
前回の記事で、読書と読解の違いについて書きました。
中学入試に向けて、読解力はいつ頃から構築されるのでしょう、そしてそのためには何から始めればよいのでしょうか。
※私は脳科学の専門家ではありませんので、記事に科学的裏付けはありません。私の経験から語っているだけですので、的外れとお感じになったら恐縮です。
1st.STEP
読解力構築に向けた最初のステップは、「就学前」の時期です。つまり6歳以前です。この時期には、いわゆる「最低限のコミュニケーションに必要な語彙力」が構築されていきます。さらに、「周囲の環境・社会を理解するのに必要な最低限の語彙力」もこの時期に構築されます。
さて、いったいどれくらいの語彙力が必要なのか、数字で知りたいところですが、残念ながら納得いく統計は見つけられませんでした。そもそも「語彙力」の定義が「知っている単語」なのか、「使いこなせる単語」なのかによってもだいぶ数字が変わります。3000語程度という方もいますし、1万語は理解している、という方もいます。
アメリカの調査では、6歳で5000語~6000語程度だそうです。
小学館の「はじめての国語辞典」は幼稚園~小学校低学年対象とされていて、収録語数は18000語です。ただし、この辞書には「馬頭琴」「しのつく雨」「星月夜」まで載せられていますので、さすがに6歳児が知っているとは思えません。
ちなみに「馬頭琴」については、小学2年生の国語の教科書にある「スーホの白い馬」という物語に登場します。そういえば馬頭琴は、東名高速の浜松SAに展示されていました。さすが楽器の町ですね。
この時期に語彙力を、というとすぐに「絵本の読み聞かせ」をしなくては! と思うでしょうけれど、ちょっと待ってください。読み聞かせ自体は素晴らしいことなのですが、それによって読解力、そして語彙力が身につくということではないのです。
それよりも大事なのが、「会話」です。
大家族制が消え、家には両親と兄弟くらいしかいない環境が普通になりました。その両親も仕事で忙しく、子供と向き合う時間が昔よりは確実に減っています。
また、近所づきあいもめっきり減りました。年齢が上の子供と一緒に遊ぶ機会もほぼありません。
今の子供にとっては、身近な大人(含む年上の子)は、親、学校の先生、習い事の先生くらいしかいないのです。
習い事の先生とかわす会話は限定的です。学校の先生と過ごす時間は長いのですが、会話の内容は限定的で、しかも会話というよりは一方的な一対多の情報伝達が中心です。
つまり、「放っておいてもいつのまにか語彙が増える」環境ではないのです。
意図的に、親が会話量を増やさないかぎり、いつまでたっても「幼稚な会話」しかできないのです。
前述したアメリカの調査によると、高卒では15000語~20000語程度の語彙力があるそうですね。大卒になるとその倍くらいでしょうか。これも調査によってブレが大きい数字なのであてにはなりません。ただし同様の調査で、貧困家庭の語彙力が低いことがあげられていました。
この種の調査で有名なものとして、Betty HartとTodd R. Risleyが1970年代に行った調査の論文、「The Early Catastrophe: The 30 Million Word Gap by Age 3」が有名です。
この調査は、所得水準の異なる家庭における会話量を測定したものです。
そこから、『4歳になるまでに、専門職(裕福層)の家庭の子どもが耳にする言葉の累積は約4500万語であるのに対し、生活保護受給世帯の子どもは約1300万語にとどまり、その差が約3000万語に達する』ことがわかったのです。
私も論文を入手したものの、まだ読んではいないので(英文なので面倒くさい)語る資格はないのですが、うなずける結果ではあります。
親の学歴が家庭での会話における語数に反映しているということですね。
よく考えれば、これは恐ろしい話です。
いくら親が高学歴であったとしても、子どもとの会話時間が短ければ何にもならないからです。
とにかくたくさん話しかけ、たくさん話をさせ、たくさん耳を傾ける。読み聞かせなどよりもはるかに大切だと私は思っています。
2nd.STEP
漢字を教える。
次に大切なのはこれです。日本語は漢字が読めなければ話になりません。いちおう小学校で6年間で学ぶ漢字数はこうなっています。
1年生:80字、2年生:160字、3年生:200字、4年生:202字、5年生:193字、6年生:191字
全部合わせて1026字です。
しかし、こんな学年縛りに従う必要は全くありません。
なるべく早く、この漢字をマスターしてしまいましょう。
それによって、「自分で本を読む」準備が整うのです。
もちろん漢字だけ暗記してもまだまだ不十分ですが、少なくともスタート地点に立つことができるのです。
読解力をつけるためには、本をたくさん読まねばダメ。
そう言われていますし、それは真理です。
しかし人に読んでもらう読書、幼稚な言葉しか使われていない読書をいくらしても役立ちません。
そのための準備を、就学前の段階でしておく必要があるのです。