
長年SAPIXで仕事をしていましたが、常にこう言われ続けました。
「SAPIXは面倒見が悪い」
親御さんがそう感じるのなら反省するしかないのですが、どうも納得がいきません。
そもそも「面倒見の良い塾」とはどのような塾なのでしょうか?また、「面倒見が悪い」とどうして感じるのでしょうか?
毎日のように教師から電話がある
これは良く言われますね。
「SAPIXは塾のほうからまったく電話がかかってこない。それなのにA塾は担当教師からいつも電話がかかってくる」
ほんとうにすいませんでした。たしかにSAPIXは、家庭への電話の回数が少ないことは確かです。
しかし、それにはやむを得ない理由があるのです。
(1)教師の仕事量
他塾はどうかしりませんが、SAPIXの教師の仕事は多岐にわたります。
〇授業・・・あたりまえですね。これが最重要なメインの仕事です。社員の教師であれば、週5日授業に入ります。4・5年生なら16:30~20:00、6年生なら16:30~21:00までが教室にいて生徒を指導している時間です。6年生の土曜日は14:00~19:00、9月以降の日曜特訓なら09:00~18:30が授業を行っている時間です。
〇質問対応・・・授業後、30分から1時間程度、教室で生徒の質問に答えます。
〇テキスト作成・・・SAPIXで使うテキストは、全てが自社作成です。作成担当者は教師です。教師が分担して、全教科のテキストを作っているのですね。もちろん一人ではありません。(初期は文字通りほとんど一人で1教科のテキストを作りました。思い出したくもないブラックな歴史です)
複数名の教師で分担しますが、高次点検者になると、いくつものテキストの最終点検をすることになります。
〇テスト作成・・・SAPIXのテストは、全てが自社作成です。こちらも1次作成者から4次点検者くらいまで複数名で分担しますが、複数のテストの作成・点検を兼務するのは普通です。「4年生9月マンスリーテストの1次作成者兼5年生9月マンスリーテストの2次点検者兼学校別サピックスオープンの3次点検者兼・・・・」といったかんじになります。
〇学校訪問・・・生徒に進路指導をするのなら、学校を知らなくてはなりません。塾向け学校説明会といったイベントには積極的に足を運びます。
〇研修・・・定期的に教師研修が実施されています。
〇保護者会・説明会・・・保護者対象のイベントも毎月のようにあります。
〇授業準備・・・毎回の授業中小テストの点数に応じて座席表を作成するのも教師の仕事です。また、毎回配布するテキストの準備も行います。
〇入試問題研究・・・入試直後から数か月は、手分けして入試問題の分析を行い資料を作成します。
〇市販教材原稿作成・・・とくに社会科は、「重大ニュース」を毎年作成しなくてはなりません。
これらに加えて、最重要ともいえる予習・教材研究・入試問題研究がありますが、これらは仕事時間中にはやりません。教師の自己研鑽となります。
教師職の出勤時間は、平日なら14:00~22:30になっています。この時間枠の中で、これらの業務をこなすのですね。
ちなみに、残業は原則禁止となっています。
積極的に生徒の家へ電話をしたくても、物理的にその時間がとれない、というのが現実なのです。
全ての生徒の家へ高頻度で電話かけをしている塾が、いったいどのようにそれを実現しているのかが謎です。
どう考えても、1日2本程度の電話が限界だと思うからです。
授業や予習、教材作成といった教師にとって最重要な仕事のどれかを削らない限り、不可能だとしか思えませんん。
(2)心配な生徒を優先する
私がSAPIXの室長時代には、組み分けテストやマンスリーテストの成績不振だった生徒を洗い出し、その科目の担当教師に電話かけを割り振っていました。
逆にいうと、成績が安定していたり、あるいは伸びている生徒のところにはなかなか電話がいかないのです。
面談が多い
SAPIXのスケジュールされた面談機会は、6年生の夏前と冬の2回です。志望校をご相談するのが目的の面談になります。
ただし、そのほかの学年・時期であっても、「随時面談」を実施します。申し出ていただければ、いつでもお受けしているのです。
しかし、このことが、「こちらから言わない限りSAPIXからは何のアクションもない」
という悪評を産んでしまうことは否定できません。
それよりも、3か月に1度は必ず面談があるような塾のほうが、たしかに「面倒見が良い」と思えますね。
宿題が多い塾
SAPIXのスタイルは、原則として「宿題ではなく課題」というものです。子どもによって時間もスピードも学力も異なります。一律でたくさんの宿題を課すことには意味がないのです。多めの課題、そして優先順位を示し、「自分でできる量+αの家庭学習をやりましょう」というスタイルとなっています。
これは理想的かつ合理的なスタイルですが、「家ではまったく勉強しない」「親が言ってもいうことを聞かない」というタイプのお子さんには合わないでしょう。塾が宿題を強制し、やってこない生徒は居残りをさせ、さらに家に連絡を入れる、そうした塾が「面倒見が良い」といわれる塾なのかもしれません。
ちなみに私も宿題否定派でした。
もし宿題を出すのなら、チェックを徹底しなければ意味がありません。生徒の宿題ノートを回収し、全てに目を通し、間違ったところは添削し、学習のアドバイスを書き込む。どう考えても1冊あたり5分では終わりません。10分以上はかかります。1クラス20名として、3クラスで60名分をチェックするとなると、ざっと見積もって10時間以上はかかります。その日のうちにノートを返却するためには、授業はできません。預かったところで次回に返却するためには徹夜が必要です。まさか「見ました」というハンコを押すだけというわけにはいきません。そんな宿題なら出さないほうがマシというものです。大量の宿題を出す塾は、いったいどうやってこの問題を解決しているのか、これも謎でしかありません。
居残り補習
SAPIXでは居残り補習、授業時間の延長は厳しく戒めていました。時間通りに終わらせる、そして理解させる授業が「良い授業」だからです。
どこかの塾の宣伝チラシに、「面倒見主義。わかるまでとことん教えます」とあったのを見たことがあります。これは、最初の授業で理解させられなかった、ということを示しているにすぎないと私には見えました。
できる生徒を優遇する
こうした塾も多いのです。優秀な生徒のところには、手厚い指導があるのです。入れ替わり立ち代わり、4科目の教師から連絡があり、丁寧な学習指導もあるのですね。
たしかに一部の生徒にとっては「面倒見のとても良い塾」ということになります。
しかし、その他の生徒にとっては・・・・。
SAPIXと言う塾は、成績によって生徒の扱いに差を設けることは一切しません。
当たり前のことです。
私が室長時代には、むしろ成績不振な生徒を優遇するように留意していました。
例えば保護者会や面談についても、まずはAコース(最下位コース)からスタートします。教室を決める際にも、出入り口に近かったり職員室に近い「使い勝手の良い」教室をAコースから順に割り振りました。これを逆にすると感じが悪いですから。
当然、開成や桜蔭を受ける生徒だけを一部の校舎に集めた「〇〇中学特訓授業」といったものはありません。これも考えようによっては感じが悪いですよね。塾の世界は成績で序列化される厳しい世界です。だからといってこうした無意味な「差別化」は不要です。
個別指導でないと無理
本当の意味での「面倒見の良さ」を求めるのなら、集団指導塾では不可能です。そうしたことを売りにしている塾があるとすると、どこかに必ずしわ寄せがあるはずです。
その点個別指導塾なら、いくらでも丁寧に世話することが可能です。
本当に「面倒見の良さ」を求めるのなら、個別指導塾(or家庭教師)一択でしょう。