われ続けてきたのですから。
しかし、ご存じのように「偏差値」は、そのテストの受験生達の中の立ち位置を示す目安にすぎません。仮に毎回の模試の受験者が全く同一であったと仮定した場合、その集団の中のポジションを示します。しかし、母集団が少ないと意味をもちません。統計的な検証はわきに置くとして、およそ4桁は受験生がいないと精確とはいえないでしょう。
また、このテストの受験生たちが全員同じような学校を目指すという前提も必要です。たとえば麻布と開成ではどの模試を見ても、数ポイント麻布のほうが低くなっています。だからといって麻布のほうが合格しやすいかといえばそんなことはありません。問題の傾向が違いすぎるからです。しかし、いくつかの塾が実施している「学校別」の模試では、母集団が少なすぎて偏差値が参考程度にしか意味をもちません。さらに模試の試験問題の質も重要です。残念ながら、入試に対応した良質な問題ではない模試も散見されるのです。
おおざっぱにいうと、模試の偏差値・順位が有効なのは、志望校別に生徒たちが分かれる前、総合的・標準的な学力を測定するタイプの模試の場合でしょう。だいたい6年生の前半までだと思います。
(2)夏の疲れ
やっと夏休みが終わりましたね。毎日のように夏期講習に行き、朝から晩までどっぷりと勉強に浸かる日々だったと思います。親からすれば、「自分が小学生のときにはこんなに勉強しなかった!」と思われたことでしょう。しかしこれだけの長時間の勉強は精神的にも肉体的にも疲れます。それを見守った親も疲れました。
心身が疲れているときには、「弱気の虫」がとりつきやすいものですね。
(3)周囲の雑音
不安な気持ちになると、それを解消しようという心理が働きます。塾の先生に相談するのならよいのですが(むしろ利用しましょう)、先輩ママの体験談を集めようとする方も多いのです。身近に頼れる受験先輩ママがいたとしても、その話は参考にもなりません。違う家庭・違う子供の成功談は、自分の子供に適用できるはずがないからです。塾の教師であれば、過去に4桁の生徒は指導してきているでしょうし、同じようなタイプの子も大勢見てきていますので、お子さんに合ったアドバイスができますが、たった1名か2名程度の「経験」では、一般化したアドバイスは不可能です。
もちろん、直接の知り合いならまだましともいえます。悪意を持ったアドバイスはしないでしょうし、こちらの事情もご存じでしょうから。しかしSNSや教育系掲示板にあふれている「先輩ママ(パパ)」からのアドバイスは、私の目からは、まったく信用に値しないものが多いのです。まさか悪意をもって書き込んでいるとまでは思いませんが、「うちはこうやったらうまくいきました」というただの自慢話レベルにすぎません。
アドバイス
(1)諦めない
押さえの学校として検討していた複数の学校について、子供の成績をみながら調整するのは問題ありません。しかし、第一志望としてずっと努力してきた学校を諦めるのはやめましょう。
こんな生徒がいました。開成を第一志望としていた生徒です。成績的にもじゅうぶん届くところにいました。しかし、親が怖くなってしまったのです。そこで、偏差値表で開成よりも下にある「麻布」に志望校を「下げた」のです。結果は麻布不合格でした。麻布には、麻布にあこがれて努力をし続けた受験生が集まります。問題傾向も全く異なるのです。もしそのまま開成を受けていたら、と思わざるを得ません。
また、こういう生徒も多いのです。開成ー筑駒を受験する生徒が、やはり怖くなってしまって開成→駒東へと志望校を変えるのです。「第一志望は開成より筑駒だから」という気持ちですね。開成の合格発表は3日ですので、筑駒を受験しにいくときには開成の合否はまだわかりません。しかし駒東の結果発表は2日ですので、駒東の合格を知ってから、筑駒を「安心」して受けることができます。実にクレバーな作戦です。しかしこうやって開成から駒東に受験校を変更した子で、筑駒に受かった生徒をほとんど見たことがありません。
今でも覚えている合格発表風景があります。開成の合格発表(WEB発表などなかった時代)に、私も教え子の受験番号のメモを持っていきました。両親と一緒に発表を見に来ていたA君の番号もあったのです。正直、「五分五分かな?」と思っていた生徒でしたので、私も嬉しかったですね。お母さんが泣きながら私にこう言いました。
「先生、諦めないでよかった・・・」
(2)動じない
前述したように、この時期は「弱気の虫」にとりつかれやすいのです。親の動揺は子供に伝染します。とにかく平常心を保ってください。
(3)雑音を遮断する
平常心を保つには大事ですね。塾の先生の言うことは信じるとして(プロですから)、周囲の素人の助言は遮断しましょう。本当はネットも見ないほうがよいのです。とくにSNSは鬼門です。