元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

中学生の記述力



先日(7/16)、文部科学省によって、小学6年と中学3年を対象に実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の平均正答率が公表されました。

詳しい結果は文科省の資料を見ていただくとして、今回は一番気になった「記述式正答率」だけに着目します。

www.nier.go.jp

 

記述の正答率が低い

中3国語の記述式の平均正答率が45.9%しかなかったそうです。

ちなみに選択式は73%、短答式が56.1%、全体正答率は64.2%です。

あきらかに記述が書けていません。

これは国語力だけの問題ではありません。

数学でグラフの座標などを使って説明させる問題におていは、答えが書けなかった「無回答率」が4割にも達したのです。

 

どんな問題だった?

問題を見ない事には何ともいえませんね。中3がそんなに苦戦するのですから、さぞかし難しい問題だったのでしょう。

 

問題文には、まず、合唱コンクールに向けて、生徒からのアンケート結果が示されています。

〈目標を達成するための課題〉
歌声に強弱がつけられていない。
高い音の部分がうまく歌えない。
歌い出しのタイミングがそろわない。
練習を始めるまでに時間がかかる。
練習後の振り返りのときに、意見や感想が出されない。

次に、3名の生徒がアンケート結果について話し合いました。その話し合い結果が整理されています。

〈音楽科の先生に相談すること〉
歌声に強弱をつけたい。
高い音の部分をうまく歌いたい。
〈自分たちで取り組むこと〉
指揮者をよく見て、歌い出しのタイミングをそろえよう。
集まったらすぐに練習を始めよう。
練習後の振り返りのときに、意見や感想を積極的に出そう。

さらに、会話はこうなっています。

大森  この内容をみんなにどのように伝えるかが大切ですね。
山下  そうですね。では、この〈自分たちで取り組むこと〉は、学級のみんなにどのように伝えるとよいでしょうか。
大森  この画面をオンライン上の学級のページに載せるのがよいと思います。タブレット端末を見て、取り組むことをいつでもまとめて確認することができるので、練習するときに気を付けることができると思います。
石川  私は、練習ごとに一つずつ取り組むことを呼びかけていくのがよいと思います。一つ一つしっかりと意識しながら練習できると思うからです。
山下  二つの意見が出ましたね。では、話し合いをまとめていきましょう。
「美しい歌声を響かせよう」という目標に向けて練習するために、学級のみんなにどのように伝えたらよいでしょうか。

 

大問2ー4

 【話し合いの一部】で山下さんは、傍線部④「『美しい歌声を響かせよう』という目標に向けて練習するために、学級のみんなにどのように伝えたらよいでしょうか。」と投げかけています。これを受けて、あなたならどのような意見を述べますか。次の
条件1と条件2にしたがって、この場の三人に実際に話すように書きなさい。

条件1 学級のみんなにどのように伝えたらよいかについて、自分の考えと理由を書くこと。
条件2 条件1について、大森さんと石川さんの意見の両方を取り上げながら書くこと。

これは、いわゆる「国語」の問題というよりは、意見の整理の問題ですね。

さて、模範解答を見てみましょう。

(例) 石川さんが言うように、練習ごとに一つ一つ呼びかけるのがよいと思います。学級のページに載せればいつでもまとめて確認できます、一つずつ練習の場で伝えた方が、全員が同じ意識で歌えるからです。

あれ?

この解答で本当に良いのでしょうか?

いつも生徒たちにはこう指導しています。

「記述問題は、自分の書いた答案を見て、そこからどんな問題だったのかを逆にたどれるかどうかがポイントだ。もし辿れない場合は、解答がズレていることになる」

この解答例に呼応する問題は、こうなると思います。

「あなたは大森さんと石川さんの二人の意見のどちらに賛成か、理由とともに答えなさい」

 

これって誤答じゃないのかなあ?

大森さんの意見、「この画面をオンライン上の学級のページに載せるのがよいと思います。」をA、石川さんの意見「練習ごとに一つずつ取り組むことを呼びかけていくのがよいと思います」をBとします。

解答例の構成はこうですね。

私はBの意見に賛成だ。たしかにAは~だが、Bの方が~からである。

これは、意見文の典型的な書き方ですね。

つまり、この解答例では、「自分の意見」も「理由」も書かれていません。ただ石川さんの意見をそのまま引き写しただけです。そこに、かろうじて大森さんの意見を否定的に使いました。

 

この問題の出題意図はこうなっています。

互いの立場や考えを尊重しながら話し合うためには、話合いに参加している者が、それぞれの置かれた立場や意見が出された背景について理解しながら話したり聞いたりすることが重要である。結論を導くために考えをまとめるとは、異なる立場や考えを前提にしつつも、一定の結論に向かって考えをまとめることである。本問では、一方的に自分の考えを主張するのではなく、互いの考えを捉える中で見いだした共通点や相違点、新たな提案などを踏まえて、話合いが進展するように、自分の考えが伝わるような発言をすることを求めている。

もしかして、深く考えずに、問題文を引用してそれらしくまとめるだけで良かったのかもしれません。

 

その他の記述

記述問題はあと2つありました。

一つは、生徒が書いた随筆についての話し合いをメモにまとめるという記述です。

これは「記述」とは呼びたくないレベルですね。

もう一つは、擬態語についての説明文を受けての出題です。ここでやっと「作家」の文章が登場しました。

「きっぱり」という擬態語を使った文と使わなかった例文が併記されています。

「いいえ。たくさん練習してきたから大丈夫です。」生徒は言った。

「いいえ。たくさん練習してきたから大丈夫です。」生徒はきっぱりと言った。

その二つを比べて、擬態語にはどのような効果があるかを書く問題です。

「きっぱり」がどのような様子を表しているかを具体的に書くこと。

擬態語の効果について、本文中の言葉を使って書くこと。

この2つの条件があります。

解答例を見てみます。

例) 「きっぱり」は、生徒が先生に向かって、自信を持って力強く言い切っている様子を表している。このように、擬態語は話している様子の包括的なイメージを表現することができる。

まあ難しくはないですね。文章中に書かれてある表現を引用するだけですから。

しかし、この記述は、正答率が4割を切ったのです。

 

記述力低下の原因

中学生(小学生も)の記述力低下の原因は専門家が分析していますので、私ごときが意見を述べることはおこがましいのですが、私見を書きます。

◆本を読まない

◆スマホで「短絡的」な情報しか得ない

◆SNSで「短絡的」な文(単語の羅列)しか書かない

考えるまでもなく、この3つが原因です。

さらに、学校教育が「文学」を軽視したこともあるはずですが、ここでは論じません。

 

とくにSNSで使われる略語はひどいですね。私も詳しくはないので、生徒にリサーチしました。

り/それな/草/乙/きまZ/しか勝たん/バおわ

まだまだありましたが、忘れました。

 

これでは記述力は落ちる道理です。

 

情報検定に出そうな実用文作成なんか捨てて、まともな文学作品をもっと読ませれば、それだけで読解力も語彙力も記述力も向上する、というのが私の意見です。