元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】塾の授業を間引きすることのメリットとデメリット

ごく稀にですが、こうした要望をされることがあります。

「うちの子は、国語の授業は受けないつもりなので・・・」

つまり、四科目のうち、国語の授業だけは不要だ、と言うわけですね。

今回はこうした話題です。

4科目の必要性

首都圏の入試は4科目が主流です。ただし、「何としても生徒を集めたい」学校の中には、入試のハードルを下げる目的で、算国のみの2科目入試、あるいは単科入試を導入しているところはたくさんあります。

とくに近年急増した「午後入試」では、試験時間短縮のため、科目数をしぼった受験が多くみられます。

 

30年以上前には、いわゆる「2科目校」もたくさんあったのです。おぼろげな記憶で恐縮ですが、桐朋・青山学院・早稲田実業(男子校時代)あたりが最上位校でした。あとは女子校に多かったですね。跡見や鴎友、吉祥女子もそうでした

したがって、算国の2科目だけを勉強して受験できる学校が複数存在しますので、それらの学校だけを志望する場合には2科目だけの勉強で間に合ったのです。

しかし、そうした「2科目校」は次々と試験を4科目化していきました。

もちろんそれには学校としての理由があります。理科社会を勉強していない生徒に、中学で理社をゼロから教え込むことに問題があったのでしょう。大学入試では、数学と国語だけで受験できる学校などありませんから。文系なら社会科、理系なら理科は必須ですし、大学実績に影響します。

鷗友は、4科目に切り替えてから大躍進しました。2科目時代には、短大・専門学校進学者もかなりいるレベルの学校だったのですが。

吉祥も飛躍しはじめたのは80年代以降です。それまでは、両校とも、60年代、70年代に早慶に合格したのは20年間合計でも1桁だったのです。

また、4科目受験生と2科目受験生の学力差という問題があります。

例えば、4科目と2科目の選択制にした場合、算国の成績も4科目生のほうが高いという現象があるのです。普通なら2科目に絞った学習のほうが得点が上がりそうなものなのですが、実際にはそうはなっていないのですね。(ただしこの現象は、SAPIXで見られた傾向ですので、受験生の上位層レベルでのお話です)

つまり、学校選びの選択肢としても、4科目を勉強するべきだ、という結論です。

 

中学生で落ちこぼれる不幸なケース

4科目と2科目(あるいは1科目、3科目)のどちらでも受験が可能な学校に、例えば算国で合格したとしましょう。ところが、進学すると、周囲は4科目の受験勉強をこなしてきた生徒が大勢いるのです。その中で、非4科目受験生は少数派です。

当然授業は、理社の基礎知識があることを前提として進められます。これについていけない生徒が必ず出るのです。

数学や英語という新教科の勉強の負荷が大きいところに、さらに理社の基本から独自に学習するのは困難です。かといって学校には頼れません。先生としても、「なぜ江戸幕府は260年以上存続できたのか考察せよ」という課題を考えさせたいのであって、関ケ原の合戦や歴代将軍の名前を教えたいわけではないのです。

 

塾の授業が不要なケース

例えば、国語が(算数・理科・社会)が抜群に優秀で、塾の授業など受けずとも、すでに入試問題で満点がとれるレベルの5年生がいたとしましょう。たしかに塾の国語(or算理社)の授業は不要です。

こうした場合なら、塾の授業を間引くのは正解です。

しかし、大半の塾では、4科目のセット販売が基本です。したがって、塾選びの段階から、科目のチョイスが可能なシステムの塾を選ぶことになります。

しかし、今までこうした生徒に出会ったことは一度もありません。とくにSAPIXの場合は、SAPIXの授業が不要なレベルの子はいないと思います。

もう一つ考えられるケースとしては、塾の授業の質が低すぎて、受けるだけ無駄、というものです。しかし、1科目だけクオリティが低いというのも珍しいですね。そうした塾の場合は、他の科目の質もそれなりだと思われます。

おそらく多いケースとしては、4科目の学力がバラバラすぎるケースでしょう。集団塾の場合は、4科目総合の成績でクラス編成しますので、「うちの子には国語は簡単すぎるけれど、算数はついていけない」といった状況はありそうです。

この場合は、塾の授業の1部が「不要」という可能性はあります。それを他の個別指導や家庭教師で補う、という発想ですね。

 

塾の立場

最初から科目選択性の塾を選びましょう。もし4科目のセット販売の塾を選んだのなら、普通にセットで受講してください。

塾、それもまともな塾であれば、預かった生徒の合格に責任があります。しかもサービス業とはいえ教育を実践する立場上、生徒一人一人の未来につながる指導をしようという意思を教師は持っています。

そこに、「社会は不要ですから受けません」と言われてしまえば、社会科教師である私がどう思うかはわかりますね。

そのことで生徒の扱いを変えようとは思いませんが、すくなくとも私の受業を受けていない生徒については、顔も性格も学力も不明ですし、何の進路指導もできません。4科目の教師が相談しながら進路指導をしていくのですが、そこでも私の長年の指導経験から得られた知見は一切反映できません。

「お好きにどうぞ。」という気持ちにしかならないのです。

もちろんお金を払っている立場からすれば、授業を受けるのも受けないのも勝手だという考えも理解します。ただしそこには何の信頼関係も生まれません。信頼関係は指導の前提ですので、実にもったいないと思います。

 

体力の問題

塾の受業は平日の終了時刻が遅すぎますね。子供によっては体力的に「無理」な場合もあると思います。その場合は、「早退」という選択肢は要検討です。

過去にもそうした生徒はいました。SAPIXの場合、クラスによって時間割の順は決まりますので、例えば6年生の場合、最後の受業が何になるのかは保護者は選べません。それでも体調管理は最優先事項ですので、私の室長時代には、最終コマがその子にとって抜いても一番支障がないようにしたり、あるいは1科目に固定されないように気をつかいました。

しかしこれも、5年生までは授業終了が8時だったのに、6年生になってから9時終了となり、それが無理だ、というご相談があった場合の対応です。

入塾段階からそれを要望されれば、最初からお断りします。

集団塾の場合、一人一人の要望に対応することは難しいからです。系列の個別指導塾をご案内することになります。

 

結論

塾の授業を間引きすることは、メリットよりもデメリットが上回ります。

どうしても4科目受講したくないのであれば、最初から科目選択が可能な塾を選びましょう。