
夏休みのこの時期に必ず出るご相談です。
「もう無理!」というものです。
夏休みは子供が家にいる時間が増えますので、親子で顔を合わせる時間も増えます。
どうもそれが良くないのでしょう。
また、塾の夏期講習が毎日あると、その復習・宿題等で追われます。
親子とも心に余裕がなくなるのですね。
それで親子でバトルが激化します。
「そんなに勉強したくないなら、受験は辞めなさい!」
「嫌だ! 受験する!」
「それなら勉強しなさい!」
売り言葉に買い言葉で、ヒートアップして疲れ果ててしまいます。
受験を止めることと、塾を辞めることを混同しない
中学受験を取りやめることと、塾を辞めることを一緒に考えないようにしましょう。
まず考えるべきなのは、「中受を止めるかどうか」です。
どうしても中受をしなくてはならない強い理由があるかどうか、を確認しましょう。
〇地元の公立中学校には(諸般の事情で)絶対に進学したくない
たとえば小学校でイジメ問題があり、学校に行けなかった、そうした事情があるかもしれません。その「加害者」と同じ中学校に進学はできないですね。公立中学の越境は、両校の校長の許可があれば可能で、イジメもその許可理由になりますが、定員の空きがないと受け入れないのが普通です。
あるいは、最近はあまり聞かなくなりましたが、地元の中学が「荒れて」いる場合もあるかもしれません。地元の小学校の授業見学やイベントに行ったときに、「この子供と一緒の学校は嫌だな」「こんな保護者とこの先も関わりたくはない」という場合もあるかもしれません。入学式か何かのイベントで、本格的な入れ墨を見せつけている保護者を見た瞬間に中受を決めた、という話も聞きました。
〇絶対に進学させたい中学がある
これは実は危険です。その中学校が射程圏内にあるのならともかく、遥か遠くの目標であった場合、子供に過剰な負荷がかかるからです。志望校については柔軟に考える姿勢が大切です。
〇6年一貫教育の環境を選びたい
多くの方がこの気持ちから受験を決めると思います。あるいは大学までの10年間を考える場合もありますね。
いずれにしても、中受を止めるつもりがあるかどうか、これを家族で決定しましょう。
どこまでの犠牲を許容するのか
何かを犠牲にせずに成果は得られません。
中受は、小学生にとって過酷な試練です。多くの勉強時間が必要です。
好きだったサッカーをやめたり、ピアノをやめたり、友達との遊び時間だってなくなります。もちろんゲームなどする時間はありません(私に言わせればこれは犠牲ではなくて大きなメリットですが)
そして親にも犠牲が必要です。塾の送迎、弁当の準備、宿題のチェック、志望校選びの学校訪問、土日の並走等、親だって精神的にも肉体的にも負荷がかかります。楽しく家族旅行の機会だってなくなります。
この「犠牲」をどこまで許容するのかは、家庭のお考え次第ですね。
全てをあきらめず、楽しく遊び、旅行にも行き、習い事も継続し、それでも受験する、というやり方も可能ですが、得られる成果は限られます。合格可能な学校は減りますし、なにより「目標に向かって努力する」と言う体験が得られません。
子供の能力を見極める
子供の可能性は無限大、などという幻想を捨てましょう。親としてはそう考えるのは当たり前ですが、こと学力に関してはそうはいきません。「テストの点数」と言う矮小な目標を追求するのが中受の世界観です。理解力・処理スピード・幼少期からの蓄積・読書量・親子の会話から得られる教養・ひらめき・コツコツ努力できる力、こうしたものが総合的に「学力」を構成します。もちろんそこに「遺伝」的要素も加わりますが、ここでは論じません。
子供がどこまで頑張れるのか、どこに限界があるのか、それを見極めるのは親の仕事です。それを超えた学習を強いれば、当然軋轢が生じます。子供も暴れます。
冷静に子供の能力を見極めましょう。そのうえで到達可能目標を立てましょう。
中受撤退の先
中受の撤退を決めたとしても、勉強からは撤退できません。まさか、「中受しないから後は好きに遊ばせる」ということはないでしょう。
勉強の質と内容が変わるだけで、量は変わりません。
中学に備えて、英語や国語に力を入れるだけです。あとは理社の基本は身に着けておかないと中学に入ってから大変です。
子供の意志尊重ではない
子供が希望したから中受をする、子供が嫌がるからしない、ということではありません。家庭の方針で決めるべき事柄です。
もし子供が受験勉強から逃げることしか考えないのであれば、逃げる他ない状況だと考えます。つまり子供にとって無理な勉強だったのです。
その場合は、塾を辞めるか転塾して、子供の実力相応の勉強に切り替えるべきでしょう。
負荷をどんなに軽くしても状況が改善しない場合は、中受撤退すべきでしょうね。ただし、中学生になったから生まれ変わることは期待できません。中3くらいになればさすがにお尻に火が付くでしょうけれど、高受に不可欠な内申の問題があります。
高校受験も一考に値する
中受よりも高校受験のほうが本人も親も「楽」なのは間違いありません。
第一に、全員が受験します。同級生も部活の仲間も、全員が受験(一部例外はありますが)する環境ですから、否が応でも受験勉強せざるを得ないのです。
第二に、高校受験の勉強は本人の戦いです。親が並走する必要はありません。
第三に、高校受験は中学校で学ぶ内容が試験範囲です。つまり基本が学校の勉強にあるのです。これが小学校の勉強とは乖離した内容を勉強する中受との大きな違いです。
第四に、学校の先生が頼れます。中学校としても、全員がきちんと高校に、それもできればレベルが少しでも上の高校に進学してほしいと思っています。
第五に、教材が豊富です。高校受験は中受とことなり全国的な試験です。出版社も塾も、その販路は全国に広がっていますので、参考書や問題集等の販路は中受とは桁が違うのです。したがって、必要な教材をいくらでも選ぶことができます。
ただし、「楽」といっても、「楽して高校に受かる」ということでは決してありません。

これは、今年の東京都立高校の入試の平均点です。
これだけ見ると、おおむね6割から7割程度の平均点ということで、入試問題としては少し易しめだったのかな、というところです。
しかし、得点分布をよく見ると、半分も得点できていない受験生が15~25%もいます。そのことを念頭において、実際の高校入試問題を見てください。
公立中学校の生徒の学力差が実感できると思います。
高校入試には、別種の厳しさがあるのだということですね。