元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】中堅校の凄み(男子校編)

前回の記事で、芝・攻玉社・巣鴨の大学実績を調べていました。

あらためて見てみると、これらの学校の進学実績が素晴らしいのです。

今回は、中堅校の凄さについてみていきます。

※「中堅校」という表現が失礼なことは百も承知です。これらの学校を見下す意図はまったくありません。ただ他に適切な表現が思いつかなかったのです。SAPIX偏差値で40台後半から50台前半くらいの学校をイメージしています。それでも日能研や四谷大塚では「難関校」です。

大学実績

まずはシンプルに大学実績を比較します。

合格実績 卒業生数 東大 一橋 科学 早大 慶応
本郷 284 23 5 9 179 135
サレジオ 180 11 11 6 81 68
攻玉社 228 15 2 4 89 73
281 21 4 7 126 84
城北 340 6 7 5 88 56
巣鴨 270 13 5 7 83 53
桐朋 322 14 8 9 88 66
世田谷 203 5 2 6 56 51

取り上げた学校は、SAPIX偏差値表の45~55(2月1日午前)のところにあった男子進学校です。

ところで学校のHPを調べて気づいたことがあります。

学校によって、大学実績の載せ方に差があるのですね。

A:すべての大学を、あいうえお順(北から順)(国公立と私立だけ分けて)で一覧表にしている

B:医学部医学科の実績だけ別枠にしている

C:一覧だが、東大や早慶は上に載せている

D:目立つ大学だけ20校程度大きな活字の表にして、「全合格実績」についてはボタンをクリックするとみられる

D’:主要な大学だけを載せて、他の大学は載せない。

E:目立つ大学だけ「派手な色・フォント」で載せ、他の大学の合格者は載せない

 

これは、学校が目指すものや理念と関係していると思います。

一番好感が持てるのはAの学校です。卒業生の大学実績を「分け隔てなく」公平に扱っているからです。

Bの学校も多いですが、「うちの高校からは医学部にこんなに合格しました」というアピール臭が若干します。まあ許容範囲でしょう。

Cについては、これも許容します。受験生が気になる情報を見やすいところに配置しているからです。ただし、このスタイルは、明らかに学校が大学の序列化をしていることを意味します。〇〇大学よりも東大や早慶の合格のほうが「学校にとって大切」であることを示しているからです。

個人的に嫌いなのはDとD’ですね。自分がその高校の卒業生だとして、母校のHPを見たときに、自分の進学校が「その他」扱いされているのはどんな気持ちになるのでしょうか。

塾の中学合格実績の見せ方を想起します。

SAPIXはAのスタイルですが、大半の塾がDのスタイルです。これは「合格実績」で勝負している塾ですからかまわないのです。しかし教育機関である学校が塾に寄せてくるのは何か「嫌」なのです。

今回調べた上記の学校の中では、芝と城北がDのスタイルでした。

芝はもっとのんびりした校風の学校だったと思っていたのですが、変わってきたのでしょうか。

Eの学校は多くはないのですが、埼玉県のとある学校のHPがこれでした。開いた瞬間に赤字が目に飛び込んできます。東京理科大の実績のところには、「全国No1!」と赤背景白抜きでありました。大学のレベルによってフォントサイズも変えてあり、私学の項目は医歯薬学部以外は早慶GMARCHしかありません。あとは「他」と書いてありました。卒業生数471名の大所帯の学校ですので、いろんな大学に合格者がいると思うのですが、無視されています。

これは塾、それも「品の無い」塾よりもひどいですね。学校自体の教育内容は論評しませんが、少なくとも学校がどちらを向いて運営されているのかが表れているHPでした。

一度、志望校選びの際には、各学校のHPから大学実績のページを見てみることをお勧めします。海外大学実績が売りのとある人気校は、海外大学合格者数は過去19年間に1名でも合格者が出た大学は全て載せられているのに、国内大学については、私学では医学部以外は早慶上理&GMARCHしか載っていません。それ以外の大学に進学した生徒だっているはずでしょうに、「無かったこと」にされているようで哀れです。

