元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】塾への相談のハードル

 

最近始めたSNS(threads)を見ていると、「なんでこんなことをこんなところで相談しているのだろう?」と思われる書き込みが多いことに驚きました。私も時間があるときには、丁寧にリプライしてあげたいのですが、なかなかそうもいきません。お通いの塾に相談するのが一番だと思うのですが、どうして相談しないのでしょうか。

塾に相談しづらい理由

(1)こんな成績では・・・・

SAPIXの保護者の方から聞くことが多かった理由です。

「うちの子はこんな成績なので恥ずかしくて相談できない」

どうやら世間では、SAPIXという塾は成績上位の子には手厚くて、そうでない生徒は相手にされない、という誤解があるようですね。

これは完全に誤解です。

たしかに塾は「合格請負業」にすぎず、目立つ難関校への合格実績は広告宣伝の有力なツールです。しかし、実際に教室で生徒を指導している我々にはそうした意識はありません。教えている生徒が開成・桜蔭に合格するのと、偏差値表の一番下の学校に合格するのでは、喜びは同等です。むしろ、指導に苦戦した子のほうが、「やっとあの子も合格できた!」と喜びが大きいくらいです。当然指導にも差はありません。

たしかにベテラン教師ほど上位コースを受け持ちます。私もそうでしたが、これは生徒の学力が教師を上回る事態を避けるために他なりません。生徒からいきなり「なんで江戸時代にはフランス革命みたいな革命が起きなかったの?」「どうしてトランプはイランに戦争をしかけたの?」「なんで産業革命は世界大戦のきっかけになったの?」「どうして孫文は対立する中華人民共和国と中華民国双方の英雄なの?」などと質問されて、それを即座に、しかもわかりやすくコンパクトに説明できる力量が必要です。(これらは実際に出た質問です)

しかし、基本を丁寧にしつこくわかりやすく指導するには、また別の資質が必要となります。私がたまたま指導に入った小4の一番下のコースの生徒は、「そうなんだ! パリってヨーロッパだったんだ!」と授業中に言っていました。どっと力が抜ける発言ですが、そこで「ヨーロッパとは何か」「パリは都市だ」といった内容を、わかりやすく教えてあげなくてはなりませんね。

 

つまり成績によって相談態度を変えるなどあり得ないことなのです。

 

いったいどうしてこんな「誤解」が蔓延しているのか、おそらくこんな理由なのでしょう。

①受験産業の悪影響

ある塾のHPをチェックしてみました。「合格実績」というところをクリックすると、まず目に飛び込んでくるのが「御三家中〇〇名合格!」という品のないまでに巨大な表記です。さらに難関校の実績が20校ほど載せられていて、その他の学校については別ページにまとめられているようでした。その他の塾のHPも、程度の差こそあれ同様のスタイルです。これらを見ると、塾が何を大切にしているのかがはっきりとわかりますね。こうした塾の多くは、「特待生」制度も設けていて、成績優秀者を優遇する姿勢があからさまです。これでは、「成績の低いうちの子は塾に大切にされるはずがない」と思い込んでしまうのも無理もないことです。

ちなみにSPAIXのHPを一度見てください。合格実績については、全生徒の合格校が、1名合格の学校まですべて一覧であいうえお順に載せられているだけです。もちろん特待制度も無料講座もありませんので、これが塾の姿勢を如実に示しているといえるでしょう。

②悪意ある口コミ

SAPIXから他塾に移る場合は、SAPIXでは授業内容が物足りない、レベルが低すぎるという理由は聞いたことがありません。成績不振による場合が大半です。そこで他塾に相談に行くと、「SAPIXは成績が下の生徒には冷たいですからね。その点うちの塾は・・・・」という営業トークになることは容易に想像がつきます。まっとうな手段で成績を伸ばし合格実績を上げることは簡単なことではありませんが、「面倒見が良い」演出はすぐに可能です。

これはSAPIXの場合に限らず、どの塾にもあてはまることだと思います。

③勘違いした教師

残念ながら、塾の教師には「教師失格」と思える人間もいます。成績不振な生徒をさげすむことで自らの権威を高めようとする輩ですね。

成績至上主義の世界にいるために、成績上位の生徒を優遇する発想が出てしまうのでしょう。同じクラスの生徒の成績には幅があります。本来ならできる生徒を飽きさせず、できない生徒もわかりやすい授業をするべきなのですが、これには相当な力量が必要ですから。どうしても上の生徒に目が行きがちになるということなのだと思います。

④塾の経営方針

多くの塾では、経営者は教師ではありません。現場の思いとは異なる指示が出ていることもあるでしょう。

相談に行っても、「それなら系列の個別指導を併用しましょう」などと課金の指示ばかり出るのではうんざりですね。

 

(2)時間が合わない

塾の教師の勤務時間と、保護者の生活時間がズレているのです。昼間は仕事中で電話ができず、家に帰ってから電話をしようにも、その時間は教師は授業中です。とりあえず連絡をして「折り返し」の電話依頼をしても、授業・質問対応が終わると10時くらいですから、ご家庭に電話できる時間ではなくなってしまいます。

土日も出社している場合がほとんどですから、そのほうがご相談に対応しやすいかもしれません。

最近はメールやWEBからでも相談できる塾も増えました。電話が難しいのなら、それらを活用するのもよいですね。

 

塾に相談しよう

 まずは、電話をしてみましょう。できれば平日の午後2時~3時くらいの時間帯が望ましいと思います。塾の教師の勤務時間は、午後2時から10時くらいが一般的です。そして授業時間は5時くらいからでしょうか。その前の準備がありますので、4時以降は忙しいのです。また、授業後は生徒の質問対応に追われます。したがって、2時~3時くらいの時間帯が、いちばんゆっくりと相談に対応できるのです。

私が室長時代には、朝から出社し、午前中に学習相談の面談や電話をすることが日課でした。そのまま夜に授業に入ります。でもこんなことをやると、過労死基準を軽く超えてしまいます。ダメですね、そんな勤務をしては。

 

また、面談できれば、そのほうが密度の濃い相談が可能です。どの学年であろうと、面談を申し入れて断る塾はありません。これも利用すべきでしょう。

 

経験上、頻繁に電話してくる方もいる一方で、まったく相談しない方もいます。頼られて嬉しいのは教師の本能ですので、気軽に電話・面談してみるとよいと思います。