
みなさんは、家庭菜園の経験はありますか?
私も、毎年夏には猫の額ほどの裏庭と、バルコニーに並べたプランターで夏野菜を育てます。おかげで、毎日きゅうりとミニトマトを楽しむことができました。
しかし、最初に植えた後はほぼ放置で水やりくらいしかしませんので、トマトはジャングルと化し、モロヘイヤは高さ2mを超えました。知識としては、間引き・摘芯・摘果が大事なことは知ってはいますが、つい面倒なのと、せっかく生えているのに、という親心?から、結局は放置してしまいます。上手に管理すればもっとたくさんのおいしい実がなるはずでしたが、すでにトマトもきゅうりも枯れかけています。
確実な「成果」をあげるためには、受験勉強にも同様に「間引き」が重要だと思うのです。
塾の講座は全て大切、なはず
私も長年(30年以上)、SAPIXという塾にいました。SAPIXでは、小4は週2回、小5は週3回の授業があります。算数と国語が2コマずつ、理科と社会が1コマずつ、計6コマの授業を、小4は1日2コマ、小5は1日3コマ実施します。
そして小6になると、火・木の2日で6コマの授業を行います。これを「平常授業」と称していました。そこに小6の最初(2月)から、土曜の授業が追加されます。この土曜の授業は志望校別にクラスを再編成して実施する授業で、「土曜特訓」通称土特と言っていました。
しかし、生徒の中には、この土特を休みたいという要望をもつ者がいたのです。
「うちの子はまだ基礎が不十分なので、土日はそうした復習にあてたいので」
「うちの子にはまだ志望校別の授業は早すぎると思うので」
そうした要望が出る都度、私は「あり得ません!」と一刀両断していました。土特の授業は、志望校別と称していても、まだ志望校に特化した授業はできず、少しずつ意識づけしながら問題演習と解説をメインとしていたので、復習内容といっても良い授業だったからです。それに、「せっかくSAPIXが総力をあげてカリキュラムと教材を作っているのだから、受講しないのはもったいない(愚かな)ことだ」との信念も持っていました。
ゴールデンウィークの特訓授業も、夏期講習も、夏期志望校別特訓も、同様に考えていたのです。
さらに9月になると日曜特訓(通称SS特訓)がスタートします。こちらも同様に、「受講しないのはあり得ない」というスタンスで保護者に接していたのです。
これは、何も塾の売り上げを意識していたのではありません。本当に心の底から「有効な講座」であり、「合格のためには必須」と考えていたのです。
何せカリキュラムもテキストも(社会科は)私が作ったものでしたから、良いに決まっているじゃないですか。
SAPIXに限らず、現在塾にお通いの場合、塾が必須とする講座を受講するのは基本です。なぜなら、それを勧めてくる先生方もまた、かつての私同様に、「本当に役立つ」と確信しているはずですし、それによって成果もあげているはずだからです。
(一部の心無い塾では、利益だけを考えていたり、他塾から優秀層を引き抜いて合格実績を水増しすることを目的とした講座を設置していますが、それについてはここでは論じません)
拘束時間の問題
小6受験学年ともなると、塾の日数も拘束時間も激増します。
実は、そこに大きな問題があるのです。
ある生徒を思い出します。その子は、某中堅集団指導塾に通っていました。しかし、成績が一向に伸びません。小6の夏前、思いあぐねた両親から相談を受けたのですが、すでに手遅れの状態でした。「君、本当に小3から塾に通っていたのかい?」思わずそう聞きたくなるほど、知識が無いのです。別にSAPIXレベルの知識ではなく、四谷大塚や日能研で偏差値40くらいの学校を受験する生徒でも当然常識であるはずの知識がありません。漢字も書けなければ、国語の読解もできませんでした。
いちおう真面目に通塾していたとのことなので、おそらく塾の教室にただ座っていただけで、何も学んでいなかったのでしょう。
しかし問題なのはそこではありません。そんな生徒などいくらでもいます。そうした生徒を「放置」し続けた塾の責任が大きいのです。たいして規模の大きな塾でもありませんし、教室の生徒人数も十数名程度です。教師の目が行き届かないはずがないのです。生徒本人も、おっとりした正確ではありましたが、アクが強いこともなく、言われれば少しはやれる子です。つまり、普通の生徒です。
本当は、「その塾は今すぐ辞めるべき」とアドバイスしたかったのですが、どうやら親は気に入っている様子なので、それは言えませんでした。
せめて夏休みに少しでも立て直そうとプランを組みたかったのですが、夏休み中は「毎日塾に来い!」というスタイルだったため、まったく時間がとれません。もちろん毎日通塾することで多額の費用が発生しています。
塾の意図は明らかです。完全に「葱を背負った〇〇」扱いされているのです。
それなりに実績も広告している塾でしたので、合う生徒には合うのかもしれませんが、少なくともこの生徒にとっては合わない塾であることは確かでした。
私のいた受験の世界では、新人だろうがベテランだろうが非常勤学生講師だろうが、目の前にいる生徒の指導にはみな熱心でした。「できない生徒を放置して金だけいただく」という発想が異次元すぎて理解できません。
ここまで悪意のあるケースでなくても、6年生になると拘束日数を増やす塾が大半です。土日には模試が組まれ、それ以外の曜日はほぼ塾に行く、そうした所もたくさんあります。
これは実は危険なことなのです。
完全に塾の指導に乗ることで成績を伸ばす生徒ももちろんいますが、勉強で大切な「振り返り」「醸成」の時間がとれません。
毎週末のテストを主軸とした塾があります。かつては難関校の実績をほしいままにした塾でしたが、その後見る影もなくなり、他資本に身売りに至りました。理由は簡単です。毎週テストのために勉強し、テストが終わるとすぐに次のテストに向けた勉強をする、家で振り返る時間が一切ない、このスタイルは、「振り返る必要が無いほど優秀」な生徒でなければ効果があがらないのです、かつてこの塾は「この塾の入塾試験に合格すれば、難関校に受かったも同然」といわれるほど優秀な層を集めていました。その後裾野が広がるにつれて、塾で生徒を伸ばすことができず、衰退していったのですね。
もしお子さんが、家庭学習などしなくても、塾で全てを吸収して成績を伸ばしている生徒なら何も問題はありません。
しかし、塾の指導についていくのがやっと、テストは間違いだらけ、基礎の定着が不十分、そうした状態なら、塾の拘束時間が長いことは弊害しか生みません。
決断の時
もしお通いの塾の授業が以下のようなものであるなら、その授業は間引く決断をすべきかもしれません。
〇相変わらず基本知識のプリントの暗記を授業中にやらせるだけ
〇基本問題の復習中心で、入試レベルの問題演習がない
〇授業中に解かせた問題の答え合わせをするだけで解説時間がない
〇過去問演習の解説を授業中にやらない
〇過去問提出をしても、〇×がついているだけで添削指導がない
〇過去問の質問をしに行っても教師が即答できない
〇受験校の同じ過去問を5周やれ、という指示がでる
〇週5日以上拘束される
〇終了時間が延長されることが普通だ
〇過去問は「まだ早い」と言われる
〇過去問をコピーしたプリントを使っている(これは違法です)