 

巣鴨

巣鴨といえば、「大菩薩峠越え強歩大会」と「巣鴨流水泳学校」です。

巣鴨流の水泳とは、伝統的な古式泳法と近代泳法を組み合わせた泳法です。HPにはこうあります。

この行事に一貫して使用している六尺の水褌(指導者は黒、生徒は白、サラシ木綿)は、古来日本泳法のユニフォームとして、その歴史と共に歩んで来た。そればかりでなく、海の訓練に伴う危険からの救助に極めて有効性を持っている。また、最終目的の遠泳に当たっては、固く、キリリッと締めることによる独特の精神的緊張感は心の動揺を抑え、長丁場を泳ぐ際の道動を軽快にし、万一の救助に際しては文字通り「命綱」となり、寸刻を争う場合などには、これ以外頼るところの無いものである。安全で、男らしく、かけがえの無いユニフォームである。

おお、褌の伝統は守られているのですね。

また、大菩薩峠越え強歩大会も巣鴨を象徴するイベントです。徹夜で山を歩くのです。

もっともさすがに今年は、「東京湾岸強歩大会2026」に変更されました。熊が出ますので。

この二つのイベントは、OB会が中心になって運営されているようですね。

何とも「アナクロ」なイベントですが、これが巣鴨と言う学校だと思います。

もっとも、HPを見ていると、こうした「巣鴨らしさ」を薄めようとしている気配が感じられます。国際化を全面に打ち出しているのです。

詳しい統計データはわかりませんが、保護者と面談をしている感触からすると、近年人気が低下している気がします。巣鴨のような「質実剛健」な硬派スタイルは、あまり受けないのです。

巣鴨東大実績推移

これは東大の合格者数推移です。1990年代には80名にせまる勢いもあったのですが、近年は見る影もありません。以前は開成受験生の併願校として人気だったのですが、最近は併願校として名前があがることも少なくなりました。もしかして学校は今「変革」しようとしている時期なのかもしれません。もし巣鴨を志望校として考えているのなら、かなり丁寧にリサーチすることをお勧めします。

 

桐朋

武蔵野エリアの人気校ですが、大学実績の推移を見てみると気づくことがあります。

巣鴨同様、1990年頃をピークとして、実績が下がっているのです。

巣鴨もそうですが、桐朋も変わったとは思いません。むしろ「変わらなかった」ために人気を落とした、といえそうです。

近年は、「大学実績至上主義」「グローバル化」「共学化」「管理型」の学校が人気です。桐朋のように自由放任な学校は選ばれなくなっているのだと思います。

麻布ほど突き抜けた自由な学校は、それだけでニーズがあり、一定の優秀層が集まります。開成や筑駒が嫌いな生徒はいるのです。しかし、桐朋についてはそうした優秀層が他の学校に流れたのだと思われます。

しかし、学校自体の価値が減じたわけではありません。「時流に乗った」学校が勢いをます昨今、こうした「変わらない」学校にもファンはいます。今後はゆるやかに復権するのでは、と私は期待しています。

 

口コミよりも自分の目で

これらの学校を選ぶ場合、何といっても大切なのは、直接足を運んで、自分の目と耳で確かめることだと思います。

「桐朋は昔はすごかったけど、今はダメでしょ!」などと言われると不安になりますが、別に昔どうだったかは今の自分たちには直接影響しません。むしろ、一定年齢以上の方には、「桐朋だって? すごいじゃない!」と褒められるくらいです。

「今」の学校がどうなのかは、今の学校に足を運ばねば何もわかりません。

「巣鴨は管理型で厳しい!」と言われますが、実際に進学した生徒に聞くと、「けっこう自由で楽しいよ」と言う答が返ってきました。その子にとってはそれが率直な感想です。かといって、「巣鴨は自由で楽しい学校だ」と私は保護者には話しません。それはご自身の目で確かめていただくことだからです。