
小学5年生は、国語力向上の要になる黄金時期だと前回書きました。
その趣旨は、4年生では早すぎ、6年生では遅すぎる、ということにあります。
難しい文章を読む
これが、国語力向上の最大の秘訣です。
これも英語に例えるとわかりやすいと思います。多読教材入門としてよく知られているものに、「Oxford Reading Tree」というテキスト体系があります。10段階のステージに分かれていて、最上位ステージになると、英検準2級レベルといわれています。ただし、そのレベルの英語力がついていると、他にもいくらでも読める本がありますので、だいたいORTから離れていくと思います。このテキストのステージ1~3は英検でいえば5級レベルとされています。このあたりをお子さんの英語の初期教育で使う方も多いのです。
さて、ORTのステージ1~3までの本を、いつまででもやらせることに意味はあるでしょうか? 基礎を固めることは大切だとしても、それではいつまでたっても「ネイティブ幼稚園児以下」の英語力しか得られないことはわかりますね。
段階を追って、徐々にステップアップしていかなければ英語力は身に尽きません。
国語も同様です。
就学前に読んでいたような絵本を、小学高学年になってまで読む子はいません。
世の中の本には、対象年齢を絞っていない本と、明確にターゲットの年齢を絞っている本の2種類があるのです。そして、対象年齢をしぼっている本は、「易しすぎ」て、読解力向上に役立たないのです。
小学生から中学生を対象としたものに、「角川つばさ文庫」というシリーズがあります。おそらく書棚に何冊かは入っていると思います。
これは、「小学校低学年向け」「高学年向け」といった具合に対象年齢が絞られていて、子供に与えやすい人気のシリーズです。学校図書室にも揃っていると思います。
ラインナップは多彩で、低学年~中学年向きのものには、幼稚な魔法物、変身物、難事件解決物等がずらりと揃っています。まあコミックと思えばよいでしょう。これはいくら読んでも国語力の向上には寄与しません。しかしこれらは、見るからに幼稚なので、漫画を読むのと同じと考えればよいのですが、危険なのは名作シリーズです。例えば、「紫式部日記 平安女子のひみつダイアリー」「枕草子 平安女子のきらきらノート」という眩暈のしそうなタイトルのものがありました。怖い物見たさでおそるおそるページを開きましたが、予想通り、というより予想を超えてきましたね。枕草子といえば、私も大好きな本です。「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる 雲のほそくたなびきたる。」もうイメージが目の前に広がります。読み進むと、清少納言の知性と感性、教養がにじみ出るようで、しかも清少納言の人間臭さも垣間見えてきます。随筆の最高峰と評される道理です。しかしこの「平安女子のきらきらノート」はどうなっているかというと。まず、冒頭の登場人物紹介のページでは、主人公の名は「ナゴン」となっています。そして「ウサギ」という謎のキャラクターまで登場します。もう嫌な予感しかしません。そしてページをめくると・・・・。
少なくとも私なら自分の子供には絶対に与えないことでしょう。
同様に、名作の数々が、見るも無残に改悪されて並んでいます。
もちろん中には、最初から児童向けに書かれたものもそのまま再録したものもあるようです。
読書の目的を、「暇つぶし」「読解力向上」「感性を育てる」とすると、最初の1つにしか役にたちません。
このシリーズだけでなく、小学生向けとされる本には、同様のものがあふれています。「集英社みらい文庫」「講談社青い鳥文庫」「小学館ジュニア文庫」などですね。これらは、「良い本」も「くだらぬ本」も「幼稚すぎる本」も入り混じっています。お子さんに与えるときには、必ず大人が読んだ後に与えてください。
低学年のうちはよいのです。読書習慣をつくるのには役立ちますから。また、自分だけの力で読了する楽しみも味わえます。しかし、そうした読書も卒業する時期がきます。それが、小5だと思います。
小5になれば、学年を絞って書かれていない普通の本がやっと読めるようになってくるからです。
小5・小6の塾での様子を見てみると、授業が始まる前に何をしているかで子供の時間の過ごし方が垣間見えます。
〇友達とふざけあっている
まあ、これが普通です。
〇プリントやテキストや資料集を開いている
これも普通です。塾ですから
〇本を開いている
どんな本を読んでいるのか気になりますね。「何読んでるの?」「これ」「おもしろい?」「うん、まあまあかな」こんな会話が交わされます。
読んでいる本は、5パターンでした。
・子供向けの「幼稚な」本
・中学生向けの本
・ハリーポッター
・ハリーポッター(原書)
・大人向けの文庫本
ハリーポッターについては賛否両論です。たしかに面白いですが、翻訳が良くないという批判もあります。これも、5年生にもなって読んでいるのはちょっと幼稚ですね。だいたい小3くらいで読む本でしょう。また、英語の原書で読むのは凄いですね。第一巻が英検2級レベルです。変な魔法用語が出てくるのは困りますが、これが原書で読めるのはたいしたものです。聞くと帰国生でした。
そして、大人向けの文庫本を普通に読んでいる子もいます。これがベストなのは言うまでもありません。
5年生にもなれば、大人向けの本を、苦労しながら読むようにしてほしいのです。児童小説に分類されるような本であっても、内容が深いものを選んで読んでほしいのです。
読解する
2000字~4000字程度の文章を読み、読解します。
このトレーニングが重要です。
読解には、大人の補助が必須です。
まずは普通に読み、そのあとに「登場人物」を整理します。物語の「舞台」はどこなのか、そして「季節」はいつなのか、「時間」はどうなっているのかを整理します。「場面」が変わるところをチェックします。登場人物の人間関係にも注目します。
それから物語の展開を整理していくのです。
これらを子供にやらせた後で、大人がチェックしていきます。
この「読解」が自分一人の力で正確にできるようにするのが「国語力を向上させる勉強」ということになります。
このトレーニングを1年間続けることで、難しい入試問題にぶつかる準備ができるのです。