元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】読解力につながる読書

読解力を向上させるための読書について考察します。

一人で読む

これが大前提です。

読書というのは極めてパーソナルな体験です。読者によって読み方は異なります。これを大人が隣で「ここはこういう意味だよね」「この主人公はこのときどう思った?」などと口をはさむことは、読書の魅力を殺すに等しい行為です。

子供が一人で本を開いて自由に読む。

これが前提です。そのために漢字を学んだのです。

ただし、「どんな本」を読むのかは非常に重要です。

そこで、「読ませたい本」「読ませてはいけない本」についてまとめてみます。

読ませてはいけない本

◆名著の簡略版

 例えば女子なら誰もが読む「赤毛のアン」。みなさんも読みましたか? 私は男ですが、上に姉がいた影響で書棚に入っていて、読みました。

この「赤毛のアン」、全9冊あり、最終的にはアンはギルバートと結婚して子供が生まれます。そこまで読みとおした方はいますか? 私は家にあった2冊~3冊程度を読んだだけでした。とにかく活字中毒だったので、家にあるあらゆる本を何回も読んだのです。さて、この本はシリーズ第一作だけでも、原著の翻訳だと文庫本の活字サイズで600ページほどです。しかし、「児童用」の簡略版だと、大きな活字とイラストがたくさん入って360ページです。おそらく内容は1/3程度に圧縮されているのだと思います。

原著は、作者のL.M.モンゴメリが牧師夫人だったこともあって、聖書やシェイクスピアの引用も多いのですが、そうしたものが見事にカットされています。このようにして名作を子供用に書き改めた本には手を出してはいけません。せっかくの本の魅力が半減だからです。

「ロミオとジュリエット」といえば、誰もが知る名作です。

私も小学生のときに、家にあった本で読みました。たぶん世界名作全集といった本だったと思います。しかし、恐ろしいことには「小説」だったのです。子供にわかりやすく「戯曲」形式から「小説」形式に書き直しているのですね。これは原作に対する冒涜としか思えませんが、当時の私がそんなことを知るはずもありません。さらに子供心にも覚えているのですが、途中でシーンが飛んでいるのです。

ロミオとジュリエットで最も有名といってもよいシーン、ロミオが町から追放される直前に一夜を共にする、あのシーンです。

私が読んだ「小説」では、二人が夜に出会った次の行では、「あの鳥の声はナイチンゲールなの」という朝の場面になっています。

「あれ? 夜なのに朝?」

謎すぎて、落丁を疑って何度も読み返したことを鮮明に覚えています。

もちろん原著でも、夜に何があったかは書かれていません。ただし「戯曲」ですから、第三幕第五場へと舞台設定が変わることで、観客は察するわけです。しかし、変に小説スタイルにしてしまったために、矛盾が生じてしまいました。

 

◆最近の新刊児童書

 毎年、様々な児童書が出版されています。もちろん内容も素晴らしいのでしょう。ただし、これらの本が、本当に子どもに読ませるべき本なのかはわかりません。今どきの内容・文体であることも多いからです。

そこで、こう考えてください。「この本は、50年後、100年後にまで読み継がれる本なのだろうか」

時間の洗礼を潜り抜けた本のほうが信頼できると思います。

※中学入試の国語には、こうした新しい作品が使われることが大半です。今までに使われていない文章を使いたいという入試特有の理由があるからです。

どうしても新しい作家の本を読ませたい場合は、入試に使われた本から選ぶというやり方もあります。少なくとも、中学校の国語の先生が「選んだ」というフィルターがかかっているからです。ただし、私の見たところ、「なぜこの本?」と思わせるような幼稚な小説も使われていますので要注意です。

 

◆ライトノベルはNG

私自身は一切読まないため、ライトノベル事情には疎いのですが、それでもタイトルを見ただけでも子どもに読ませていいとは思えません。

「路地裏で拾った女の子がバッドエンド後の乙女ゲームのヒロインだった件3」

「転生特典のスキル《剣豪覚醒》で異世界を無双したい」

「独身おじさんの異世界ライフ ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~」

こんなタイトルが溢れています。これ、子どもに読ませたいですか?

ちなみに、小中高生対象のとある文芸コンクールの審査員の作家が嘆いていました。「もう異世界転生ものは送ってきてほしくはない」と。

子供への悪影響絶大です。

 

◆子供向け人気シリーズ本はNG

 ファンタジーの翻訳者として知られるノートルダム清心女子大学名誉教授の脇明子先生の著書「読む力は生きる力」によると、「人気シリーズ」は子供に悪影響があるそうです。

 脇先生曰く、「変な主人公が、変な人たちと出会い、変な出来事が起き、よくわからないうちに大団円、神経がまひしてきそうな」話だそうです。


小学生に大人気のシリーズがいくつかあるそうなのですが、私もよくわからないので小6男子に聞いてみたところ、「かいけつゾロリとか?」と教えてくれました。

何人かの小学生にリサーチしたところ、「ぞくぞく村のミイラのラムさん」だとか、「おばけマンション」「おしりたんてい」だとか言った名前があがりました。小学生低学年のときに夢中になる子が多いそうです。

 残念ながら(幸いにして)私は読んだことが無いのでコメントする立場にはありませんが、脇明子先生の言葉を借りると、「子どもたちの想像力、読書力をどんどん低下させて」いくそうです。

 

◆大人向け児童書は慎重に

例としては、「銀河鉄道の夜」「星の王子様」「かもめのジョナサン」あたりでしょうか。

いずれも「名作」とされています。しかし、これはあきらかに大人向けの本です。正確には、大人でないと良さがわからない類の児童書だと思います。大人が「良い児童書」と考える本が、必ずしも子ども向けとは限らないのです。

「銀河鉄道の夜」は、小学生の時に読んであまり好きにはなれませんでした。私の感性では理解できなかったのでしょう。大人になるまでに何度か読み返しましたが、やはり良さがわかりません。しかし「名作」には違いないので、一度は読んでおくと良いとは思います。星の王子様も同様ですね。主人公の「王子様」に共感できなければ何ともなりません。「かもめのジョナサン」だけは、面白かったですが、これは五木寛之の訳の効果も大きいでしょう。

個人的には、ミヒャエル・エンデ、ケストナー、C.S.ルイス、J・R・R・トールキンあたりをお勧めします。ルイスのナルニア国シリーズとトールキンの指輪物語、どちらも宗教をバックボーンとした壮大なファンタジーです。ファンタジー物もこれくらいのスケールならいいですね。

 

★借りるより買う

本も高くなりました。図書館を利用してなるべくたくさんの本を読ませたくなりますね。ただし、図書館に頼り切るのもどうかと思います。

本好きな方なら賛同いただけると思うのですが、書棚に本が並んでいる、それだけで嬉しくなりませんか?

何度も読んだ本に再び手を伸ばすのも素敵です。

本はやはり「蔵書」になってこそ、と思うのです。

図書館で借りて気に入ったから買う、これなら正解です。

 

本選びについてはこの記事にも詳しく書きました。

peter-lws.net